奈良をロード(自転車)で大人しく走ってたのにしつこくしつこくクラクションを鳴らされた。

H.Sakai 🚲UberEats大阪🍔🍱🍜 @FoD5

毎日自転車に乗るのが楽しくて仕方なかった頃だから、15年くらい前の思い出。暇さえあれば、ロードで近所を走る毎日だった。

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当時、浪速区は通天閣のすぐ近くに住んでいたので、ロードで近所といえば、だいたいが大阪市から国道25号線を西に進み、奈良をぐるっとまわって戻ってくるコースである。

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一番よく使ったのが、R25で王寺町まで進み、そこから北にR163へ折れて斑鳩町を北上、生駒市から阪奈道路で生駒山脈を越えて戻ってくる、70km弱、2時間40分くらいのコース。私はこれを斑鳩（いかるが）周回コースと呼んでいた。

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もう少し時間に余裕のあるときは「奈良周回コース」を走った。これは王寺からR25をそのまま西に天理市まで走り抜け、そこから北上して奈良市、そして斑鳩周回コースと同じく阪奈道路で大阪に戻ってくる、一周80km、3時間強のコース。

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奈良周回コースは、天理市では相当長く信号に止まらずインターバル走が出来たり、帰りの阪奈道路では徐々にアップダウンの激しくなるヒルトレーニングが出来たりで、真面目に走れば相当足にくるお気に入りコースだった。

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お気に入りの奈良周回の唯一の難点は、王寺から天理市に抜けるR25の道幅が狭く、相当に走りづらいこと。特に法隆寺の前あたりから車の量が増え、走りづらいことこの上ない。

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普通はこの区間、渋滞気味に車が流れるので、その場合は車に合わせて30～40km/hで走れ、それほど苦痛ではない。問題はなまじ車の流れがよく、とてもついていけない場合。狭い路肩の左を走り、横をびゅんびゅん車が走るのは、危険であり苦痛である。

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なにより嫌なのが、通り抜ける車にクラクションを鳴らされること。こんな狭い道を走ってるんじゃねぇという運転手の気持ちも、わからなくはない。だからこそ邪魔にならないようになるべく道の端を走っている。

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昨今こそスポーツや通勤でロードに乗る人が増え、道路上でも自転車は市民権を確立し、街道を走ってもあまり邪魔にされることの無くなったのは、慶賀の至りである。

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しかし、当時はまだ路上を走るロードは、車にとっては邪魔者以外の何者でもなかった。いや、邪魔なのは昔も今も変わらないのだろうが、当時は、自転車が車道を走るのは違法行為だと、本気で信じてるドライバーがかなりの割合存在した。

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相手が違法だと信じているから、そういうドライバーは、普通に走っていてさえも、ロードを見つけるとここを先途とばかりクラクションを鳴らす。日ごろの鬱憤晴らしに鳴らしてるんじゃないかと思えるような鳴らし方をしたり、時には幅寄せしてくる車もあったのは事実。

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もっとも、実はロード乗りも結構気の荒い人種で、鳴らされたクラクションに腹を立て、シューズ(裏に金具付き)で車の○○を○○○ったり、山中で喧嘩になったトラックの○○○に○○こみ、○○を○○て、谷底に投げ込んだりとか、いろいろ武勇伝を聞いたことはある。

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ただし私に関しては言えば、いたって気が弱い性格で、よほど酷い鳴らされ方でなければ、腹の中で舌打ちするくらいでやり過ごすのが常だった。

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路上で怒鳴りあいなどすれば、せっかくの貴重な自転車の時間が台無しになる。集中力が途切れて、練習にもサイクリングにもならなくなる。第一みっともない。

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さてその日も、適当に仕事の手を抜き、午前中からいそいそと奈良集会コースへ走りに出たのだった。王寺を抜けて法隆寺の前には、道路脇に鹿の像があり、最初のうちはいつもここで「うわ、鹿だ」と驚いてこけそうになった。

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法隆寺を過ぎると、今日は車の流れが速い。仕方なく道路の端により車をやり過ごしながらゆっくり走る。嫌な予感は的中し、しばらく走ると後ろからクラクションを鳴らされた。あぁやっぱり、と憂鬱になりながら、道路のさらに端により、さらにスピードを落としてやりすごそうとした。

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しかし、そこでまたしてもクラクション。チラと振り返ると、普通の乗用車である。狭いといってもバスやトラックだって脇をすり抜けて行ける幅はある。こいつ、嫌がらせだろうか。そう思いつつも、これ以上寄るともう田んぼに落ちるとこまで寄り、スピードもわざとらしく停車寸前まで落とした。

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三度目のクラクション。もうわかった。これはもう、完全に嫌がらせだ。出掛けに何があったか知らないが、目の前に「違法走行」している獲物を見つけて、うさ晴らしにクラクションを鳴らしてきたのに違いない。

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ついに堪忍袋の緒が切れた。私はとうとうプッツンしてしまった。振り返ると、逆光でハッキリとは見えないが、運転席の人影は、右手を振り回しながらなにやらわめいている。うわ、こいつ、完全にヤカラだ。

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逆光の人影をにらみながら私は、あなたは少し騒音を出し過ぎているのではないかという意味のことを、関東弁の四文字の単語で伝え、次いで、あなたは知能が劣っているのではないかという趣旨のことを、関西弁の漢字二文字の言葉で、声高に伝えた。

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返ってきたのは、四度目のクラクション。あぁ、こいつはだめだ。人が穏便に話してるのに何だこいつは。とても話の通じる相手ではない。相手にするだけ時間の無駄だ。

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そう思いつつも私はそのヤカラに再度、君は騒音過剰だよという趣旨の、今度は関西弁の四文字の単語と、君は相当知性の劣った男性だよという趣旨の、今度は関東弁の四文字の単語を、穏便に、あらん限りの声量で伝え、ペダルに足をかけて走り出した。

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車は私を抜きもせず、後ろを付いてくる。その時、すぐ前の信号が赤になり、私の自転車とヤカラの車は、並んで止まることになった。案の定、運転席の人影が助手席に乗り出して来る。そして窓ガラスを開け始めた。

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私は身構えた。さぁ来たぞ。こいつ何か言ったら、三倍は言い返してやる。こういうときのためにロード乗りは日ごろから理論武装してるのだ。えーと、道路交通法第、、、。

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助手の窓から突き出された顔を見ると、意外にも細面で気の弱そうな、三十歳前後の若造である。そうそう、こういう奴がハンドルを握ると性格が変わるんだよな。