遊戯王迷勝負シリーズその２　ねいとvsカイザー

Kenta Harane @jspeed_

遊戯王迷勝負シリーズその２　ねいと vs カイザー

Kenta Harane @jspeed_

1昨年2010年8月、ISDCS。直前発表の9月制限が適応された本大会ではまだメタが確立されておらず、「旋風が強いだろう」という漠然とした解釈以外ほとんど答えの出ていない頃合で、大会中実に多種多様なデッキが見られた。

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様々なタイプのデッキが激突する中、やはり頭角を見せたのは旋風BFで、準決勝を争うねいと・カイザーの対戦もこのミラーマッチが敷かれた。

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本大会はチーム戦である。ライコー・J-SPEED・カイザーからなる俺達のチームときよの・もすと・ねいとの相手チームは予選ラウンドで既に対戦を経験していた為、互いのデッキ情報は割れた状態での対戦となっている。

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予選ラウンドでの対戦が行われたのは互いに全勝で迎えた予選最終戦、オポネント面で上位進出がほぼ確定してたため消化試合の意味合いが強く、両チームメンツ共に決勝トーナメントでのあたりを危惧した結果、サイドを伏せるなどして淡々とゲームをこなす事になる。

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ただしライコーのみサイドの全てを駆使して全力できよのを葬った。個人成績を気にしていた節がある。

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そうした経緯の下に再び相見える事となった両チーム。対戦が始まると、メイン魔デッキ・DDクロウを擁する俺の墓地BFがもすとのクイックダンディを相性差で瞬殺し早々とチーム1勝を挙げる。

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予選で手の内の全てを曝け出したライコーはきよのに敗北。地砕きのようなプレイでケアが可能なカードを見せていたのが実に致命的で、予選での見栄っ張りが大きく影響する結果となった。こうして勝敗の行方は先に記したようにねいと・カイザーのマッチに委ねられ、1勝1敗での3本目を迎える。

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カイザーの初手は実に充実しており、伏せに触れない点を除けば十分勝利を匂わせる内容だった。加えてねいとは重度の事故を引き起こしており、序盤からブラストの攻撃を受けてライフを大きく落とし込む。またカイザーの手札には2枚のカルートがあり、タイムリミットは目に見えているよりもずっと早い。

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ねいとのライフが半分に差し掛かった頃、カイザーは初手から握り締めていたヴァーユに手をかけ「あーヴァーユ引いたしうぜー。まぁいいか。」そうこぼしながらこれを召喚。アタックにかかる。これが通れば2枚のカルートで相手のライフを削りきれる寸法。カイザー渾身の策である。

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が、長考を基本スタイルとしているねいとにしては珍しく早く発動したミラーフォースによりこれらは速やかに墓地に送られた。カイザーの度を越した猿芝居はあまりにお粗末だったのだ。

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またこの返しこれまで全く動きの無かったねいとが遂に動き出し、ゲームは終盤に差し掛かる。カイザーの返しのブリザードは虎の子神の宣告でカウンターされ圧倒的優位も徐々に突き崩される。

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ねいとの場には1枚の伏せカードがあり、場にはアームズウィングがある。カイザーには奈落の落とし穴と発動不可能な神の警告の2枚があり、手札には前述した2枚のカルートとシロッコ、そして墓地では猿芝居の犠牲となったヴァーユがキツイ目つきで主のデブを睨み付けた。

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いつの間にか伸るか反るかの大一番、シロッコのアタックが通れば勝ち、いつの間にか多く集まったギャラリーも固唾を呑んで見守る中、カイザーがデッキに手をかける。引き入れたカードは、デルタクロウアンチリバース。

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攻めるも守るもこのシロッコは出すしかない、出さねばならない。まずはこれを召喚。奈落なら終わり。奈落だけは・・・。張り裂けそうな緊張感の中、祈るような想いは杞憂に終わり、このシロッコは無事着地する。と同時にカイザー、集約効果を宣言。

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この集約効果は当時サイドカードとして候補にあった闇の幻影の範囲内であり、迂闊な発動は許されない。発動の宣言、それはつまり攻撃の意志を固めた証。

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あのセットカードがもしなにかしらの迎撃罠であった場合、これまでの場面の中でその発動を見る機会は何度も何度もあったはずで、前ターンに神の宣告を発動した事からブラフの気配はより色濃いものとなっている。カイザーのこの判断はかろうじて合理的であると思えた。

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緊張の一瞬、ゲームの行方が決まる…後はそのシロッコを突き出すだけ…。

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カイザー「セット、エンド。」　一同「！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！」

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回した。集約の意味。心臓が砕け散りそうだった。髪も何本か抜けたかも知れない。動揺を隠せず揺れ動く俺の心を余所にカイザーは実にどっしりと構えいていた。

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だがこの選択もまだ悪くない。デルタクロウがある手前相手の回答はモンスターか魔法に絞られるし、そのほとんどは伏せにある奈落の落とし穴で回避できるためである。

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墓地が揃っていない分ダムドは出ないし、ブリザードさえかなわない。ゲイルなら少し危ないかも知れない、そんな事を考えている最中、ねいとが手札から力強くブラストを送り出す。

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ブラスト。現状の盤面に何の影響も及ぼさないこのカードが場に出されたという事は手札に何かしらの変化がおきたという事に他ならない。攻めに繋がる何かの一手を引き入れたのは確定的。

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カイザーの有効な防御は奈落の1枚しかなく、これは確実に通さなければならない。サイドカードの筆頭候補だった盗賊の七つ道具のようなカウンターカードをケアするためにも、先ほどのデルタクロウは今打つべきである。

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「いいよ。」カイザーはゆとりある男だった。その巨体から滲み出るどこかおっとりとした雰囲気はプレイにも如実に反映された。