新作舞台『雨夜の月』🎉パンフレット一部公開🎉

「喪失についてどう向き合うか」をテーマに、クラウドファンディングも達成した 新作舞台『雨夜の月』🌃 カンフェティにてチケット発売中! https://www.confetti-web.com/detail.php?tid=69707&;; 続きを読む
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舞台「 雨夜の月 」 @amayo_2023

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2023-01-12 12:58:24
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舞台「 雨夜の月 」 @amayo_2023

作品作りの方法は人によって大きく異なるものですが、ぼくの場合、最初にテーマを定めた後は他の作品を読む(観る)ことからはじまります。今回は「喪失にどう向き合えばいいのか」をテーマに据えていましたから、 ↓

2023-01-12 13:06:46
舞台「 雨夜の月 」 @amayo_2023

生者と死者とが関わり合う作品を探しました。そうして出会った三つの物語、『ギリシャ神話』の冥府下りの物語、『古事記』の黄泉下りの物語、そして日本を舞台に生者と死者との関りを描いた名作古典短編集『雨月物語』を作品の軸に据えることに決めました。 ↓

2023-01-12 13:06:47
舞台「 雨夜の月 」 @amayo_2023

本作品は登場人物全員が生きている前半部分と、雨が降った後の後半部分の大きく二つの部分で構成されていますが、実は一番初めの構想ではこの後半部分のみを物語にしようと考えていました。 後半は『雨月物語』のエッセンスを抽出し現代風にアレンジした二つのエピソードと、 ↓

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舞台「 雨夜の月 」 @amayo_2023

冥府下りと黄泉下りの物語を引きつつ「振り返る」というコトバの面白さ、つまり「後ろを振り返る」「思い出を振り返る」二つの意味の「振り返る」があるという点に着目したエピソード、計三つのエピソードからなっています。 ↓

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舞台「 雨夜の月 」 @amayo_2023

ぼくとしては後半だけでも十分作品になると思っていたのですが、諸々の都合で前半部分を付け足すことにして現在の形になっています。  作品に前半部分を加えた分、物語全体のバランスを整える必要が生まれたので、聖書からいくつかのモチーフを拝借して作品に深みを増しつつ骨格をつくりました。

2023-01-12 13:06:48
舞台「 雨夜の月 」 @amayo_2023

\パンフレット一部公開!/  ◤𝐏𝐫𝐨𝐝𝐮𝐜𝐭𝐢𝐨𝐧 𝐍𝐨𝐭𝐞      空白の方へ◢ J.D.サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』🌾をはじめとする 舞台 #雨夜の月 の誕生に大きな影響を与えた3冊です📚 🎫チケットはこちらから confetti-web.com/detail.php?tid… pic.twitter.com/tjYKBUHCgV

2023-01-13 12:56:08
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舞台「 雨夜の月 」 @amayo_2023

台本が完成するまで――『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『重力と恩寵』『燃え上がる緑の木』 全体の流れが決まればあとはディテールを詰めていく作業になります。ぼくはあまり自分の主張を通したいと思うタイプではないので、「喪失にどう向き合えばいいのか」というテーマに連関するモチーフや ↓

2023-01-13 13:14:16
舞台「 雨夜の月 」 @amayo_2023

考え方をどれだけ詰め込めるかの勝負になってきます。 J.D.サリンジャーの『キャッチャー・イン・ザ・ライ』から大きな影響を受けていることはまず述べておかなければなりません。サリンジャーは戦争で仲間たちの死を体験した作家であり、その作品群からは ↓

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舞台「 雨夜の月 」 @amayo_2023

死んでしまった者たちとの関係を考えている様子が見て取れます。そんなサリンジャーの代表作である『キャッチャー・イン・ザ・ライ』から、自分の中に残された、死んでしまった者への愛をどうすればいいのか、という疑問を拝借しこの作品の中にも取り入れています。 上記の疑問は解けない謎であり、 ↓

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舞台「 雨夜の月 」 @amayo_2023

人それぞれが自分の答えを探っていくほかないと思っていますが、今回の作品では「振り返る」ことをひとつの解答として提示しました。ここ数年で一番大きな影響を受けたと言っても過言ではない、シモーヌ・ヴェイユの『重力と恩寵』の次のような一節がその根拠になっています。 ↓

2023-01-13 13:14:18
舞台「 雨夜の月 」 @amayo_2023

シモーヌ・ヴェイユの『重力と恩寵』の次のような一節がその根拠になっています。 死者にささげられる愛は、完全に純粋である。なぜなら、それは、もはやこれ以上新しいものは何ひとつもたらすことのできない、終了した生をねがい求めることだからである。 ↓

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舞台「 雨夜の月 」 @amayo_2023

死んでしまった人の存在を肯定するには、死者がかつて存在していたことを振り返ればいいのだと思わされる一節。このコトバとオルフェウスの冥府下りの物語がぼくの頭の中で繋がり、強い説得力を感じたことから全体を通じて「振り返る」というキーワードが表に出ることになりました。 ↓

