ストーリー第10回目　２幕目をぐいぐい動かすための小技を紹介するよ！

榎本憲男★『サイケデリック・マウンテン』絶賛発売中！！！ @chimumu

0.はーいchimumuだよ。今日も映画のストーリーの構造の基本をつぶやいていくよー。

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1.まず、しつこく復習だ。物語の骨格を起承転結で考えない。状況設定・葛藤・クライマックス&解決の三幕構成で捉えることが大事だ。

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2.起承転結の四幕構成が間違いというわけじゃないよ。因みにアリストテレスは五幕構成が物語の基本モデルだと言っているようだ。では、何故三幕構成なのか？　こっちの方が簡単だからだ。僕や君のような複雑なことがあまり得意でない人に向いてるよ。

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3.第一幕30分・第二幕１時間・第三幕30分、計２時間のストーリーは野球のダイヤモンドでイメージするのがいい。http://twitpic.com/1k7vw0

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4.状況設定≒キャラクター設定≒“欲しいもの”の設定、という図式も思い出して！

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5.“欲しいもの”は様々な形で現れる。災害で地下に閉じこめられた人間はなんとか地上に脱出したいと思案し、ボクサーは勝ちたいと特訓し、刑事は犯人を捕らえたいと街をさまよい、妖怪人間ベムは「早く人間になりたい」と呻く。これらはみんな“欲しいもの”だよ。

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6.こうしたジャンル映画のストーリーでは“欲しいもの”は明解でキャラクターは記号的でフラットだ。エンターティメント系の商業映画を書くなら、まずここを押さえよう。え、ジャンル映画って何かって？　それはまた今度話すね。

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7.一方“欲しいもの”が明確にわからない人間というのは複雑な現代社会ではある意味リアルだ。リアルではあるけれど、こういう人間を主人公に置いちゃうと物語はどよーんとしてドライブしない。

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8.また昨今、主人公にセットされている“欲しいもの”のボルテージが下がりまくっているという問題がある。日本映画でよく起こっていて、「こいつの“欲しいもの”はこれでーす」と一応設定はしているのだが、観客の方は「どーでもいいじゃん、そんなもん」と思ってしまうという問題。

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9.この辺に関する問題は他にもあって、これらをみんなひっくるめて「“欲しいもの”問題」と僕は言っているんだけど、これについては、また今度つぶやく。

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10.実はここまでが長い枕なんだ。さて今日は、第二幕という１時間の長丁場を、物語を沈滞させずにどのように動かしていくのか、ということを話すよー。

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11.二幕目をキープする最も大事なテクニックは「メインプロットとサブプロットをインターセクト（交差）させる」ことだ。これについては前に語った。これが一番大事だ。これに加えて、もう少し小さな技術についても解説しよう。

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12.基本中の基本は、主人公の行く手に障害物を置くこと。これをバリア（Barrier）という。とにかく主人公を不自由にさせてしまうのである。

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13.例えば、道がぬかるみになっている、大事な物を盗まれる、勤めていた会社が潰れる、逃げようとしていた時に吊り橋が降りる、主人公が「かんべんしてよ」と音を上げるようなことをやる。

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14.自主映画は総じて話の展開において主人公にやさしい。主人公への自己投影の濃度が強く、自分に優しくしたいと思う気持ちが働いているからだと思う。でも心を鬼にして、主人公をいじめ倒さなければならないんだ。

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15.次はリバーサル（reversal）というテクニックだ。これがバッチリ決まると観客をあっと驚かせることができる。例えば次のようなシーンを思い起こして欲しい。３０代半ばの男達がビアホールで飲んでいる。会話の内容から察するとどうやら剣道部の同窓会らしい。

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16.「ところで中嶋は今どうしてんだ」と誰かが言う。「あぁ、あいつは今タンザニアだ」「どうして」「左遷。上司にたてついたんだと」「あいつらしいなー」「まったくー」などと言い合ってこのシーンが終わる。しばらくした後、この中嶋が登場するのだが、中谷美紀のような美女である。

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17.オトコどもの会話で、中嶋という人間を観客が男だとイメージするように誘導しておき「実は女だよー」とひっくり返してしまう。リバーサルは「実は――でした」という小技だと考えればいい。

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18.TVドラマシリーズ「２４」はこのリバーサルを頻繁に使う。敵と思っていたが実は味方、味方と思っていたが実は敵、という具合にキャラの記号をひっくり返していき、観客をあっと言わせ続けるのだよ。

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19.最後にもうひとつ紹介しよう。フォーシャドウイングとペイオフという言葉は、翻訳されたシナリオの教科書を読んでいるとよく出てくる。英語で言われるとややこしいし、ちょっと翻訳で読むと解説も飲み込みにくい。でもchimumuにまかせといて、無理矢理にでもわかりやすくするから。

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20.これは「前フリとオチ」と解釈すればいい。前フリの段階では観客は意味がわからないが、オチると「あーん、こういうことだったのね」と理解する。これがフォーシャドウイングとペイオフ（foreshadowing pay off）だ。じゃあ、ちょっと次の例をみてみて。

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21.場所はレストラン。これから始まる楽しいであろう旅行の計画を若い女の子たちがキャッキャッと喋っている。彼女たちの座席の背後には、暗い海に難破しかかった船の絵が飾られていて、このシーンの終わりでこの絵に向かってカメラがズームしていく。

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22.シーンはとんで、彼女たちが旅の途中で思いも寄らぬ海難に出くわした時、「ありゃあ、あの絵みたくなってるー」と観客が得心する。これが、フォーシャドウイングとペイオフだ。

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23.他にもあるが、とりあえずこのくらいでいいだろう。けれど、一番大切なのは“メインプロットとサブプロットを交差させる”ことだ。なぜならこれは物語の全体像に大きく影響するから。今日の三つは使えるところで適当に使えばいい技だ。

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24.さて、“欲しいもの”を求める主人公の旅は、いよいよ第三幕に突入する。ここまで来ればあとは最後の最後までどうやって盛り上げるかだ。その時に注意しなければならないことは、またつぶやこう。