1972年「カシマさん」誕生 〜すべては「平凡パンチ」から始まった?〜

1972年に「平凡パンチ」という週刊誌に最初の流行報告記事が掲載された「カシマさん」。その誕生の謎を探ります。
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青山葵 @aowasabi1972

「カシマさん」の話という都市伝説の“本質"が、その【物語内容】にあるのではなく、その【語りの形式】にあると考えた時改めて、今から50年前の『平凡パンチ』記事こそが、本当の意味で“起源“であったと思い知らされます 今こそこの最初の「カシマさん」事例について、深く考えてみる時かも知れません pic.twitter.com/8P5Z3FpX8c

2022-09-10 18:43:05
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青山葵 @aowasabi1972

この記事に掲げられた「カシマさん」の話は、怪異の由来因縁の話もなく問答の中身も定かでない一見、未分化・未発達の“なんだか物足りないない"話のように見受けられます しかし、物足りなくていいのです。足りないのは【物語内容】であり、「カシマさん」にとって必要なのは【語りの形式】なのです

2022-09-10 18:43:06
青山葵 @aowasabi1972

その形式とは 語り手/聞き手の“対話"と名付けられた怪異との"対話"、2つの対話を並べてねじってくっつける その事により 【語ること】 【語られること】 【名付けること】 の本当の恐ろしさを浮き彫りにする 「平凡パンチ」事例にはその形式の骨格が必要充分に含まれていることが分かります

2022-09-10 18:43:07
青山葵 @aowasabi1972

「カシマさん」譚の極北「呼び水」に文字通り呼び戻されて巨木の様に茂る「カシマさん」伝承の、より太い枝より太い幹を辿るように進んだ先には、種子としての「平凡パンチ」事例が眠っていました 50年目に相応しく今一度この事例について考える時が来たようです 長い旅も終わりに近づく予感がします pic.twitter.com/tfaV2auwKr

2022-09-10 18:43:08
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青山葵 @aowasabi1972

今から50年前「カシマさん」の話を初めて記載したのが「平凡パンチ」であったことの、後の「カシマさん」伝承に与えた影響は想像以上に大きい 当時の「平凡パンチ」はのちに『平凡パンチの時代』【amazon.co.jp/%E5%B9%B3%E5%8…】という書籍が出版されるほどの、時代を象徴する大人気の雑誌だった

2022-09-15 19:21:22
青山葵 @aowasabi1972

発行部数は100万部近くあった模様で加えて掲載されたのが“合併号"であるから次週はお盆休みで休刊になり、都合2週間も人々の目に触れる位置に置かれ続けた事になる そこに「カシマさん」が載っていた この記事は単に初めて噂話の流行を伝えたものではない まだ未成熟な噂話の最初期の報告ではない pic.twitter.com/wnl93TwJ2v

2022-09-15 19:21:24
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青山葵 @aowasabi1972

ここ【togetter.com/li/1936313】で考えたように「カシマさん」の正体は【物語内容】ではなく【語りの形式】にあるとしたら、「平凡パンチ」の記事はその【語りの形式】だけを過不足なく伝えている この記事は噂話が語り継がれ存在し続けるに必要な「カシマさん」の遺伝子を秘めた“種子“なのだ

2022-09-15 19:21:25
青山葵 @aowasabi1972

つまり"聞く者を呪いにかける呪術"の方法を日本国中に100万部もばら撒かれた事になる 方法を知るだけでは呪いは発動しないが、いずれ方法を実践する者が現れる 日本各地で語り始められた「カシマさん」は“空白“の【物語内容】として、種子が撒かれた土地や環境に暮らす人々の心から様々に取り入れる

2022-09-15 19:21:25
青山葵 @aowasabi1972

大きな火災で多数の被害者が出た事故の記憶が生々しい地域では…… 当時世を騒がせていたジャングルに潜み続けた日本兵の帰還の話題が…… 列車事故に巻き込まれて無残な亡くなり方をした女性の話が語り継がれている土地では…… いまだ傷も癒えない原爆や空襲に見舞われた場所では……

