- onshokukiko
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ヘンリー5世妃キャサリンの戴冠式メニューなるものが残ってるんだけど、"frument with balten"(frumentは小麦を牛乳とスパイスで煮たものらしいけどbaltenて何だ)、"martine fried" (martineってテン?テンを食うの?)、"leech lumbard flourished"(ヒルを食うわけ無いしリーキか?)が何だかわからん
2022-12-15 16:32:41ヘンリー5世妃キャサリンの戴冠式メニュー
The first course.
Brawne and mustard, éeles in burneur, frument with balten, pike in herbarge, lamprie powdered, trowt, codling, plaice fried, martine fried, crabs, léech lumbard flourished, tartes;
ラファエル・ホリンズヘッド著『イングランド、スコットランド、アイルランドの年代記』より
原文を見ないと一概には言えないですけど、Martineは人名からの料理名説もあるかなぁ。 年代をパッと言えないですが、フランス人の料理人を雇っていた時代もあるので、フランス語の影響も可能性としてはあります。 ちと古英語のほうも調べないと。。。 twitter.com/Cristoforou/st…
2022-12-15 17:18:18@eastofthesunJP あーっ、そっちですかね…ただ、前後の食材が魚なんで、ここでいきなり野鳥やジビエが出てくるのもおかしい気がしていて、何か私が知らない魚の名前なんじゃないかとも疑っています…
2022-12-15 23:46:17@Cristoforou @eastofthesunJP そういえば、スペインでは聖マルティンとよばれている魚があります。 一般的には聖ペドロとよばれることが多いようですが、サンタンデールなど地域によって同じ魚を聖マルティンと呼んでいるそうです。 frescoydelmar.com/blog/pez-san-p…
2022-12-16 09:42:45こちらにつきまして、興味深かったのでちょっと調べてみました。前提条件もありますので、是非色々な方にお読みいただければ幸いです。このツイートにぶら下がる形でツイートしていきます。よろしくお願いいたします。 twitter.com/Cristoforou/st…
2022-12-16 18:30:49まず、さえぼう様の言う「ヘンリー5世妃キャサリンの戴冠式メニュー」につきまして。 色々な文献があるかと思いますが、手っ取り早くネットで読めるものがこちら。 Title: Chronicles of England, Scotland and Ireland Author: Raphael Holinshed gutenberg.org/files/46671/46…
2022-12-16 18:33:20ラファエル・ホリンズヘッドの『イングランド、スコットランド、アイルランドの年代記』。1577年初版、1587年第2版となります。16世紀の著作物となります。
2022-12-16 18:35:11「ヘンリー5世妃キャサリンの戴冠式メニュー」 改めておさらい。 ヘンリー5世(1387年 - 1422年)イングランド王(在位:1413年 - 1422年) キャサリン・オブ・ヴァロワ(1401年 - 1437年) 戴冠式:1421年2月 存じている方も多いかと思いますが、ほぼ15世紀の登場人物です。
2022-12-16 18:39:40戴冠式の料理メニューの第1のコースがこちらです。 読んでの通り、The feast was all of fish。ご馳走は魚尽くしでした。肉料理はありません。これは、1421年の2月開催ということでわかるかと思います。 pic.twitter.com/TIE1q0NCyp
2022-12-16 18:42:42she was crowned the first in Lent which that yere, fell vpon the ninth of Februarie. はい。予想通り、Lent(四旬節)期間でした。肉断ちの40日間です。2月9日からLentに入り、戴冠式は24日なので、肉は出せない。魚料理尽くしというのも納得ですね。
2022-12-16 18:45:37frument with balten
さて、さえぼう様の疑問点である"frument with balten"に進んでいきます。 まず、frument(y)はフルメント(フルメンティ)と呼ばれ、語源はラテン語のフルーメントゥム(frumentum)で穀物の意味です。このフルメント(フルメンティ)は14,15世紀に宮廷で流行した料理でした。
2022-12-16 18:50:13流行の料理のフルメント。ヘンリー5世の父であるヘンリー4生の戴冠式に出された料理メニューにも登場しますし、ヨーク朝最後の王リチャード3世の戴冠式にもフルメンティが出てきます。15世紀のヨーロッパ宮廷を代表する料理の一つです。 画像は拙著『食で読むヨーロッパ史2500年』(山川出版社) pic.twitter.com/FBnQtBp819
2022-12-16 18:57:39リチャード3世の戴冠式での鹿肉のフルメンティは、少しこの画像を参考にしました(寄せてみました)。 "a type of grain porridge, and possibly colored with saffron" 「穀物粥の一種で、サフランで色付けされている可能性もある」 en.wikipedia.org/wiki/Frumenty#… pic.twitter.com/hmOI2YNBHl
2022-12-18 21:21:16frument はわかった。では「with balten」のバルテンとはなんぞやに迫ります。まず、ここまでの前提条件がLentのため肉料理は出せず、魚料理尽くしの戴冠式料理メニューと綴られています。フルメントは小麦粉とスパイスなどで作られる粥なのでbaltenが魚と推測できます。中世魚粥ですね。
2022-12-16 19:01:48最初は、このbaltenを他の外国語の借用語として使われたのではと推理しました。キャサリンもフランスからの嫁ぎですし、英語がもとではない単語かと思ったのですが、改めてbaltenは魚であるという前提があります。この綴りと魚からバルト海(baltic Sea)の可能性があるのではと思い至りました。
2022-12-16 19:05:24(途中のやつ引用RTでスンマセン)。中世ヨーロッパの料理指南集に登場するお魚表記は実に多種多彩(=半ば多国語ごちゃ混ぜ)だったのか、中にはいまだに解読不能なお魚系単語もございます。音食紀行さんがご指摘頂いているように、特定地域を指した魚名表記はアリといえばアリかなー、と思います。 twitter.com/onshokukiko/st…
2022-12-16 19:52:09「記録した書記官の勘違い(書き違い)」というのも、単語系の混乱の元ではないかな、とも個人的には考えています。文字は書けるけど、ブツを見たことがなければ聞いた言葉を書き記すわけですが、スペルミスだったりてきとーに脳内変換しちゃったりした、という可能性もなきにしろあらずで(/ω\)。
2022-12-16 20:00:05実際のところ、中世からイングランドの人々がバルト海貿易を経て手に入れたニシンを食べていた(特に四旬節に)という研究発表資料が出てきました。 続く
2022-12-16 19:09:19