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舞台「 雨夜の月 」 @amayo_2023

ここまで綴って生きたのは内面的な喪失、個人的な体験についての喪失について考えていましたが、ぽっかりと空いた穴というのは人の心にのみ現れるものではありません。自分の外部にある穴、空白についてもどう向き合えばいいのか考えたい。 ↓

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舞台「 雨夜の月 」 @amayo_2023

外側の空白については大江健三郎の『燃え上がる緑の木』を参照しました。ある具体的な神を想像して祈るのではなく、ある空白に向かって集中するという印象的な態度。 ↓

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舞台「 雨夜の月 」 @amayo_2023

ここまで上げてきたのは主要参考文献であり、もちろん小さいところでは他に参考にしている作品もあります。文学だけでなく、絵画や彫刻。アニメや漫画から拝借したモチーフもあります。それらすべてをここに挙げることはできませんが、そうしたエッセンスでディテールを埋めて台本を完成させました。

2023-01-13 13:14:20
舞台「 雨夜の月 」 @amayo_2023

\パンフレット一部公開!/  ◤𝐏𝐫𝐨𝐝𝐮𝐜𝐭𝐢𝐨𝐧 𝐍𝐨𝐭𝐞      空白の方へ◢ ☑️『ドライブ・マイ・カー』濱口竜介監督 ☑️新国立劇場『ペレアスとメリザンド』演出ケイティ・ミッチェル 二人の方法論を取り入れた菅沼ならではの演出とは🧣 🎫チケットはこちら confetti-web.com/detail.php?tid… pic.twitter.com/jZbbuOke0Q

2023-01-14 12:49:41
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舞台「 雨夜の月 」 @amayo_2023

舞台ができあがるまで。空白にやってくるものを求めて。 台本ができても舞台の場合、作品は完成されません。ここから演出が加えられていくことになります。今回の作品の演出でぼくが意識したのは、とにかく空白を作ることです。 ↓

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舞台「 雨夜の月 」 @amayo_2023

台本を書いている時点でそれぞれのシーンの絵は細かい部分まで自分の頭の中で想像され創造しているわけですが、とにかくこれを俳優の皆さんに共有はしないまま稽古を進行していきました。 本というのは不思議なもので、どれだけ力を尽くして書いたとしても、 ↓

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舞台「 雨夜の月 」 @amayo_2023

作者の想定しない解釈が読み手から生まれてくるものです。そしてその解釈の方が自分の意図していたものよりも面白かったり感動的だったりします。今回の演出ではとにかく空白を作り出し、そこに新たな解釈や気持ち、そして少しスピリチュアルな感覚がやってくるのを待ち続けました。 ↓

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舞台「 雨夜の月 」 @amayo_2023

空白を作り出すために序盤は棒読みでセリフを読むところから始めました。これは『ドライブ・マイ・カー』という作品でアカデミー賞を受賞し、一躍有名になった濱口竜介監督の方法論ですが、もちろん映画と舞台とでは必要なことが変わってきますので、一部自分なりにアレンジを加えています。 ↓

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舞台「 雨夜の月 」 @amayo_2023

中盤は登場人物たちになりきった即興、つまり台本にない物語を俳優の方々とその場で作り上げていきました。これは2022年に新国立劇場で上演されたオペラ『ペレアスとメリザンド』を演出されていたケイティ・ミッチェルの方法論です。 ↓

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舞台「 雨夜の月 」 @amayo_2023

ゆったりした空白を保ちながら演者を役の中に引きこんでいくようなこの方法はとても参考になりました。 終盤に入るといよいよ作品を固めにいく段階です。これまでのゆるい雰囲気の中にやってきたもの、作られてきたものをデフォルメしていく作業を行いました。

2023-01-14 12:49:47
舞台「 雨夜の月 」 @amayo_2023

\パンフレット一部公開!/  ◤𝐏𝐫𝐨𝐝𝐮𝐜𝐭𝐢𝐨𝐧 𝐍𝐨𝐭𝐞      空白の方へ◢ #雨夜の月 は多くの古典・名作の知恵を借りています📚 巨人の肩の上から見える景色はお客様のもの🏞 最後の"空白"を埋めてください🖊 ご来場お待ちしてます! ▼チケットはこちら▼ confetti-web.com/detail.php?tid… pic.twitter.com/buxDkQo2K5

2023-01-15 13:10:20
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舞台「 雨夜の月 」 @amayo_2023

そして上演へ。   このプロダクションノートで記したかったのはこの作品が作り上げられていく過程で、どれだけ多くの過去の作品、知識の力を借りているかということです。先人たちが命を削るようにして生み出してきた作品、知識への敬意を込めて主要な影響を受けたものを列挙させていただきました。

2023-01-15 13:16:21