歴史学の〈言語論的転回〉を考える

5

2022年(令和4年)

Koji Yamamoto 山本浩司 @Koji_hist

英国史/文化史/科学史/経営史/ジェンダー史 Associate Prof. BizHist at UTokyo / early modern / stereotypes /Taming Capitalism before its Triumph bit.ly/39yMiOO 発言内容は所属と無関係。

cambridge.academia.edu/KojiYamamoto

Koji Yamamoto 山本浩司 @Koji_hist

言語論的転回って、歴史学界隈で極端なポスト・モダニズムと併置される傾向がありませんか?これ、英語圏でもたまに目にしてきたのですけど、日本でも結構顕著なような気がしています。これ、西洋政治思想をかじった身としては不思議なんです。スキナーとかケンブリッジ学派の方法論って

2022-09-09 23:07:09
Koji Yamamoto 山本浩司 @Koji_hist

ざっくり言えば政治的テクストの意味を普遍的なフレームの中で解釈できるものと想定しないで、替わりに特定の言語習慣を再構築して、その中での発話内行為としてのテクストとして再評価するわけですよね。これも立派な言語論的転回だし、このような立場ならば言語とその使用への注目は

2022-09-09 23:10:16
Koji Yamamoto 山本浩司 @Koji_hist

史料を集めてじっくり分析する作業の必要な前提になると思うんですよね。これ以外にも言語論的転回の発想をベースにした実証的歴史研究は山ほどあるとありますよね。例えば研究対象となる人々が当時使用した概念 actors categoriesに注目するのもその一つですね。

2022-09-09 23:11:56
Koji Yamamoto 山本浩司 @Koji_hist

科学史なら科学者scientistsがルネサンスにいたのだ、という想定を一旦棄却してnatural philosopherのアイデンティティに着目して初めてわかることがあったり、僕が先日改訳をしていた社会史なら、マルクス主義の影響を色濃く受けた「階級」概念あえて傍に置いてsortsとかdegreesなどの言語に

2022-09-09 23:14:30
Koji Yamamoto 山本浩司 @Koji_hist

着目して近世イギリスの社会秩序を再構築しようというライトソンの研究とかもその一種ですよね。宗教史であれば、ピューリタンやクエーカーを安定した社会集団都であると自明視せずに、これらの歴史的カテゴリーがステレオタイプや自己アイデンティティの源泉として果たした役割にも着目したり。

2022-09-09 23:17:30
Koji Yamamoto 山本浩司 @Koji_hist

こうして見渡してみると、言語論的転回というのはある種の「キワモノ的な飛び道具」というよりは色々な研究で幅広く応用されている前提であって、方法論的発想とでも言えるもので、それは多くの場合どうやって史料を集め、史料のどこに注目するのか、という分析の際の方針を示していると思うんです。

2022-09-09 23:22:14

 

Koji Yamamoto 山本浩司 @Koji_hist

以上のようなより広い意味での言語論的転回と、いわゆるポストモダン的立場との異同について考えておこうのは大切なことだと思います。後者の場合、僕の理解では「ピューリタン」などの特定の単語と、それが指し示す歴史的事象や人々との関係は恣意的であることが強調されます。つまり、

2022-09-09 23:24:33
Koji Yamamoto 山本浩司 @Koji_hist

言語を通じた社会記述をエビデンスとしてどれだけ集めても、言語使用者間の共通了解についての理解が深まるだけで、そうした言語の背後にあった「歴史的真実」や「社会の実態」には辿り着くことは出来ないことが強調されるのですよね。このポストモダン的立場を採用した場合、あらゆる歴史分析は、

2022-09-09 23:25:58
Koji Yamamoto 山本浩司 @Koji_hist

エビデンスである史料が「本当の事実」を示していないかもしれない、という懐疑にぶち当たることになって、そこで立ちすくんでしまうように見えるのですよね。  けれど、ケンブリッジ学派の流れを汲んだ思想史研究や、僕が先ほどあげたような様々なテーマ群の研究は、活発に新たな研究が行われていて

2022-09-09 23:33:09
Koji Yamamoto 山本浩司 @Koji_hist

方法論の面でもmaterialityに注目したり、感情に注目したりと様々なアプローチが生まれている。 そう考えると言語論的転回というものには幅があって、一部は(もしくは大部分は)史料の重厚な実証分析と両立可能な方法的態度なんだという理解をした方が生産的ではないかな、と。

2022-09-09 23:36:54
Koji Yamamoto 山本浩司 @Koji_hist

授業で大学院生と議論しているときも、「言語論的転回ってよくわからないです」という声を何度か聞いたのですよね。 自分の研究を振り返っても実証的史料分析と矛盾するどころか、その助けになる基本的発想だと考えてきました。

2022-09-09 23:46:05
Koji Yamamoto 山本浩司 @Koji_hist

ただし、僕自身も史学史の専門家では無いので見落としなどがあるとは思います。 その辺りは詳しい方のご教示を待ちたいところです。

2022-09-09 23:46:35

 

Lotzun @lotzun_DeuPol

ポストモダニズムの潮流の中に言語論的転回が位置していると思っていたのだが、正確には違うのか。日本での影響としては、ギンズブルクホワイトバークらの議論、それを受けた遅塚忠躬氏や長谷川貴彦氏などの歴史学の基礎に関する著作が学界で広く浸透しているからだと思うが🤔

2022-09-09 23:22:24
Lotzun @lotzun_DeuPol

歴史学において、欧米圏で議論されている事柄の中の、特定の部分だけがあたかもスタンダードのように日本に紹介されて定着するという事例はかなり沢山あるので、研究者は気をつけなければいけないと思う。日本の学界の常識が国外では全く通用しないということにもなりかねない。学知のガラパゴス化。

2022-09-09 23:37:28
Lotzun @lotzun_DeuPol

戦後日本におけるドイツ史学フランス史学の紹介のされ方は、日本の社会状況に相当適合した形でなされてきたことは間違いないとは思う。それで上手くいく部分ももちろんかなりあったとは思うけど、その弊害も最近は見えてきているような気がしてならない。

2022-09-09 23:47:23
Koji Yamamoto 山本浩司 @Koji_hist

@lotzun_DeuPol どうなんでしょうね。。 ポストモダニズムの潮流の中に言語論的転回が、、という構図で話が進むことを目にしてきたのですが、ほんと? という感じです。少なくとも言語論的転回の遺産/レガシーという点で考えるともっと幅が広いのでは無いかな、、と。

2022-09-09 23:40:33

 

Koji Yamamoto 山本浩司 @Koji_hist

言語論的転回的発想を(悪い意味での)ポストモダニズムに還元しないで、替わりに色々な実証研究に活かされてきた方法論的態度として概観した日本語の解説をご存知の方がいたらご教示くださいませ。m(__)m twitter.com/Koji_hist/stat…

2022-09-10 00:40:06
Koji Yamamoto 山本浩司 @Koji_hist

科学史における知識社会学受容とか、思想史における英米言語哲学受容、歴史学における人類学受容、文学カルチュラル・スタディーズにおけるプラグマティズムと大陸哲学受容?とか、20世紀後半の人文学には色々な動きがあって、その相互作用が分からないです。

2022-09-10 00:31:50
1 ・・ 8 次へ