サブカルチャーと後期クイーン的問題

サブカルチャーの通俗性から後期クイーン的問題を考えてみました
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@quantumspin

「批評のアクチュアリティと後期クイーン的問題」をトゥギャりました。 togetter.com/li/2020539

2022-12-25 11:15:06
@quantumspin

サブカルチャーはポルノ性から逃れられないと言う話がずっと引っかかっていて、本当にそうかと考えているtwitter.com/comecaML/statu…

2022-12-24 07:51:16
コメカ(早春書店、TVOD) @comecaML

ジャンクカルチャーに携わる人間はみんな大なり小なりポルノ性を利用することになるんだから、誰もが「うしろめたさ」を抱え込むことになるはずなんだよね本来は。そのことにどう向き合うかが問題なのであって、それをエクスキューズやアリバイ作りを通して脇に置いてしまってはいけないと思うんだよね twitter.com/comecaML/statu…

2022-12-20 16:38:27
@quantumspin

通俗はポルノでしかないと言うのは、人間は日常生活の大半を猥褻な事を考え過ごしていると言ってるようなものではなかろうか。通俗が生活必需品なら、生活必需品はポルノでしかない事になってしまう

2022-12-24 07:58:25
@quantumspin

言い換えると、「欲望の即物的な喚起・消費」にリーチするサブカルチャーがあったとして、それに対する抵抗とは、マイノリティの声なき声をすくい上げる文学でしかなし得ないのだろうか。自分はそんな筈ないと思う

2022-12-24 08:07:12
@quantumspin

少なくともチェスタトンやエンデは、そうした抵抗を通俗小説のなかにこそ見出していた筈なんです。彼らにとって「欲望の即物的な消費」とは、むしろ「狂気」に近いものだった。同じように、宮崎駿がマジョリティにリーチする通俗アニメを作った当時、「欲望」に対する後ろめたさがあった筈もなかろうと

2022-12-24 08:21:14
@quantumspin

エンデが資本主義を批判しながら、そうした批判を市場原理に従う通俗小説形式で行ったのは、やはりサブカルチャーの力を信じていたからだと思う。経験知識に歪められた大人の「欲望」ではなく、人間存在が根源的に持つ通俗性こそ、文学にできない、マジョリティを変える力があると信じたのではないかな

2022-12-24 10:33:21
@quantumspin

人間は、朝から晩までずっと高尚な事を考えているわけでもなければ、ずっと卑猥な事を考えているわけでもない。通俗=生活必需品がポルノ性から逃れられないなら、人は一日中ポルノを接種し生きている話であって、そうしたビジョンは単に病的なだけでなく、そもそものところ人間的とは言い難いんです

2022-12-24 11:31:45
@quantumspin

文学は本質的にリベラリズ厶に見える。LGBTだったりジェンダーだったり、そうしたマイノリティの声なき声を明るみに晒し、社会の矛盾を暴露することで、個人の自由を目指していく。これは人間が生まれ持った価値観ではなく、後天的理性によって規律訓練された価値観

2022-12-24 12:13:48
@quantumspin

ここから資本主義が出てくるわけで、他者を蹴落とし個人の欲望を最大化していく価値観に向かっていく。消費者の欲望にリーチさせるサブカルチャーの場合、ここをめがけて商品を投下していくわけですね

2022-12-24 12:17:24
@quantumspin

つまり資本主義的なサブカルチャーも文学も、いずれも根底には、個人の自由を重んじるリベラリズムがあったように思える。その前提で消費か非消費か、理性か欲望かを考えているのだと思うんですが、人間の持つ根源的な通俗性ってそうした意識高い大人の価値観とは対照的と思える。もっと原始的で児童的

2022-12-24 12:24:07
@quantumspin

そういった意味で、近年アニミズムとか縄文文化とかが見直されつつある現象も、こうしたリベラリズムに依拠した、理性か欲望かの二元論から抜け出す回路を日本人が模索した帰結のようにも思えるんですよね

2022-12-24 21:51:24
@quantumspin

ミステリは通俗小説か高尚文学か、と言う話はよく議論されていて、笠井さんは二十世紀的文学だと言ってますね。この根拠にもやはりリベラリズムが使われています。計画殺人と探偵の推理によって、被害者の固有名(個人の尊厳)を回復させると言っている

2022-12-25 08:14:25
@quantumspin

たしかにポーに帰ると、彼のミステリはリベラルな文学と言い換えられるものに見えます。ただしポーの場合は、被害者と言うより探偵の世界観にそれが宿されて見える

2022-12-25 08:18:19
@quantumspin

この、理性主義とでも言うべき感覚を突き詰めたのがエラリー・クイーンで、よく知られている通り、彼は後期クイーン的問題にまで行き着いてしまう。新本格やメフィスト賞の時代に後期クイーン的問題が流行ったのも、根底にはリベラリズム、資本主義があったんだと思います

2022-12-25 08:22:50
@quantumspin

一方で、ポーとクイーンの間にドイルとチェスタトンがいます。彼らの違いは、アメリカとイギリスの違いでもあり、高尚文学と通俗小説との違いでもあったように感じられます。ドイルはミステリを通俗と嫌い、チェスタトンは逆に、その通俗性をこそ尊重した

2022-12-25 08:27:22
@quantumspin

ドイルはホームズをヒーローとして描き、チェスタトンはブラウン神父を平凡人として描きます。ドイルはロマン主義的で、チェスタトンは保守主義的と言えるのかもしれません。探偵の実存や理性の限界説とった、リベラル文学的要素が希薄なのは、彼らがミステリを通俗小説として描いたからです

2022-12-25 08:34:57
@quantumspin

つまり、ポーがリベラルな文学として立ち上げたミステリは、ドイルやチェスタトンの時代に、一度通俗小説として捉え直されているわけなんです。この流れはどこから来たんでしょうね。考えてみれば、興味深い現象です

2022-12-25 08:49:54
@quantumspin

翻って現代ミステリは、ゼロ年代の後期クイーン的リベラリズムから打って変わって、ドイル的ロマンスやチェスタトン的な保守化が目立っています。前者は例えば、青崎有吾『アンデッドガール・マーダーファルス』がわかりやすいでしょうし、後者の傾向はミステリ全般のホワイダニットの尊重に見られます

2022-12-25 08:56:47
@quantumspin

現代ミステリのこうした流行の変遷がどこからでてくるのか。むろん単純ではないでしょうが、シャーロック・ホームズの時代になにかヒントがあるものかも知れませんね

2022-12-25 08:59:39
@quantumspin

「文体とトリックと後期クイーン的問題」をトゥギャりました。 togetter.com/li/2034697

2023-01-04 22:57:13