ナイト・エニグマティック・ナイト #3

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
書籍 文学 ニンジャスレイヤー
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Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
(第2部「キョート殺伐都市」より 「ナイト・エニグマティック・ナイト」#3)
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(前回までのあらすじ:アッパーガイオンの高校に通うナブナガ・レイジは、父親をカロウシで失ってからというもの、ノートに攻撃的な暗黒ハイクを編み、夜は独りニンジャセッションを繰り返す不毛な高校生活を送っていた。そこへ、ドクター・ハイクなる謎の人物からIRCメッセージが届き……)
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ガイオンは世界有数の観光都市だ。多種多様の人種が深い歴史を持つこの古都を訪れ、ゲイシャ、テンプル、キョート山脈に映し出される大きな漢字などを楽しむ。美観を損なわぬよう、五重塔よりも高い一般建築物は存在しない。基盤のように均等な各区画には、同じ外観、同じ高さのビル群が立ち並ぶ。 1
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この法に対抗すべく、ガイオン中心部の企業群は、地下へ地下へと自社ビルを拡張していった。やがて、地下数十階規模まで増築されたビル群の間を繋ぐ地下道が形成され、サラリマン向けの商業施設、歓楽街、コフィンホテルなどが築かれ……いつしか3階層ほどのアンダーガイオンが出来上がっていた。 2
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その後もアンダーガイオンは、時に共和国政府による介入を受けながら野放図な拡張を続け、現在のような逆ピラミッド型の混沌とした多層サイバー都市へと成長したのだ。中心部は1~5階層が貫かれ、ネオサイタマに酷似した市街地が広がる。そこには道路も車も存在し、地上と錯覚する観光客も多い。 3
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観光客は猥雑なアンダーガイオンに立ち入らぬことを推奨されているが、実際には、非合法物品や、違法マイコサービス、過激なオスモウピットファイトなどに惹かれて、多くの観光客が大型リフトに乗って地下都市へと足を踏み入れている。安全が保障されているのは、アンダーガイオン第5階層までだ。 4
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そして今、レイジは第8階層行のリフトに乗っていた。激しく金属部と滑車が擦れ、バチバチと火花が散る。上層から染み出してきた汚染水の水滴が暗闇の中へ落ちていく。鉄網状の足場は、いかにも頼りなく揺れていた。タタミ20畳ほどのリフトに、乗っているのは彼と2人のブディズムパンクスだけ。 5
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「ブッダがある男をジゴクから助け出すため、切れやすい蜘蛛の糸を垂らした。ナンデ?」蛍光ブッダヘアーの2人は難解なスカム禅問答を繰り返す。「ゲイのサディストだから」「正解です」。彼らのあまりに異質な思考回路と、露出した逞しい二の腕は、リフトの端に立つレイジを酷く恐怖させた。 6
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「ブッダが谷底で飢え死にしかけた時、タイガーが突然谷に身を投げ死んだ。ナンデ?」「タイガーはゲイだった」「正解です」。…バチバチバチと火花が散る。遠くで第8階層のネオンが煌めく。時折パンクスたちはレイジを見た。レイジは話しかけられぬよう、虚空に向けヌンチャクを振り回していた。 7
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リフトが第8階層の大地をノックする。第6~8階層の環境は劣悪だ。工業区画であり、中心部に居住施設はほぼ存在しない。強制収容所じみたトーフ工場、ショーユ工場、コケシ工場……あとは実際安い歓楽街が並ぶだけである。レイジは汚染空気に耐えかね、防塵ネックウォーマーで鼻を覆い隠す。 8
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早足にリフトを離れるレイジ。(((おそろしい……まるで野獣のような連中だった)))ヌンチャクを背中の鞄に仕舞いながら、安堵の息をつく。それからポータブル・フロッピドライヴをLAN直結し、周辺地図を読み込む。ドクター・ハイクと落ち合うためのバー、「安らぎ」を探しているのだ。 9
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「スラムダンク」「アブナイ」「限界」「バカ」……工場の壁には抑圧された市民たちの叫び声か、あるいはギャング団の秘密暗号めいたスプレー文字が目立つ。ゴミ捨て場の横には薄汚い鹿の群れ。アッパーガイオンとは何もかもが違っており、その全てが、レイジの期待を大きく裏切るものであった。 10
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地下世界には、あの嘘と虚飾にまみれたアッパーガイオンとは違う、何らかの美しきものが存在するのではないか……という儚い希望を、レイジは抱いていたのだ。だが彼はその考えに疑問を抱き始めていた。この粗悪な闇の世界は、彼を受け入れない。汚染大気がまず、彼の生存を拒絶している。 11
