ベヨネッタの英語版の元声優がオファーされた金額$4,000を侮辱だとゲームのボイコットを訴えている動画を翻訳
事のあらまし
ベヨネッタ3の発売が今月末に迫る中投稿された、英語版元声優による同ゲームのボイコットを呼びかける一連の動画ツイート。海外ではかなり炎上しており、彼女に同調しゲームをキャンセルすべきだという意見が多数を占めているようですが、日本では「ボイコットはどうなの?」という冷静な見方も。
すでに日本のゲームメディアでも記事になっていますが、各々が正しく判断するにはまず彼女の声明をちゃんと聞いてみようということで、翻訳してみました。
なお今わかっている事からすると「約束した報酬が支払われなかった」とか「収録後に急遽変更された」みたいなコンプラ的に問題がある案件ではないです。
騒動を伝える日本の記事
【ニュース】ベヨネッタの英語版元声優、降板理由はギャラが安いからとし『ベヨネッタ3』のボイコットをファンに呼びかけ。一方、開発者は暗に反論か automaton-media.com/articles/newsj… pic.twitter.com/lQHjInAkmc
2022-10-16 11:24:12テイラー氏の言い分
ベヨネッタ3のボイコットを呼びかける動画を投稿したのは、2作目までベヨネッタの声を担当したヘレナ・テイラー氏。動画はパート1からパート4まで4本投稿されました。一つずつ翻訳していきます。
なおパート2からツリーがパート3と4に枝分かれしているのでパート4がちょっと見つけにくいです。
Actor, Director, Writer and Stand up comedian. Trained @LAMDAdrama and with Larry Moss,@LarryMossStudio Equity, SAG/AFTRA, A Brit. US work visa & EU.papers
翻訳 パート1
Friends, Worldlings, Bayonutters. Hear ye! #PlatinumGames #Nintendo #Bayonetta #Bayonetta3 #Bayonutters #Boycott #NintendoEurope #NintendoAmerica #NintendoJapan pic.twitter.com/h9lwiX2bBt
2022-10-15 23:21:11こんにちは。私はヘレナ・テイラー、ベヨネッタの声優です。そしてなぜ私がベヨネッタ3では声をあてなかったのか説明したいと思います。
ベヨネッタのフランチャイズはおおよそ4億5千万ドルを売り上げました。これにグッズは含まれていません。
役者として、私はトータルで7年半訓練しました。London Academy of Music and Dramatic Art (LAMDA)で3年、ボイスコーチはBarbara Barkery。そしてロサンゼルスで伝説のLarry Mossの元で4年半。
さて、彼らがこれに見合うと考えたものはなんでしょう? ゲーム全体を演じることに彼らが買い切り形式(訳注:売上によるインセンティブなしのことと思われる)でオファーした金額は、4,000ドルでした。
これは私に対する侮辱です。そして私が自身の才能のために費やした時間、私がこのゲームとファンに与えてきた全てに対しての(侮辱です)。
ファンの皆さんに、このゲームをボイコットし、代わりにこのゲームに使うはずだったお金をチャリティに寄付するよう求めます。
私は世界を欲しがったわけではありません。多くは望みません。私はただ尊厳のある生活ができるだけのまともな賃金を求めただけです。
彼らが行ったことは合法です。しかし、道徳に反しています。
翻訳 パート2
Part 2. #PlatinumGames #Nintendo #Bayonetta #Bayonetta3 #Bayonutters #Boycott #NintendoEurope #NintendoAmerica #NintendoJapan pic.twitter.com/iiaiVp1lyn
