茂木健一郎（@kenichiromogi）さんの「黒幕などいない、あるのは空気だけさ」

茂木健一郎 @kenichiromogi

「連続ツイート」をお届けします。文章は、その場で組み立てながら即興的に書いています！　本日は、最近のわが国おけるいわゆる一つの傾向について！

茂木健一郎 @kenichiromogi

くき（１）３月１１日以降、我が国ではやっているものの一つが「陰謀史観」であろう。原発を維持しようと、画策し、暗躍している人たちがいる。記者クラブを守るために、それに反する人たちを追い落とそうといろいろはかりごとをする。ツイッターのＴＬを見ていると、そんな書き込みが多い。

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くき（２）人間は、陰謀史観が大好きである。そのような話は、人の心を刺激し、惹き付ける。子どもの頃、「ＵＦＯの真実を隠蔽する秘密結社」だとか、「金融を通して世界支配をたくらむユダヤ人集団」みたいな陰謀史観を読むと、なぜか興奮した。大人になって、それがすべてウソだと気付いた。

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くき（３）この世界を創造し、人間を信賞必罰する「人格神」の概念と同様、「陰謀史観」がわかりやすいのは、それが、人格、志向性、意図など、人間主義の要素から成り立っているからであろう。しかし、ある仮説が分かりやすいということは、それが真実であることを保証しない。

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くき（４）原発問題は深刻であり、black swan理論から言えばなくした方がいい。しかし、「原子力村」の陰謀があるとか、意図的な情報操作をしているといった「陰謀史観」は、真実への到達を妨げるし、論者の主張を劣化させる。分かりやすいからといって飛びついてはいけない。

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くき（５）原子力、記者クラブ、検察、霞ヶ関。この半年くらい、「陰謀史観」が語られてきた事柄についての真実は、「黒幕」など実はいないということだろう。本当の怖ろしさは、誰も全てをはかりごとしている悪いやつなどいないのに、なぜか構成員があるかたちで振る舞うという点にある。

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くき（６）アリの群れを見ればわかるように、個体レベルではそれほどの認知、理解、知性がないのに、集団としては高度の知性を示すという事例がある。「陰謀史観」の正体はこれであって、本当の敵を見誤ってはいけない。本当の敵は、「場」というものの持つ不思議な作用にあるのだ。

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くき（７）誰も計画立案などしていないし、綿密な戦略も立てていないのに、なぜか全体としては組織防衛をしたり、ある目的を達するように動いている。そのような現象が、日本の至るところに見られる。もともと同化圧力の高い国。アリの群れが出現するには、適した文化的風土なのだろう。

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くき（８）日本の現状は憂うべきだし、できれば改革をした方がいい。その時の敵は、密室でうごめいている黒幕などではなく、むしろ一人ひとりは善良で、ごく平凡な人たちを「同化圧力」でアリの群れにする「空気」の方である。いかに空気を変化させるか。ここに変革への処方箋がある。

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くき（９）一人ひとりがプリンシプルに基づいて自律的に行動すれば、空気などには負けない。だから、日本への処方箋として最も有効なのは、福澤諭吉の「独立自尊」だと考える。「やらせメール」の指示が来ても、社員が自分の良心に照らして、正しいと思った行動をとればいいのだ。

茂木健一郎 @kenichiromogi

だから、下條信輔さんが、「やらせメール」の報道があった時に、失礼な話だ、社員にだって、一人ひとり哲学がある、意見があると書いたんだよね。本当の問題を見間違ってはいけない。以上、「黒幕などいない、あるのは空気だけさ」についての連続ツイートでした。

茂木健一郎 @kenichiromogi

がちょーん。今日の連続ツイートの略号の「くき」だけど、「黒幕」と「空気」のつもりだったのが、それだったら「くく」だよね。しまった、間違えた。ポリポリ。「黒幕」の「く」と「空気」の「き」と思ってくだされ。

茂木健一郎 @kenichiromogi

クオリア日記　ぼくの命の中に、野ウサギにあたるもの　http://t.co/J9NDEqq7