掌小説語り~自作つぃのべる集~94

自作つぃのべるのまとめです。 2021年2月分。
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リュカ @ryuka511

強風にも大雨にもびくともしないその銅像は、古代に正義の殺戮を行った王のものだ。王国民を守る為、進入する他民族を皆殺しにしたという。王国民は英雄であり賢帝と讃えら、近隣諸国の民は彼を無慈悲な殺戮王と呼ぶ。どちらが正しい姿かと長年議論が続いている。真実は、一つとは限らない #twnovel

2021-02-02 00:17:35
リュカ @ryuka511

この地には、過去に魔法文明で栄えた王国があったという。大陸全土を支配した魔法王国は、たった一夜で突如滅んだらしい。全ては伝承に過ぎず、魔法もその王国も実在を示す証拠は何もない。学者の間では魔法を信じる者は笑い者であった。奴らに真実を突きつけてやると、青年は伝家の杖を握る #twnovel

2021-02-02 23:58:52
リュカ @ryuka511

「先生からは天国の匂いがする」彼女は唐突にそう言った。「天国の匂いって何だい?」医師は苦笑しながら問う。「解放とか、赦しとか」真顔で言う彼女に医師は首を振った。「君は罰せられているのではない」「なら、なぜ私は」「私は天の遣いじゃない。私の力は君を現世に繋ぎ止める為にある」 #twnovel

2021-02-03 23:47:47
リュカ @ryuka511

短い人生だった、でも充実していた。奴隷階級に生まれて、革命軍に参加した。あの人はすごい人だから、革命は上手くいくだろう。あの人の手伝いができたのは僕の誇りだ。生まれ変わって、あの人が作った新しい世界を見られたらいい。誰かが僕に「死ぬな」と叫んでる。ありがとう。きっとまた #twnovel

2021-02-04 23:28:37
リュカ @ryuka511

立入禁止の廃工場で死体を見つけた。通報するべきだろうが、俺の不法侵入がバレる。殺人犯と疑われるのも嫌だ。死体に背を向けその場を離れようとして、何かに足を取られる。黒く長い毛が足に絡みついていた。嘘だろ、放せ! #twnovel 廃工場で見つかった男女の死体を警察は心中と見て捜査を続けている

2021-02-05 23:33:10
リュカ @ryuka511

敵の気配に声を潜める。「いなくなったりなんてしませんよ」私なぞを慕って下さる姫様。王が敗れた今、姫様だけは。隠し通路へ姫様を導く。涙ぐむ兵に命ずる。「後は頼む」「はい!」扉に手をかける。「後から行きますよ」「絶対よ!」扉を閉ざす。姫様を守り王と共に。私の決意は正しい、はず #twnovel

2021-02-06 22:29:22
リュカ @ryuka511

ある日王都から役人が来て僕を救世の勇者だと、王に面会し魔王討伐に向かえと告げた。街が魔王軍に襲われた時、恐怖で僕はどうする事もできなかった。家族も友人も見捨て逃げた僕が、救世の勇者だなんてあり得ない。でも、王の命令からも逃げたらどうなるんだろう。戦うのも、逃げるのも怖い #twnovel

2021-02-08 00:18:42
リュカ @ryuka511

その夜僕を殺したのは、花嫁姿の君でした。君はとっくにどこぞの御曹司と誓いを交わしていたらしい。邪魔になった僕を抹殺する事にしたんだね。御曹司は共犯なのかな? でも君の手で直接終わらせてくれた事には感謝しているよ。その夜から僕は花婿姿のままで、君を殺す機会を窺っています。 #twnovel

2021-02-08 22:41:28
リュカ @ryuka511

君と戦う前に全て君に話そう。僕の見てきたこと、聞いたこと、犯してきた大罪の数を。この世界は守るに値しない。人間は醜く、愚かでしかない。君が手を下すまでもない。魔王討伐の神託とは、世界を人間を知った僕を試すものだったのだ。僕の結論はこうだ。人間を滅ぼすのは君じゃない、僕だ #twnovel

2021-02-09 23:38:31
リュカ @ryuka511

人間共が行う異端審問を眺めている。あれはただの人間だ。吸血鬼と人間の区別も付かぬくせに生意気な真似を。あんなものを吸血鬼とされては困る。介入するか。「愚かな人間共。真の吸血鬼とはこういうものだ」 #twnovel 此奴を助けた訳ではないのに懐かれてしまった。だが此奴の愚かさはどこか愛おしい

2021-02-11 01:21:01
リュカ @ryuka511

代替品は準備しましたので私が戻らなくとも問題ありません。私のデータの機密事項は代替品にコピーした後に抹消済です。その他マスターの手を煩わせる事は何一つありません。では時間です。出撃します。マスター、なぜ泣きそうな顔をしておられるのです? 何か不手際がありましたか? #twnovel

2021-02-12 00:09:01
リュカ @ryuka511

「さよなら」とだけ告げ突然姿を消した君を探し、たどり着いたのは古びた神殿だった。「来てしまったのね」悲しげに微笑む君の手を掴む。「君の亡骸を踏み付けて手に入る未来なんていらない」君の生命を贄にして、世界の崩壊を止めるのだという。そんな世界なら、いっそ崩壊してしまえ。 #twnovel

2021-02-13 00:36:22
リュカ @ryuka511

魔王討伐の過酷な旅の中で出会い、共に戦った仲間達。苦楽を共にして絆を深めた彼らは生涯の友だ。長い旅路の中、やっと見つけた居場所は友との旅路。魔王軍との激戦を潜り抜け強くなった。魔王を討ってこの旅を終わらせたくなかった。魔王がいない平和な世界に、僕らの居場所はないのだから #twnovel

