【低線量被ばく】より現実的なリスクの認識を。

”けっして、20ミリなら危険、1ミリなら安全ということではありません。 「ゼロリスク」を求める方がいらっしゃいますが、それは現実的ではありません。 「安全か危険か」ではなく、どの程度のリスクがあるのかを認識することが 大切です。” ”非現実な「ゼロリスク」ではなく、より現実的なリスクの認識を。” 斗ヶ沢秀俊さんのツイートのまとめ。(2011/10/13)
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斗ヶ沢秀俊 @hidetoga

世田谷区の区道で、毎時2~3マイクロシーベルトの高い放射線量が 測定され、新聞やテレビのニュースで大きく取り上げられています。 原発から200キロ以上も離れた場所で、どうしてこれほどの線量に なったのかを調べることは重要です。しかし、(以下続く)

2011-10-13 14:14:49
斗ヶ沢秀俊 @hidetoga

「世田谷区で高い放射線量を測定」というニュースが、 多くの方に放射線・放射性物質に対する過剰な不安、恐怖心を 抱かせることを、私は心配しています。国は避難基準を年間20ミリ シーベルトに定めました。世田谷区の測定結果はそれを超える可能性のある数値です。

2011-10-13 14:19:54
斗ヶ沢秀俊 @hidetoga

では、年間20ミリシーベルトを超えると、「危ない」のでしょうか。 放射線の健康影響で分かっていることを以下に記します。 500ミリシーベルトを超える線量を被ばくすると、白血球の減少などの症状が出始めます。2000ミリシーベルトを超えると、脱毛や生殖機能への影響などが現れます。

2011-10-13 14:24:42
斗ヶ沢秀俊 @hidetoga

一時期に5000ミリシーベルトを被ばくすると、半数の人は死亡します (半数致死量)。こうした高線量の被ばくによる影響を、「確定的影響」 と呼びます。だれでもに起こる現象だからです。100ミリシーベルト以下 の「低線量被ばく」では、こうした確定的影響は起こりません。

2011-10-13 14:27:41
斗ヶ沢秀俊 @hidetoga

現在の福島県民、首都圏在住者はいくら多くても、年間50ミリシーベルト 以下であり、確定的影響は起こりえません。つまり、不妊になったり、 下痢や鼻血が止まらなくなったりすることはありません。 障害を持って生まれる子どもの割合が増えることもありません。

2011-10-13 14:30:54
斗ヶ沢秀俊 @hidetoga

低線量被ばくで起こりうることは、「将来、がんで亡くなる人の割合が増える可能性がある」ということです。広島・長崎原爆の調査などから分かっていることは、一時期に200ミリシーベルトの被ばくをした人たちは、被ばくをしていない人たちに比べて10%程度のがん過剰死が生じるということです。

2011-10-13 14:35:54
斗ヶ沢秀俊 @hidetoga

100ミリシーベルト以下の低線量被ばくで「がんの過剰死」が生じるのかどうかは分かっていません。がんになるリスクを高める要因としては、たばこや高血圧、運動不足、野菜不足などがあり、これらの要因の方が低線量被ばくよりもずっと大きい。

2011-10-13 14:39:41
斗ヶ沢秀俊 @hidetoga

だから、低線量被ばくの影響を統計的に明らかにすることは、 とても難しいのです。国際放射線防護委員会は「放射線被ばくは 少ない方がよい」という防護の観点から、低線量被ばくでもがんの 過剰死は生じるという考え方をとっています。

2011-10-13 14:42:32
斗ヶ沢秀俊 @hidetoga

国際放射線防護委員会(ICRP)の仮説は「直線しきい値なし」仮説と 呼ばれます。これ以下は安全という「しきい値」はなく、どんなに低線量 でもがん過剰死は起こる、それは線量に比例する(グラフでは直線に なる)という仮説です。

2011-10-13 14:45:28
斗ヶ沢秀俊 @hidetoga

本当にしきい値はないのか、がん過剰死の割合は線量に比例するのか、 というのは専門家の間で議論があります。これは確かめられてはいないし、 先ほど書いたように統計的に確かめることが難しいので、 当面は分からないままでしょう。

2011-10-13 14:47:30
斗ヶ沢秀俊 @hidetoga

直線しきい値なし仮説に基づいて計算すると、一時期に20ミリシーベルト を被ばくした集団は、被ばくしていない集団に比べて、将来、0・1%程度のがん の過剰死が発生します。

