【再放送】マグロ・サンダーボルト #6
【今回の話は】 ・2030年代の「ネオサイタマ」が舞台です ・ジャンルは「サイバーパンク・ニンジャアクション小説」 ・常人にある日突然ニンジャソウルが憑依してニンジャになる世界観です ・サイバーパンクなので肉体を半機械化している奴も多い ・ニンジャのほうが強い ・治安は終わっている
2022-11-11 21:16:53⚡️ニンジャ実況の楽しみ方⚡️ ・ #ニンジャスレイヤー を使う ・昔は #njslyr だった ・@njslyr の連載や再放送にあわせツイートする ・要するに皆でワンツイずつ小説を読む ・解説してくれる人もいる ・実況を読みながら読むと楽しい ・とにかく楽しい
2022-11-11 21:20:00⚡️これまでのあらすじ⚡️ 廃ビルで気を失っていたニンジャスレイヤーは、お尋ね者のジェイクと間違われ、ヤクザの手で処刑装置を取り付けられてしまう。ニンジャスレイヤー=サン!君は走り続けねばならない!マグロのように!ペースダウンした時、君は……その装置に仕込まれた爆弾もろとも爆発する!
2022-11-11 21:25:00夜のパンキチ・ハイウェイを、冷凍マグロトレーラーとネオサイタマの死神が走る。ニンジャスレイヤーは最後の力を振り絞って車線変更を行い、コンテナの後方10メートルの位置を追走した。両者の時速はジャスト110キロ……その誤差は極めて僅かだ! 1
2022-11-11 21:33:00運転席のデッドムーンが汗を拭い、車載後方カメラと同期を行いながら、ナンシーに呼びかけた。「立体交差目前。ハッチ開くぞ」コンテナ内の通信グリルから声。「いいわ」ナンシーも決然たる眼差しでコンテナの後部ハッチを睨んだ。敵の再物理監視が始まる前に、何としてもシステムを欺くのだ……! 2
2022-11-11 21:36:00ゴゴゴゴゴ……後部ハッチが重々しい軋み音とともに開いた。ニンジャスレイヤーは真正面を見据えた。暗いコンテナの中央部には、スタンバイ状態の黒いルームランナーが見えた。次に、その横に立ち深呼吸するナンシーの姿を見た。その表情は硬い。 3
2022-11-11 21:39:00ナンシーは固唾を呑む。(((やれるかしら?……きっとやれるわ、今回も)))彼女はこの作戦を実行するため、最も効率的な物資調達方法と合流ルートを演算した。最難関はここからだ。失敗すれば己も死ぬ。チャンスは一度きり。両者は視線を合わせ、タイミングを測り……ナンシーが静かに頷いた。 4
2022-11-11 21:42:00ニンジャスレイヤーはかすむ視界を再フォーカスし、ルームランナーに狙いを定め、跳躍した。「イヤーッ!」……ゴウランガ!彼は狙い過たずベルト上に着地。ベルトが激しく波打った。床に入念にボルト留めされた筐体が荒れ狂った。だが辛うじて、無限軌道ベルトは死神を支え、動作を続行したのだ! 5
2022-11-11 21:45:00それは丁度、クモの巣の如きハイウェイ立体交差地帯がトレーラーを覆い隠した時だった。すべては、F1ピットインめいた精確さで行われた。システムと同期したデッドムーンは即座に、ルームランナーの走行スピードと車の走行スピードが共に110キロ前後になるよう、なめらかな速度調節を行った。 6
2022-11-11 21:48:00最高級ルームランナーが軋む。長くは持たぬ。「ハァーッ……ハァーッ……!」死神はLAN直結のために、筐体の強化ラバーグリップを握りしめ、走った。ナンシーはLANケーブルを握り、横に立った。わずかな揺れと震えで二度タイミングを逸した後、彼女はついに、装置へのLAN直結に成功した。 7