2022-10-15 23:24:43さて、私のTwitterをフォローしている方なら、私は戦士というよりは愛する人(lover)であり、ベヨネッタとは全く違うとしばしば思っている事をご存知でしょうが、どうやら自分で思っていたよりもベヨネッタっぽいようです。
このゲームをボイコットするのは個人の自由だし、しない人もいるのは理解していますしそれはそれでいいでしょう。しかし、もしあなたが周りの人々を気にかけ、こうした金銭的な決定に傷つく人を気にかける人なら、ぜひゲームをボイコットするよう強く要請します。
才能に見合った報酬を得られていない世界中の人達と団結して立ち上がるために、私はこの呼びかけを決行しました。金持ちは美味しいところを抜き取り、私達には腐ったパンくずしか残しません。
イギリスでは今、看護師たちが子供を養うためにフードバンクに通っているのをご存知でしょう。これは正しい事ではありません。許されないことです。これが原因となってメンタルに強く影響します。私は鬱と不安神経症でした。このままでは路頭に迷うのではと不安になり、それは恐ろしくて自殺を考えていたこともあります。
秘密保持契約を恐れています(訳注:この一連の声明はNDA違反と思われる)。でも私には車を走らせる余裕もありません。どうするつもりなんでしょうね。服でも持っていくの? せいぜい頑張るといいわ。
ベヨネッタは常に弱者のため、正しいことのために立ち上がります。そしてボイコットすることで、あなたは彼女とともに立ち上がるのです。
翻訳 パート3
Part 3 #PlatinumGames #Nintendo #Bayonetta #Bayonetta3 #Bayonutters #Boycott #NintendoEurope #NintendoAmerica #NintendoJapan pic.twitter.com/4ii7hBpCxo
2022-10-15 23:26:59興味を持った方のために、もう少し前後関係の詳細をお話します。
まず最初は、もう一度オーディションを受ける必要があると言われました。時が経つにつれ声が変わってしまう事があるので。そこで私は役のオーディションを受け、当然ながら軽々と合格しました。その後彼らは屈辱的なオファーを送ってきました。
そこで私は考え、何をしたと思います? 神谷英樹に手紙を書いたのです。彼に手紙を書き、私の価値を認めてもらおうとしました。日本でビジネスを行っている友人に、日本語で手紙を書いてもらいました。返事をもらったので、彼が読んだことは知っています。
返信には、彼が私のゲームへの貢献を高く評価していること、ファンが本当に私に演じて欲しいということが書かれていました。そして彼はベヨネッタとしての最初に会った時の思い出を大切にしてくれていると。それで私はそれは良かったと。それが、4,000ドルを提示された時(頃)でした。
私にはいくらでも時間があるのに、プラチナゲームズは図々しく臆面もなく「忙しいテイラーさんのスケジュールに合わせられない」と言ったんですよ。
彼らにはすでに声を演じる新しい女の子がいます。私はその女優が好きですし、彼女の健闘を祈っています。彼女のすべての仕事に対して。
しかし、彼女には彼女がベヨネッタの声だと言う権利はありません。
ベヨネッタの声は私が創ったのだ。
彼女にはベヨネッタ役として商品に契約する権利はありません。ゲーム「ライラの冒険」でオウムの声をあてただけの私が、エヴァ・グリーン(訳注:同作品の主演女優の一人)だと偽って契約するようなものです。
この裏切りは彼女のものであり彼女だけのものです。彼らはJan(訳注:おそらくジャンヌのこと?)のスピンオフもやるつもりでしょうが、それも買わないように。
翻訳 パート4
Part 4 #PlatinumGames #Nintendo #Bayonetta #Bayonetta3 #Bayonutters #Boycott #NintendoEurope #NintendoAmerica #NintendoJapan pic.twitter.com/VGhaY1IFRP
2022-10-15 23:29:30さて、任天堂の上席にいる神谷や、その他世界中の金持ち連中に、最高の道徳教師であるイエス・キリストの「金持ちとラザロ」の例えを引用したいと思います。
