モータル・ニンジャ・レジスター #3

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

第二部「キョート殺伐都市」より:モータル・ニンジャ・レジスター」#3

2011-10-10 14:40:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シメジ・サンロウはアンダーガイオン第二層で零細の印刷所を構えるキョート市民である。第二層といえば、全体からみればそこそこの位置に収まっているとも見える。下にはまだ十数層もある。だが所詮それは無意味な比較、詭弁だ。太陽を奪われ苦しい日々を送る階級である事に変わりはないのだから。

2011-10-10 14:51:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼は近隣の求人情報誌やパチンコ・カジノ、合法マイコセンター等をクライアントとし、苦しいながらも日々の衣食住に感謝しつつ暮らしていた。……さて、人は昨日まで安定した暮らしが送れていれば、今日も明日もそうであると考えがちである。昨日までこのイカダは無事に川を下れた。だから明日も、と。

2011-10-10 15:28:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だが実際、明日この川が滝壺に落ちないと、過去の経験を根拠に決める事はできない。忘れがちな事である。そしてシメジも例に洩れずそうであった。

2011-10-10 15:31:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シメジにとっての「滝壺」はなんであったろうか?……彼の印刷所の経営が立ち行かなくなったのは、いくつかの突然の法改正を原因とする。まず、取引先の合法マイコセンターの女体盛りサービスが違法化し、立ち行かなくなった。そのマイコセンターではツキジ仕込みの板前が腕を振るうスシが売りだった。

2011-10-10 15:52:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マイコセンター「美の味覚」は、「欲求が満足するオイシさ」をキャッチフレーズに、マイコの魅力とうまいスシをハイブリッドさせて評判を得ていた老舗だ。女体盛りが奪われれば、この店に存在意義は無くなる。実際、突然の法改正にともない、このマイコセンターを利用する客は20分の1に縮小した。

2011-10-10 16:00:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【ノーティス】TL取得漏れインシデント重点。試験的に文末にツイート通し番号を振ります。この回の話はタイトルツイートを除くと既に5ツイート載りました。次は6です。6から振ります。【身を守る】

2011-10-10 16:05:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

なぜ女体盛りが突如違法になったのか?理由などない。タテマエ的な理由はもちろんある。衛生面。道徳的観点。しかし真の狙いは、認可を行う公的機関の権益拡大にある。無意味なチェックポイントを増やしたり変えたりする事で、その都度、認可機関のワイロやアマクダリの口実とするのだ。 6

2011-10-10 16:11:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

それをきっかけとして経営難に陥る店があろうと、認可機関は当然痛くも痒くもないし、弱者の抗議に耳を貸す事もない。かくして、アンダーガイオン第一層の老舗マイコセンター「美の味覚」は脆くも廃業し、シメジは大口のクライアントを失ったのである。 7

2011-10-10 16:14:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シメジには養わねばならない家族がいた。妻は他界した。三人の子供はハイスクールに通っている。そして寝たきりの母がいる。稼ぎは常にギリギリであり、印刷機械の月々のローンが支払えなくなればシメジの暮らしはおしまいだ。彼はどうしたか?手を差し伸べたのは地元のヤクザクランであった。 8

2011-10-10 16:21:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ポイズンオシルコクラン」が持ち掛けたビジネスは、やはりマイコセンターの広告チラシであった。ただし、違法の地下マイコセンターだ。女体盛りどころの話ではない。激しく前後するし、被虐嗜好の客を囲んで警棒で叩く事もする。テングダケを使う店もある。 9

2011-10-10 16:28:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

こういった違法マイコセンター店が大っぴらに摘発を受けて逮捕される事はさほど無い。簡素な設備であるから、すぐに店を畳み、また開業する事ができる。それを逐一追いかけていても、マッポはキリがないからだ。だが、重厚な設備を要する印刷業者はそうはいかぬものである。10

2011-10-10 16:33:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

リスクは大きい。摘発されれば大変な事になる。だがポイズンオシルコクランの提示した報酬を、追い詰められたシメジが禁欲的にスルーできるはずもなかった。このままでは子供達はハイスクールへ通い続ける事ができなくなるし、親の薬も買えない。彼は話に飛びついた。バレぬようにやるだけだ。 11

2011-10-10 16:43:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そう、シメジは常に考えていた。昨日まで大丈夫だったのだから、今日も明日も大丈夫。昨日まで摘発されなかったのだから、今日も明日も。……そして、滝壺に落ちた。 12

