#霜降月物語

♯霜降月物語
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RMP @spacetimefoam0

露。空気中に含まれている水蒸気が放射冷却などの影響で植物の葉や建物の外壁などで水滴となったもの。秋の終わりに起こりやすいその現象は今朝、目覚めて開けたカーテンの向こうの窓に確かに起こっていて、太陽の光を受けながら綺麗な水玉模様をつくっている。おはよう世界。#霜降月物語 01

2022-11-01 02:00:02
RMP @spacetimefoam0

見慣れたSNSとは別に、なぜだろう、その音声配信アプリを選んだ。出逢いに必然があるとするのならばそのアプリと出会ったことが必然だったのかも。だからキミと出会った事は必然じゃなくて自然だった。アプリを手にした時にきっとたぶんキミに出会うとわかってたような気がする。#霜降月物語 02

2022-11-01 07:00:01
RMP @spacetimefoam0

音声だけで触れる世界は視覚で創り出される3次元、2次元とも違って平坦でも立体的でもあって、鋭くも優しくもあった。声が創り出す振幅は機械を通して心を癒し、誰かと同じ時間を共有する。その時間は同時じゃないのに今そこにあるみたいに感じさせてくれて、誰かの心に火を灯す。#霜降月物語 03

2022-11-01 12:00:02
RMP @spacetimefoam0

なのに僕はただ自己満足のために文章を音に変えて電波にのせる作業だけを繰り返した。それが自分の仕事なんだとばかりに闇雲に、ただ只管、修行みたいに。でも気づく。人の声はただの音じゃなくて生きてる雫を霧吹きのように吹いてて、それは生きてるを伝えるシグナルなんだって。#霜降月物語 04

2022-11-01 17:00:01
RMP @spacetimefoam0

聴いてくれる人がいて、文を詠む僕がいて、これはもしかしたら、いても許される世界線なのかって思うようになってた。だからこのアプリに出会った事は必然で、そんな僕だから、そう、キミに出逢うことは自然だと思えた。本当は何もかもが奇跡だったって気づくのはずっと後だけど。#霜降月物語 05

2022-11-01 22:00:02
RMP @spacetimefoam0

その日は案外突然にそして何気なく訪れた。ここ何日かで慣れてきた僕は眠る前に配信を始めた。難しい言葉を詠みつなげていくのは本当に大変で、少しずつでも上手く詠めたかな、と思う瞬間を感じられるとそこに意味が生じ、もう少しだけ、上手く詠めるといいなって欲が生まれる。#霜降月物語 06

2022-11-02 02:00:00
RMP @spacetimefoam0

そんな時だ。キミはたぶんそんな雰囲気なんだろうなと思わせる可愛いらしいアイコンで僕の配信に訪れた。挨拶もそこそこにいつもこんな感じで配信してるんですか?と質問をする。そうだね、と言いつつ、こんな感じはどんな感じなんだろうと少しだけ、想いを馳せる。楽しいのかな?#霜降月物語 07

2022-11-02 07:00:01
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なぜか、なんてものを考えるのは愚問だってわかっているのに、なぜか、を自分に問い続ける。文章を読み上げるだけのこの配信になぜかキミは来てコメントを入れてくれる。たぶんそれだけなら、他の来訪者と特になんら変わらないのに、コメントの間と長さが心地よいのだ。不思議だね。#霜降月物語 08

2022-11-02 12:00:01
RMP @spacetimefoam0

こんなことを言うと誤解を招くけど僕は僕のために文章を読んでいたはずなんだ。はずなのに、いつしかキミが聴きにきてくれるのを待っている気がした。キミに聴いてもらえるのが嬉しくて、詠み終わった後のキミの感想が気になるようになった。子供みたいに気にするようになった。#霜降月物語 09

2022-11-02 17:00:00
RMP @spacetimefoam0

次はどんなものを詠んだらいいのだろうか、どんなものなら聴きに来てくれるのだろうか。読んでいる話が終わるたび、声に出せぬまま、思案に暮れる。残されるコメントを読みながら、どこかにキミの好みが落ちていないかと探すようになる。キミの事を考える時間が長く長くなる。#霜降月物語 10

2022-11-02 22:00:00
RMP @spacetimefoam0

当たり前だけど、どこかでその発想が抜け落ちていた。そう、キミの事を考えていながら、キミの配信を聞きにいこうとはしていなかった。いや、どこかで考えてはいたのだけれど、場違い過ぎて何しに来たんだろう、気持ち悪いって思われたらどうしよう、なんて自重してたのかもしれない。#霜降月物語 11

2022-11-03 02:00:02
RMP @spacetimefoam0

でもね、興味が勝る瞬間があった。ステルスと言う、言葉通り配信内に入らなくても声が聞こえる機能で初めてキミの声を聴いた。誰かに似てるなんて思わなかったし、優しく澄みきったその声はどこまでも洗練されていて、なによりその会話のテンポと機転の良さに僕の興味がまさった。#霜降月物語 12