2011-10-13 14:49:23
斗ヶ沢秀俊 @hidetoga

1000人の集団を考えると、一時期に20ミリシーベルトを被ばくした場合、 将来がんで亡くなる人が、被ばくしていない集団よりも1人多くなるという ことになります。

2011-10-13 14:50:53
斗ヶ沢秀俊 @hidetoga

先ほど、ほかの要因の方が大きいと書きましたが、例えば、喫煙者は 非喫煙者に比べてざっと2倍(200%)のリスクがあります。国立がん 研究センターはがんのさまざまな要因と放射線被ばくのリスク比較を していますが、喫煙は2000ミリシーベルトの被ばくに相当するリスクがあります。

2011-10-13 14:57:56
斗ヶ沢秀俊 @hidetoga

肥満(BMI30以上)や運動不足は200ミリシーベルト、野菜不足や 受動喫煙は100ミリシーベルトの被ばくに相当するリスクがあると 試算しています。

2011-10-13 14:59:36
斗ヶ沢秀俊 @hidetoga

けっして、20ミリなら危険、1ミリなら安全ということではありません。 「ゼロリスク」を求める方がいらっしゃいますが、それは現実的ではありません。 「安全か危険か」ではなく、どの程度のリスクがあるのかを認識することが 大切です。

2011-10-13 15:11:19
斗ヶ沢秀俊 @hidetoga

なお、放射線被ばくの影響は、同じ線量の場合、長期間にわたって 受ける方が短期間よりも影響が小さいと考えられます。年間20ミリ の被ばくは1週間での20ミリよりも影響は小さい。低い線量だと細胞の修復機能が働くが、一時期に高い線量を受けると修復が間に合わないためです。

2011-10-13 15:17:15
斗ヶ沢秀俊 @hidetoga

私が言いたいことは、「年間20ミリシーベルトを超えた、危険だ!」 と恐怖心を抱かないでほしいということです。きちんと調査をして、除染すれば、 いずれは低い数値になるはずです。

2011-10-13 15:21:51
斗ヶ沢秀俊 @hidetoga

放射線・放射性物質についての報道を見ていると、「子どもたちへの 影響はどうなんですか」「子どもの安全が第一でしょう」などと、 「子どもの安全」が錦の御旗になっているように思います。 「子どもの安全」が大切だという意見に逆らえる人はいません。

2011-10-13 15:25:16
斗ヶ沢秀俊 @hidetoga

しかし、根拠のない言説で放射線・放射性物質への恐怖心を煽ることが 子どもたちの健康や安全につながるのでしょうか。私はそうではないと 考えます。小児科医の方のブログで、次のようなことが書かれているのを 読みました。

2011-10-13 15:31:05
斗ヶ沢秀俊 @hidetoga

診察上は何も所見がないのだけれど、腹痛だの、吐き気だので来院するお子さんたちもいる。その子たちに、「もしかして、放射線のこと、心配なの?」 と聞くと、ほとんどの子どもはうなずく。大丈夫だよ、放射線のせいじゃないよ、と伝えると、みんな明らかに、ぱぁっ、と安心した笑顔になる。

2011-10-13 15:32:06
斗ヶ沢秀俊 @hidetoga

大人が過剰に心配して、子どもを不健康にするということが、 たくさん起こっているのではないでしょうか。世田谷区でも、 子どもの屋外活動制限といった話が出てくるでしょう。 そんな必要がある線量ではないはずなのに。

2011-10-13 15:34:55
斗ヶ沢秀俊 @hidetoga

子どもについて、もう一言。以前、週刊誌のアエラや週刊金曜日が、 福島の子どもたちによる「私は将来、普通の子どもを産めます か」と書かれた手紙を紹介し、見出しにも大きく取っていました。

2011-10-13 15:37:21
斗ヶ沢秀俊 @hidetoga

「普通の子ども」って、何でしょうか。障害を持って生まれたら、 普通の子どもではないのですか。人(他人)とは違っていたら、 「普通」ではないのですか。「人権派」であったはずの両誌が、 この言葉に潜む差別感覚に気づかずにいることに、私は 呆れました。

2011-10-13 15:41:42
斗ヶ沢秀俊 @hidetoga

そもそも、先に書いたように、低線量被ばくで、障害を持って生まれる 子どもの確率が増える(障害を持って生まれる子どもは、必ずある程度 の割合で生まれます)ことはありません。「普通の子どもを産めますか」 と子どもに書かせたのは、親やメディアの誤った情報です。

2011-10-13 15:46:05
斗ヶ沢秀俊 @hidetoga

広島・長崎原爆の被爆者の方々は結婚・就職差別などに苦しみました。 原発事故による不当、不条理な被害を受けた福島県の方々が、 万が一にも差別を受けることがないよう、大人はもちろん、子どもたち に正しい情報を伝えなければならないと思います。

2011-10-13 15:54:41