ロシアという帝國の「共依存」体質について

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Shinya Kasuga / 春日 伸弥 @shinyakasuga

ロシアの行動原理を議論する上で「法ニヒリズム」と呼ばれる遵法精神の欠如が大変示唆に富んだ観点だった。法ニヒリズムとは生活互助を優先して脱法的に法令から逃げ回る村落共同体と、人治主義の道具として規制法を濫用する支配者とが一体的に共依存する法文化の構造。(1/9) src-h.slav.hokudai.ac.jp/sympo/Proceed9…

2022-09-28 20:00:29
Shinya Kasuga / 春日 伸弥 @shinyakasuga

ロシアの地方統治では規範による自律自治を基盤とした市場社会ではなく、農村共同体による互恵的共産社会が封建時代から帝政・ソ連を経て現代まで続いている。(2/9) niigata-u.repo.nii.ac.jp/records/7065#.…

2022-09-28 20:00:30
Shinya Kasuga / 春日 伸弥 @shinyakasuga

互恵的共同体は(1)物資の相互扶助や権力的配分、(2)内部規律(道徳)の重視と外部規範(法)の軽視、(3)人治的規制行政の優位とルールに基づく保護自治の劣位などが特徴で、この暴走を押さえ込む上位機構として強権的規制政府が存在する。(3/9)

2022-09-28 20:00:30
Shinya Kasuga / 春日 伸弥 @shinyakasuga

ロシアで市場社会よりも互恵的共同体が発達した理由は色々と複合的なのだけど、広大な国土ゆえの集落孤立化、機会平等より結果平等を著しく重んじる伝統文化、家父長制を基盤とする安定志向と家産官僚制などが代表的な観点。(4/9)

2022-09-28 20:00:30
Shinya Kasuga / 春日 伸弥 @shinyakasuga

脱法的に好き勝手している共同体村落を統制するために、ロシアでは中央政府による強権的な規制行政が伝統的に必要とされてきた。無法者というより法の恣意的濫用と呼ぶのが的確で、人民の脱法vs為政者の法濫用の構図は遅くとも16世紀から現代まで一貫して保たれている。(5/9)

2022-09-28 20:00:31
Shinya Kasuga / 春日 伸弥 @shinyakasuga

為政者も人民も共に遵法精神に価値を見出さない「法ニヒリズム」は数百年の歴史的深度をもつロシア社会の特徴で、よく見渡せば中国をはじめユーラシア諸国やアフリカ等の一部にも似た傾向を持つ地域は多い。(6/9) waseda.jp/folaw/icl/asse…

2022-09-28 20:00:31
Shinya Kasuga / 春日 伸弥 @shinyakasuga

このような地域から強権的支配者を取り除いても、短期的に生じ得る結果は(1)強権的支配者の再登場、(2)地方共同体の暴走による内戦、(3)共同体の弱体化によるカルトやテロ組織の跋扈、の組み合わせになる。アフガン・イラク・シリアはご存知の通り、軍事的に抑止しても国際テロ輸出国に早変わり。(7/9)

2022-09-28 20:00:31
Shinya Kasuga / 春日 伸弥 @shinyakasuga

身も蓋もない言い方をすれば、東西冷戦は共産主義の崩壊で終わったけれども、共産主義を可能たらしめていた村落共同体の基底構造は変わっていない。どんなに支配者を入れ替えても、ユーラシア大地の草の根から立ち上がる法ニヒリズムは形を変えながらゾンビのように何度でも復活する。(8/9)

2022-09-28 20:00:32
Shinya Kasuga / 春日 伸弥 @shinyakasuga

結局ロシアの遵法精神欠如や独裁政治に見えるものは地方経済構造の産物なので、そこを無視したまま懲罰的態度で臨んでも空回りが無限ループする。世界が法ニヒリズムとの多元的共存を目指すのか、それともロシア等の地方経済に参与支援し都市文明への転換を促すのか、今後必ず議論が必要になる。(9/9)

2022-09-28 20:00:32
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2022-09-29 15:28:03