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二十分後、レイジはドンブリ・ストリートの中に、ようやくバーを発見した。店の奥の暗がり……大型ファンから漏れる工場の光に照らされて、ランニングに薄汚い白衣を着たみすぼらしい40がらみの男が、ソファに腰掛け静かにケモビールを飲む。「あなたが」「いかにも、私がドクター・ハイクだ」 12
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一方その頃……レイジが入ったバーの裏手、廃工場と化したコケシ・ファクトリーでは、ヤクザギャング達の秘密会議が行われていた。 14
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トーフの内部を思わせる、だだっ広い灰色の空間。かつてコケシ工場のオフィスであったと思われるその部屋には、数本のLEDボンボリと、大きな机がひとつだけ残されていた。壁には「ジリー・プアー(徐々に不利)」「危機だ」「良くやっていない」などの危機感を煽るショドーの残骸。 15
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机の周囲に立つ十数人のヤクザギャングたちは、ダスターコートの懐から万札、大トロ粉末、素子、違法薬物などを取り出し、机の上に黙々とプールしていく。バチバチと頭上のタングステン・ボンボリが明滅し、彼らのサングラスに反射した。 16
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ヤクザギャングたちは机から一歩退く。代わりに机へ歩み寄るのは……おお、ナムサン!ニンジャである!黒いニンジャ装束で目元以外を隠した男が、戦利品の山を両手で掴んだ。「ククククク、いいぞ、今週の上がりは上出来だ…!」彼の名はデスペラード。ザイバツのアデプト位階にあるニンジャだ。 17
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その時、不意にフスマが開き、新たなニンジャが姿を現した。「ドーモ、デスペラード=サン……」。「……!ドーモ……!あ、貴方は……!」デスペラードが目を剥く。ギャングがどよめく。LEDボンボリが青い火花を散らし、ニンジャ装束を浮かび上がらせる。先刻ブリガンドを始末した男の姿を。 18
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その男は鱗が描かれた黒いニンジャ装束を纏っていた。瞳は全てが黒く、オブシダンめいた無慈悲さをたたえていた。口元はメンポに覆われているが、僅かに露出した頬の端は、爬虫類のそれを思わせる醜い鱗状になっていた。「あ……貴方は、シテンノ!……ブラックドラゴン=サン!」 19
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「観光客を無闇に殺すなと言ったろう」ブラックドラゴンは部屋の隅に積まれたスマキを、鋭い爪の伸びた指で指し示す。その間も、歩みは止まらない。「あれはッ…」。デスペラードの弁明を遮り、シテンノはさらに続けた「そもそも、この集会は何だ?ザイバツの許可を得ずに私腹を肥やしたな?」 20
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「勘弁してくださいよ……」脂汗が滲む。デスペラードは後ろに回した両手でサイを一本ずつ回し、交差させ、相手に見えぬ形で臨戦態勢を整える「マージンを払いますから……」。「クズめが」ブラックドラゴンが言い放つ「貴様は前回のバンザイ・チャントで手を上げていなかったろう。反逆の芽だ」 21
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「殺せッ!殺せーッ!」進退窮まったデスペラードが叫ぶ!ギャングたちがトミーガンを構え、マズルフラッシュが廃工場をハナビのように照らし出す!「イヤーッ!」ブラックドラゴンは巧みな側転と跳躍でこれを回避!空中でメンポを外し机に着地すると、黒い刺激性の霧を吐き出す!「シテンノ!」 22
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「「「「グワーッ!」」」」生身のヤクザたちが、殺虫剤を浴びせられたコックローチめいて床を転げ回る。「クソッ!何処だ!何処だーッ!」闇雲に両手のサイで周囲を切り裂き、またその風圧で霧を払うデスペラード。すぐ前方に、中腰姿勢のブラックドラゴンが、いた。「…あッ!」「イヤーッ!」 23
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コメント

オスツ🍣 @alohakun 2011年10月27日
ナイト・エニグマティック・ナイト #1 http://togetter.com/li/201494 ナイト・エニグマティック・ナイト #4 http://togetter.com/li/205857
ぼっち旅おじさん @LEANMOON 2011年12月15日
RT @NJSLYR: 「ブッダがある男をジゴクから助け出すため、切れやすい蜘蛛の糸を垂らした。ナンデ?」蛍光ブッダヘアーの2人は難解なスカム禅問答を繰り返す。「ゲイのサディストだから」「正解です」。彼らのあまりに異質な思考回路と、露出した逞しい二の腕は、リフトの端に立つレイジを酷く恐怖させた。 6
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