2022-11-11 21:51:0001101110111……ナンシーの論理肉体は無数のマグロが球状に遊泳するIRCコトダマ空間へ到達した。具象化された侵入警戒システムだ。意を決してハッカー・チャントを唱えた直後……彼女はニューロンの速度で加速し、侵入警報システムの内側へと到達した。……誰にも気づかれる事無く! 8
2022-11-11 21:54:00火花を散らし始めたルームランナーの横で、ナンシーの物理肉体を鼻血が伝った。(((やはり速度感知は位置情報とバイタルデータの複合……)))想像を絶するタイピング速度で、守護天使は電脳空間を飛翔し、邪悪なる爆発装置のシステムを己の支配下に置いた。(((……さあ、反撃の時間よ))) 9
2022-11-11 21:57:00ハッキング成功から22秒後、侵入警戒システム切断。28秒後、バイタルサインに偽装データ送信開始。46秒後、映像と音声に偽装データ送信開始。ナンシーは一旦直結を解除し、憔悴した顔で立ち上がった。ニンジャスレイヤーを載せたルームランナーが、徐々に減速していった。 10
2022-11-11 22:00:01「もう喋って大丈夫。残りも順番にやっつける」ナンシーが言った。彼女はひとつ死線を潜り抜けたのだ。死神はまだ会話できる状態ではなかった。グリップにもたれ、時速40キロで走行を続けていた。「ハァーッ……ハァーッ…」いかなニンジャとて、急激ストップは心停止を引き起こしかねぬからだ。11
2022-11-11 22:03:00デッドムーンは巧みな運転で、ハイウェイの車の流れに乗った。「あとは座標データ、起爆装置……」ナンシーが再ダイヴのために精神統一を行う。「ハァーッ……ハァーッ…、ハァーッ………ハァーッ……!」ニンジャスレイヤーは深く頷くと、上体を起こして過酷なクールダウン走行を続けた。 12
2022-11-11 22:06:00その男は、サングラスで隠したサイバネアイで周辺と店内の様子を入念にうかがってから、トラタ・ハリマナカの運動機器とビデオの店を訪れた。「ドーモ」コートを着た体格のいい男だ。トラタはそれが裏の客であることを一瞬で見抜いた。すなわち、この店で扱う銃器や薬物を買いにくる客の事だ。 14
2022-11-11 22:12:00トラタは気難しいバーテンダーめいた目で、その男を見た。新顔には警戒が必要だからだ。「クールな店だ。いつか俺も、前後するくらいデカい部屋に住んで、トレーニング機器を置きたいと思ってる」男は砕けた笑顔で語りかけ、レジに近づいてきた。敵の警戒心を奪う独特のアトモスフィアがあった。 15
2022-11-11 22:15:00アベは店内にいない。ルームランナー納品直後、トラタの口座から現金300万円を何回かに分けて下ろすため、外に出たからだ。「ビデオでも買うかい?」トラタは広い額に脂汗を滲ませ笑った。レジ下の拳銃にちらりと目を落としながら。男のサイバネアイは、その動きと反射も完全に見抜いていた。 16
2022-11-11 22:18:00「とびきり卑猥なヤブサメ・ビデオはある?」男が聞いた。「それは無えな」トラタが渋い顔で首を振った。「そうか」男は煙草を吹かしながら、頷いた。彼は今夜、これ以上もめ事を起こしたくなかった。だが逃げ果せるために銃は必要だった。だから危険を冒した。「トロ粉末で銃を買いたいんだが」 17
2022-11-11 22:21:00「見せてみな」トラタが言った。「ドーゾ」男は歯を見せて笑い、お互いプロフェッショナル、何事も無く売買成立してくれよ、と祈りながら、包みをカウンター上に置いた。それでも万が一、トラタと戦闘になった場合の勝算を抜かりなく計算しながら。「上物だな」トラタが油断無くブツを確かめた。 18
2022-11-11 22:24:00