2011-10-10 17:10:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼の印刷所に自信たっぷりに踏み込んで来たデッカーは、卑猥な裸体写真が配置された広告チラシをその場で押収し、道徳を説いて去った。あっという間に彼は100日の営業停止処分を受けた。100日?無収入?無理だ!では下層におりて鉱山で働くのか?バカな!それではとても家族を養えない! 13

2011-10-10 17:28:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そんな彼に手を差し伸べたのはやはりポイズンオシルコクランだった。ヤクザはシメジに言った。「この印刷所の印刷機を買い取ってやる。ひと財産になるだろうが。その間に仕事探せよ」提示された二束三文の買取額を前に、シメジはようやく気づく……最初からそれが目的だったのだ!なんたる陰謀! 14

2011-10-10 17:34:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……「で、そこへニンジャスレイヤーのご登場ってわけか?エッ?」サンバーンがシメジを蹴った。猿轡は解かれたが、スマキのままである。「アイエッ!ニ、ニンジャ……ええ、タカギ=サンのことですか?」「タカギ?誰だ」センチュリオンが首を傾げる。「タカギ・ガンドーだ」とディヴァーラー。 15

2011-10-10 23:18:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ガンドー?」「タカギ・ガンドー……なるほど、つながる、つながる」ディヴァーラーが一人納得しながら、「ケチな探偵野郎よ。シテンノのブラックドラゴン=サンとその弟子が、そいつのケチな探偵事務所でニンジャスレイヤーに遭遇した。弟子は生き残ったがブラックドラゴン=サンは死んだ」 16

2011-10-10 23:26:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……!」「ガンドーを捕らえる命令を直々に受けたニンジャもギルドにいるはずだぜ。ニンジャスレイヤーの手引きをしてシテンノの一人を殺させた重要参考人だからな。しかしニンジャスレイヤーの奴、探偵野郎の事務所にたまたま居合わせたのかと思ったが、その後もビジネスしてやがったとは」 17

2011-10-10 23:34:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ガンドーとやらと共謀して、ふざけたビラ作り……」センチュリオンが吐き捨てるように言う。「ニンジャスレイヤーめ……」「ところで生き残った弟子はどうなったんだ?」サンバーンがイカのスシを二つまとめて食べながら口を挟む。「まだアプレンティスだろう?誰の預りだ?次もシテンノか」 18

2011-10-10 23:41:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そんな話はいい!ニンジャスレイヤーを殺すのだ!」センチュリオンが机を叩いた。だがディヴァーラーは手を振って制し、「熱くなるのは戦闘時でいいぜ、センチュリオン=サン……あれだ、そのアプレンティス、今はパープルタコ=サンの預りだとよ」「おう!そりゃまた!」サンバーンが笑う。 19

2011-10-10 23:47:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そりゃさぞかしお盛んだろう!ワシもパープルタコ=サンに弟子入りしたいものよ!あの豊満な胸と淫らな腰!」「バカな」ディヴァーラーも笑い、「あのメンポの下がどうなっているか、知っておろうが」「後ろからなら同じことよ!」「スカートの下もどうなっておるか、わからんぜ」 20

2011-10-11 00:04:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「それぐらいにしておけ!」センチュリオンが怒鳴った。彼は古強者めいて、冗談の嫌いな堅物なのだ。「作戦の委細を話せディヴァーラー=サン!」「ああ、すまんすまん。俺じゃない、サンバーン=サンが悪いんだぜ」「ハッハハハハ!」 21

2011-10-11 00:48:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャ達の謎めいた、そして狂気じみて下卑たやり取りを、簀巻きのシメジは涙目で床から見上げていた。「話をまとめるとだ。このクズが」「アイエッ!」ディヴァーラーはシメジを蹴り「ニンジャスレイヤーに通じた探偵野郎の依頼で、例の挑戦的なチラシを印刷していたわけだ」「アイエエ……」 22

2011-10-11 01:09:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「こんな意味のわからん受注をするとは、金に困ったのか?ん?」ディヴァーラーはシメジの髪を掴んで顔を覗き込んだ。「そうですよ。こ、こうするしか無かったんですよ。私には家族がいるんです!モグリの仕事でも必要だったんだ」シメジは気丈に答えた。三人のニンジャはそれを嘲り笑った。 23

2011-10-11 01:29:37