ラザロは体中がただれた貧しい乞食で、毎日宴を開き、紫の衣をまとう金持ちの家の外に住んでいました。ラザロは金持ちの食卓にある一欠片でも欲しいと願ったが、金持ちは与えませんでした。ただただ犬たちが彼を傷つけ、できものを舐めるだけでした。ラザロは死に、天使たちが彼を天国、アブラハムのふところへ連れていきました。
一方、金持ちは地獄に落ちて苦しみながら、その苦しみの中でアブラハムに泣きじゃくりました。「アブラハムよ、どうかお助け下さい。天国へ連れて行って下さい。」
アブラハムは言いました。「あなたは生前に喜びを得た。今はこれが永遠となる。」
金持ちは言いました。「生前の私のように生きている兄弟たちに伝えて下さい。彼らに遣いを送れば、彼らは悔い改めることができます。」
アブラハムは言いました。「我々はモーゼや預言者たちをあなたに遣わした。(訳注:しかし、あなたは聞かなかったではないか)」
「しかし貴方がラザロを遣わせば。死から蘇った人の話ならば、彼らはそれを聞くでしょう。」
アブラハムは答えました。「あなたはモーゼや預言者に耳を傾けなかった。死から戻った人の話にも耳をかさないだろう。」
ツイッターで私をフォローしてくれているファン、親切なコメントをくれた方々、私の仕事を気に入ってくださった方々に感謝したいと思います。祝福を。あなたの喜びと幸運を祈ります。
テイラー氏の動画の翻訳は以上です。
報酬がテイラー氏が思ったより安く屈辱的だったのはわかりますが、ボイコットする道理は見えてきません。
また、自国の社会問題や彼女の生活苦などは関係のないプライベートな問題であり、この話とは関係しないように思いますが、どうでしょうね…
プラチナゲームズ(神谷英樹氏)の反応
Self-styled chief game designer / Director of BIOHAZARD2, Devil May Cry, Viewtiful Joe, OKAMI, Bayonetta, The Wonderful 101
Sad and deplorable about the attitude of untruth. That's what all I can tell now. By the way, BEWARE OF MY RULES.
2022-10-16 01:09:34虚偽の態度は嘆かわしく、悲しいです。今私がお伝えできるのはそれだけです。
ところで、私のルールには気をつけて下さい。
とりあえず端的にテイラー氏には嘘があると。秘密保持契約違反であり、私こそがベヨネッタだと不買運動を呼びかけるのは業務妨害でもありますし、最悪訴訟沙汰もあるでしょうから、社として公式声明はまだ出せないといったところでしょうか。
神谷英樹氏のルール
“私のルール”というのは、「日本語以外のリプはどんなものであれ即ブロックだぜ」のことだと思われます。
いずれにしろ感じの良い言葉ではなく、炎上から来るコメントを「虫どもが群がって」などと表現したことで、テイラー氏の訴えと合わせてとてつもない反発を招き、一時はアカウントが凍結されていました。
ちなみに、コメントにも頂きましたが彼のこうした対応は平常運転で、世界からの大量のメンションにうんざりしており、日本語以外は批判であれ称賛であれ質問であれ十中八九ブロックされるようです。
本題からは逸れますが、彼のブロックルールに関して英語ですが面白い動画があったのでリンクしておきます。
元々はブロックを嫌っていた彼がなぜ極端なブロックマシーンになってしまったのか。そんな彼が見せた一瞬の弱さとは。そして一体彼のブロック数はいくつに及ぶのか。それを確かめるため、取材班は日本へ向かった…というちょっとしたドキュメンタリーです。
報酬4,000ドルについて
さて論点の一つとして、彼女に対するオファー$4,000がボイコットを訴えるほど法外に安いのでしょうか。
日本の感覚だとゲーム1本で約60万円というのは、別段安くはないと言うか、けっこう良いお仕事なのではという気すらしてしまいます。収録時間もそこまで長くないでしょうし…と思っていると、テイラー氏本人が前作の収録時間について話していました。
ベヨネッタ2の収録時間
※収録時間について話しているのは7:30頃