2022-09-15 19:21:26
青山葵 @aowasabi1972

【語りの形式】を完備した「カシマさんの種子」が“活字化"された記事を大部数の雑誌が一気に国中に散種した ↓ 各地の読者が“語り"を始め、それぞれの時代性と地域性に応じた【物語内容】を取り込みつつ「口から耳に口伝で」静かにゆっくり拡散していく ↓ 約30年、それぞれ独自に語り継がれていく

2022-09-15 19:21:26
青山葵 @aowasabi1972

後にネットを使った「カシマさんアンケート」で全国一斉に事例を募った際に、数多くのバリエーションが寄せられ自分達は驚くことになる 長い伝承のうちに徐々に変化していったのだろうと推測したが、変化の理由も過程も分からず「カシマさん」最大の謎の一つとなっていった

2022-09-15 19:21:26
青山葵 @aowasabi1972

「カシマさん」のバリエーションの多さが、カンブリア大爆発のように「平凡パンチ記事」が起爆材となった同時多発的大量発生が理由だとしたら…… 「平凡パンチ記事」の評価は、最初に「カシマさん」を報告したメディアというものに過ぎなかったが、認識を改める必要がある 全てはここから始まった?

2022-09-15 19:21:27
青山葵 @aowasabi1972

「平凡パンチ記事」のもう一つの功績は初期の段階で、「カシマさん」の正体は「不幸の手紙」の口承化したもの、と見抜いた点 「化神魔サマ」には後の「カシマさん」には見られない「3日以内に5人に伝えなければならない」という「不幸の手紙」ゆずりの“強制拡散=解除条件“が残っていたためもある

2022-09-18 16:58:00
青山葵 @aowasabi1972

この解除条件が語り継がれるうちに消滅していく所が、都市伝説の“自己最適化"能力を示していて興味深い 「不幸の手紙」は 呪いの機能《呪う/祓う》 手紙の機能《届く/送る》 の類似性を類感呪術的に作用させる この場合 呪いの行為=手紙が届く 祓いの行為=手紙を送る と機能と行為が一対一で対応する

2022-09-18 16:58:00
青山葵 @aowasabi1972

一方で「化神魔サマ」の場合 呪いの機能《呪う/聞く》 祓いの機能《祓う/語る》 と「手紙」が「語り」に翻案される 呪いの行為=「カシマさん」の話を「聞く」 に対応する"祓いの行為=「語る」"が ・「化神魔サマ」の質問に答える ・3日以内に5人に話す の二つも提示されるので、どうも座りが悪い

2022-09-18 16:58:01
青山葵 @aowasabi1972

二つの「語り」を統合し呪いの形式を最適化するために選ばれた方法が、唯一与えられた具体化な言葉「カシマ」という名を解呪の呪文と“誤読"する事で「語る/祓う」行為を統一すること 呪文化された「カシマ」という言葉は3回連呼されたり「カは仮面のカ〜」のように呪文らしく語韻分解され語り継がれる

2022-09-18 16:58:01
青山葵 @aowasabi1972

語り継ぐ者たちが駆使したのが「名付けの呪術」という昔話的→神話的想像力であった事も興味深い あの「口裂け女」の撃退法の“ポマードと鼈甲飴"の背後にも神話的想像力が働いていることも思い出される 【togetter.com/li/1830626】 現代の自分達の心の中にも神話的想像力が宿っているのは間違いない

2022-09-18 16:58:01
青山葵 @aowasabi1972

「カシマさん」という【名付け】を“呪文"としたことにより 【語る】 ー 【語られる】 \ / 【名付ける】 3つの要素が有機的に結び付き「カシマさん」の“呪術"としての強度は格段に上がり、この最適化された【語りの形式】が主流となって伝承されていくことになる