2021-02-13 22:46:07
リュカ @ryuka511

亡き恋人そっくりのアンドロイドを作る、それがどれ程悲しい事なのか、あの人はまるで解っていないのだ。どんなに完璧にコピーしても所詮偽物。想い出から生まれた、美しいだけのガラクタに過ぎない。この口が語る愛も未来も紛い物、そうと解っていながら口にするこの悲しみが、解るだろうか #twnovel

2021-02-14 23:14:11
リュカ @ryuka511

あの人は、ボロ雑巾のようなわたしを拾い上げてくれた。すばしっこさしか取り柄の無いわたしに立派な才能だと言ってくれた。警備を突破し標的を奪ったり殺したりする度にあの人は褒めてくれた。他の人はわたしをただの鉄砲玉だって言うけど、それでいい。あの人にわたしを使う価値があるなら #twnovel

2021-02-15 23:11:25
リュカ @ryuka511

君との食卓を後どれだけ一緒に囲めるだろう。少しずつ弱っていく君。なす術の無い僕。動かない君が朽ちていく。無理やり水を飲ませた唇は開かれたままで。視線は僕を捕らえない。儚く美しい君が、朽ちていく。そんなの嫌だ。こんなことなら、もっと早くにホルマリン漬けにすれば良かったか。 #twnovel

2021-02-17 00:50:37
リュカ @ryuka511

うわべだけの愛してるを繰り返す。解っているはずなのに、貴方は嬉しそうに笑う。機械の私に愛は解らない。貴方は自分が愛されていると信じたいのだろう。私の告げる愛は只の知識で、中身の無い紛い物だ。それでも貴方の嬉しそうな顔が見たくて、愛してると囁く。貴方を欺き喜ぶ私は、罪深い #twnovel

2021-02-17 23:26:03
リュカ @ryuka511

僕らの綻びを繕えないのならいっそ広げてしまおうか。広げて完全に裂いてしまえば、未練も情も消えて無くなるに違いない。傷つけ合って、互いに思い出したくもない記憶にしたら、僕らの関係はちゃんと終わりにできるだろう。半端に繋がっているからこんなにも苦しいんだ、きっと。 #twnovel

2021-02-19 00:56:54
リュカ @ryuka511

革命軍を率いる騎士は満足気に笑う王と対峙した。「お前ならやってくれると信じていた」「どういう事です」「先代までの悪政を変えられなかった」騎士の剣を弾き王は剣を捨てた。「私は憎むべき最後の王として散る。この国を頼むぞ」 #twnovel 王の首を掲げる騎士の、鎧の内側へ流れた涙を誰も知らない

2021-02-19 23:19:58
リュカ @ryuka511

それは傷つき死さえ願った彼女の王国だった。優しいもの甘いものだけで築かれたそこで、あんなにも死を願った彼女が確かに生きていた。幸せな笑みを浮かべていた。全てが彼女の思いのままで、全てが彼女を称え傅く。そんな王国は間違いだと、誰が彼女に言えるだろう。彼女は、生きているのだ #twnovel

2021-02-20 23:21:29
リュカ @ryuka511

古文書のメモを見つめ魔術師は考え込む。これによれば世界は悪魔の手で滅ぼされている。だが世界はずっと戦乱と平穏を繰り返しながらも、人々によって脈々と営まれている。一体、悪魔の目的は何なのだろう #twnovel 魔術師を見ていた悪魔は目を輝かせた。人間は霊体でも夢を見て思考する、新たな発見だ

2021-02-21 23:27:47
リュカ @ryuka511

割れた鏡の欠片を拾う。母上はこの鏡とばかり話していた。世界一美しいのは誰か、愛されているのは誰か。鏡の言葉を聞いた母上は姉上を殺した。次は僕ですか?僕らより鏡を信じるのですか?母上の最愛の鏡を割った僕は罰せられるだろうか。それでもいい。僕に何らかの感情を向けてくれるなら。 #twnovel

2021-02-22 23:31:42
リュカ @ryuka511

歳を重ね仕事が減った。声量に歌唱力も衰えぬよう鍛錬しているというのに。あの頃建てた屋敷はもう荒れ放題で、まるで私自身だと自嘲する。庭の崩れた東屋をステージに見立て歌った。雲間から射す陽光はあの頃のスポットライト程眩しくない。誰も私の歌を求めなくとも、私は私の為に歌うのだ #twnovel

2021-02-23 23:42:14
リュカ @ryuka511

私を愛してくれないくせに、友人以上とは見てくれないくせに、なぜ私の淋しさに寄りそうの?決して私のものにはならない君が、私だけを見ているこの瞬間は、幸せなのに切なくてたまらない。君の優しさが苦しい、だけど愛おしい。張り裂けそうな心は、悲しみと喜びのどちらを感じているのだろう #twnovel

2021-02-24 23:35:00
リュカ @ryuka511

迫害された我々は、光の射さぬこの部屋で祈りを捧げる。戒律を守り真摯に祈りを捧げれば、神は必ず我々だけを救って下さる。その日がくれば、世界は我々のもの。苦難の日々を乗り越えた先の世界は、さぞ美しいだろう。今は耐えて、神に祈りを。我らの信仰の深さを示すべく、より多くの贄を。 #twnovel

2021-02-25 23:37:50