アメリカの家郷へー駒沢敏器『語るに足る、ささやかな人生ーアメリカの小さな町で』について

著者・駒沢敏器の死から10年。アメリカの小さな田舎町と、そこに暮らす人々を訪ねた1冊のロードエッセイが、心にずっと残っていて、古い自ツイートをまとめてみました。
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座散乱木 [zazaragi] @zazaragi

ふと思い出し、或る本を図書館で借り出し帰宅途中の電車で読んでる。無名の人たちが暮らすアメリカの田舎町を、車で巡ってゆくロードエッセイ。さっきまで隣に座ってた老人2人連れが、仕事で度々訪米していたらしく、現地の体験談を懐かしそうに語り合っていた。小さな偶然だけど嫌いじゃない。

2017-02-25 20:04:45
座散乱木 [zazaragi] @zazaragi

借りたのは、駒沢敏器『語るに足る、ささやかな人生』。現在単行本も文庫版も絶版のこの本を再読したくなったのは、かつて彼がアメリカの家郷を見たくてレンタカーで旅した小さな田舎町たちが、トランプ支持層と重なるのかな、と云う割りと浅薄な疑問が、胸に湧いた故だった。

2017-02-26 00:19:57
座散乱木 [zazaragi] @zazaragi

結果はイエスかノーか微妙。駒沢がNY→シアトル、ニューオリンズ→LAのルートで2度横断し書いた実質11州のうち、今回トランプ勝利州は7だが、本当は町単位の数字を見ないと無意味だろう。『ルポ トランプ王国』(岩波新書)で金成隆一が歩いたラストベルト周辺の街々とも微妙に重ならない

2017-02-26 00:45:49
座散乱木 [zazaragi] @zazaragi

しかし恐らく、都会的な開発や生き方を軽蔑し暮らす人々に共和党員が多いのは間違いない気はする。そして本書には、素朴そのもののカウボーイ夫婦や、田舎町を蘇らさせた女傑、谷間の街で復興するアイリッシュ音楽や、「ルート66」に古き良きアメリカ以上の精神的価値を見出す人々が登場する。

2017-02-26 01:05:08
座散乱木 [zazaragi] @zazaragi

それらの人々に対する駒沢の筆致は好意的だし、当然ながら、虚栄心溢れる「現在のアメリカ」のありようにも批判的だ。今の時点で後知恵で振り返ると微妙な危うさも感じなくもないが、その意味でも駒沢は、アメリカの素朴な原像イメージに近い部分に、主観的に迫ることに成功しているのかも。

2017-02-26 01:21:40
座散乱木 [zazaragi] @zazaragi

・・・そんな分析はさておき、今回読み返したらやっぱり、フィクションかと疑ってしまうぐらい鮮やかなエピソードや描写が時々あって、ハッとさせられるのだこの本。「青いトマトのフライ」のお調子者スプーキーが隠し持つ深い哀しみや、「ホテル・ブルックリン」の盲目の女主人バーバラとのキスや。

2017-02-26 01:48:44
座散乱木 [zazaragi] @zazaragi

昨夜読んでた駒沢敏器『語るに足る、ささやかな人生ーアメリカの小さな町で』。2012年の著者の早すぎる死とともに、この本も埋もれつつある。2005年のNHK出版版も2007年の小学館文庫版も絶版、電子書籍化もなく、現状のアクセスは古書か図書館。 pic.twitter.com/OuT6qGAJok

2017-02-26 12:11:56
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