2022-11-03 07:00:02
RMP @spacetimefoam0

迷わず配信に入るボタンを押し、挨拶のコメントをした。その時だった。他の人のコメントに返事をしていたキミの、わずかだけどキミの、声のトーンが上がり、上擦るように感じた。それは他の人にはわからないだろうけど、そして自分の勘違いだとしても気持ちのあがる出来事だった。#霜降月物語 13

2022-11-03 12:00:01
RMP @spacetimefoam0

キミは改めて僕の挨拶のコメントに対し返事をし、来訪に感謝を述べた。僕にとってのこの特別感は計り知れないものの、他の人の迷惑になるかもしれないという自制が沸き起こり、コメントは短くなる。他の人のコメントが増えれば自分のコメント回数は減り、居たたまれなくなった。#霜降月物語 14

2022-11-03 17:00:02
RMP @spacetimefoam0

なので、早々と配信を抜けて自分が勝手に感じたものすべてに反省し、うなだれるしかなかった。少しでも話ができるのかもと感じた自分が恥ずかしくなった。結局、うつうつとしながら寝る前に自分の配信を始めて、精神安定剤のように文章を読みあげるのだけが救いだった。#霜降月物語 15

2022-11-03 22:00:00
RMP @spacetimefoam0

そこになぜだろう、キミが現れた。いつも僕の配信に来てくれる他の方は来ていない。二人きりだと勝手に意識して眩暈がする。ごまかす様にBGMを流す。雪の降る静かな町を想像させるその音がより僕の緊張を明瞭にし、詠む声に集中させる。どうして、すぐにいなくなったんですか?#霜降月物語 16

2022-11-04 02:00:02
RMP @spacetimefoam0

キミの問いは明快だった。誤魔化すこともできず。ごめん。自分は配信の雰囲気に合わなくて迷惑かなと思って。その答えにキミは、そんなことないです。せっかく来てくれたのにすぐにいなくなって寂しかったです、と配信者的に満点の答えを僕に投げかける。僕はただごめんと告げる。#霜降月物語 17

2022-11-04 07:00:01
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私、このBGM好きなんです。キミの言葉は僕を奮い立たせた。そうなの?僕も好きなんだ!と告げる。好きなものを確認することがこんなにも尊いのだと気づかされる。不思議なテンションになり、声が弾む。お互いの好きなものを並べて、答え合わせのような時間を迎える。#霜降月物語 18

2022-11-04 12:00:01
RMP @spacetimefoam0

どんな音楽が好きで、どんな映画が好きでどんな漫画とかアニメとかスポーツとか美術とか。それぞれがハマったり、違ったりをずっと話せていられる気分だった。たぶん、ずっと話せてた。それくらい、二人の会話のテンポと流れがマッチしてた。いや、合わせてくれてたのかな。だからか。#霜降月物語 19

2022-11-04 17:00:01
RMP @spacetimefoam0

簡単だった。この事実もまた明快だった。自分がどこかで取り残されていた世界の中で、目的を見失いかけて、それでも目に見えるつながりをつないでいくために必死に生きてきた自分の複雑になりすぎて放棄していた感情が呼び起されて、目が覚めたようだった。 キミのことが好きだ。#霜降月物語 20

2022-11-04 22:00:03
RMP @spacetimefoam0

そう思えてからは積極的になろうとした?違うね。知らず知らずのうちに積極的になってしまうんだ。キミの配信を聞き、僕の配信をする。世界が広がってどんなものにも挑戦できるような気分になる。何もかもとは言わないけれどできないことはないような気がした。キミに会ってみたい。#霜降月物語 21

2022-11-05 02:00:01
RMP @spacetimefoam0

口にできない思いを抱きながら、感情の起伏をコントロールしようと努める。声には簡単に気持ちがのってしまうから、声だけを集中的に聴かれていたら、むしろわかってしまうだろう。視覚的な要素があった方がきっとごまかせる。ごまかした方がいい感情なんだ。そう思うしかなかった。#霜降月物語 22

2022-11-05 07:00:02
RMP @spacetimefoam0

相談と言うか、一度、ちゃんとお話ししてみたいです。青天の霹靂とでも言うべきなのか、キミからのDMに指が震えた。どうされましたか?と返すのが精一杯だったけれど、キミの置かれた状況の説明と僕の仕事の内容に興味を示したその話し方は誠実でまっすぐだった。ダメだ。オチル。#霜降月物語 23

2022-11-05 12:00:02
RMP @spacetimefoam0

なんでもできると思ったり、なにもできないって思ったり。まるで中学二年生のような?僕のメンタルはどこかでキミが僕の方を向くことを待ち望んで、少しだけ背伸びをしたいと思った。ちょっとだけでいいから、よく思われたいって思った。キミに好かれたいって思いはじめてた。#霜降月物語 24

2022-11-05 17:00:01
RMP @spacetimefoam0

嘘はつけないから、文字だけのやりとり、声だけのやりとりに終始できなかった。どこかで変わりたいって思えたからなのかもしれない。だから、嫌われるかもしれない怖さが生じていたかもしれないけれど、伝えることにした。もう正直に素直に想いを伝えようって。キミに会ってみたい。#霜降月物語 25

2022-11-05 22:00:02
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