2022-09-18 16:58:03
青山葵 @aowasabi1972

「カシマさん」は【語ること】【語られること】【名付けること】にまつわる"呪いの作法"となった 「不幸の手紙」より長く広く伝播していくのは「手紙」より「語り」が日常的で身近である事が理由だろう しかしそもそも 【語ること】 【語られること】 【名付けること】 自体が、本質的に呪いなのだ

2022-09-18 16:58:03
青山葵 @aowasabi1972

「カシマさん」の類話展開に「平凡パンチ」掲載の“1972年“が影響しているとしたら…… 「兵士型」→横井庄一元軍曹帰国 「火傷型」→千日デパート火災 など、72年の出来事と関連ありそうな類型もいくつか見つかる 少し気に出来事は 「沖縄本土復帰」 この年から「平凡パンチ」配本はあったのか?

2022-09-19 21:20:23
青山葵 @aowasabi1972

そんな予断を持って「カシマさん」事例を見直すと「沖縄」からの70年代の事例はほとんど見当たらないので、確証バイアスが働いてしまう 沖縄には「列車事故型」の伝播がないのは予想できる 「カシマサン」の沖縄方言は「うるさい」の意味 「足いるか」 「うるさい うるさい うるさい」てこと?

2022-09-19 21:27:43
青山葵 @aowasabi1972

"「カシマさん」は「不幸の手紙」の口コミ版"と「平凡パンチ」記事は割とあっさり指摘しているが、口コミ=口承化は中々上手くいかなかったようだ 自分の経験でも、例えば一家全滅のようないかにも忌わしい内容を聞かされた後に「この話を3人に話さないと呪われる」と脅される話を何度か聞いた事がある twitter.com/aowasabi1972/s…

2022-09-22 18:55:37
青山葵 @aowasabi1972

72年の平凡パンチ「カシマさん」記事 たしかにカシマさんの話としては、伝承の《始まり》ではあるのですが 「不幸の手紙」を口伝に移し替える試みとしては、唯一の成功例=《終わり》であるとも言えます 「不幸の手紙口承化」の完成形として、再検討が必要かも 『私はアルファでありオメガである』 pic.twitter.com/RIMhNGcawv

2022-04-28 19:49:16
青山葵 @aowasabi1972

聞かされた自分はどうしたかというと「ふうん」と聞き流し誰にも伝えなかったので、これは「不幸の手紙」口承化の失敗例だ 思うに70年代の「不幸の手紙」ブームの頃には、日本国中でこんな失敗例が溢れかえっていたのではないか 例えばもっと怖い忌わしい話だったとしても、成功は疑わしいだろう twitter.com/aowasabi1972/s…

2022-09-22 18:55:38
青山葵 @aowasabi1972

放課後の小学校の教室で四人の友達と、ここにはいない他の友人から借りた怖い本を、机を車座にして見ていたら、目撃者が描いたという幽霊の絵が載っていた。ページの余白に「この絵を見たら呪われてこのオバケが現れる。三時間以内に三人に絵を見せると助かる」と鉛筆書きの下手な字で書いてあった。>> pic.twitter.com/E5nxJR5wqy

2022-04-19 19:08:37
青山葵 @aowasabi1972

「カシマさん」がその成功例だと考えれば「不幸の手紙」口承化で翻案すべきなのは その「不幸」な【物語内容】ではなく その「手紙」の【伝達形式】だったことがわかる 「手紙」を「語り」に置き換えるためには“語る相手"が必要になる 聞き手の脳裏に“相手"を結像させるために【名付け】が必要だった

2022-09-22 18:55:39
青山葵 @aowasabi1972

「手紙」を「語り」に変換した【語りの形式=呪いの作法】を活字化した記事が全国にばら撒かれ、その作法通りに語り始められた「カシマさん」の話が延々50年に渡り語り継がれていく…… それが本当に起こったのだとしたら、あの「平凡パンチ」の記事は史上最大の成果を上げた“不幸の手紙"だとも思える

2022-09-22 18:55:39