悪魔と少女

#悪魔と少女 のまとめ。
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視点によって最初の数語に色を付けさせて頂いています。

黒→三人称
紫→アベル
紅→セシリア
(青→セシリアの父)

愁夢 @s_shumu

「聞け、我が声を。見よ、我が魂を。応えよ、我が命に。そして、喰らうがいい、我が現を」睦言めいた響きで、薄暗い部屋に声が落ちた。現れた悪魔は嗤う。「いいだろう。愚かなる小娘。お前の現を喰らい、代わりにお前に夢を。お前の臓腑が夢で甘く実ったなら、お前のすべてを頂こう」 #悪魔と少女

2011-10-30 23:15:57
愁夢 @s_shumu

悪魔はやはりどんな人間よりも美しい姿をしていた。艶やかな闇色の髪、陶器染みた頬。優雅な仕草で私の前に跪き、恭しく手を取る。その紅い唇は手とは裏腹に熱かった。そして、冷えた月の色をした瞳が爛々と輝いて私を見据えた。「それまで、俺はお前のものだ」 #悪魔と少女 #twnovel

2011-10-30 23:28:38
愁夢 @s_shumu

「セリシア、肩に……黒い羽根? 嫌だわ、鴉の近くにでも行ったの?」「ええ。さっき中庭で盛ったみたいに騒いでいたわ」「盛ったって。……貴女ってやっぱり面白いわね。あ、今行くわ!」去りゆく少女を見つめるセリシアの背後に黒い影が落ちる。「誰が盛ったって?」「さぁ?」 #悪魔と少女

2011-10-30 23:40:16
愁夢 @s_shumu

昔々、あるところに一冊の本がありました。本にはある悪魔が封印されていました。その本は娘から娘へと引き継がれ、そして、それはある女性の元へ。女性は子供を守るため、悪魔を喚び出しました。悪魔は言いました。「悪魔を殺す方法を教えてやる」と。「人間に恋をさせれば良いのだ」 #悪魔と少女

2011-10-30 23:45:54
愁夢 @s_shumu

「ママ……」あどけない表情で眠る少女。冷然とした表情を隠した寝顔は、悪魔にとって懐かしいものだった。あの頃はよく彼女の膝の上で丸まっていた。その様子を優しい笑顔を浮かべて、見ていた。「ママ」幼子のように繰り返すこの少女から俺は彼女を取り上げた。 #悪魔と少女 #twnovel

2011-10-30 23:54:09
愁夢 @s_shumu

「私、知っているのよ」少女は悪魔に向かって冷然と笑った。「悪魔って恋をすると死ぬのでしょう?」悪魔よりも悪魔らしい笑み。「ああ、そうだ。では、契約者がなぜ死んでしまうかわかるか?」「悪魔に魂を売るからでしょう」「そう、つまり、悪魔に恋をするからだ」 #悪魔と少女 #twnovel

2011-10-31 00:02:34
愁夢 @s_shumu

ぬばたまの髪と瞳。遠い異国の顔立ちに一目で恋に落ちた。意に沿わぬ政略結婚で得た妻を放ってその女に溺れた。嫌がる彼女を離れに囲い、いつしか娘が生まれ。そのことが妻を壊していった。そして、数年後の戦争。帰った私を待っていたのは、妻とぬばたまの髪と瞳の娘だけだった。 #悪魔と少女

2011-10-31 00:22:31
愁夢 @s_shumu

少女はずっと幼い頃から悪魔を殺す方法を知っていた。そして、悪魔を殺すことを目標として生きてきた。どうして? それは彼女にとって当たり前のことだった。「ママ……」呟いた言葉。浮かんだのは黒い影に隠された優しい笑顔。「ママ、私はきっとあの悪魔を殺すわ」 #twnovel #悪魔と少女

2011-10-31 23:09:12
愁夢 @s_shumu

「セシリア、何か願いはないのか?」「ないわね」「困ったことは?」「ないわ」「何で俺を呼び出したんだよ。いらねーじゃないか」「……今までの人はどんなことを願ったの?」「金とか、地位とか。後は……便利屋みたいに使ったヤツもいたな」「貴方を?ツワモノね」 #twnovel #悪魔と少女

2011-10-31 23:22:28
愁夢 @s_shumu

「アベル、掃除しといて」「しょうがないな」「アベル、飲み物」「水かワインなら」「アベル、明日6時ね」「わかった、起こせばいいんだな」「アベル、課題に必要な本が欲しいわ」「これか?」悪魔をじっと見つめる少女。「なんだ?」「貴方、確かに便利だわ」 #twnovel #悪魔と少女

2011-10-31 23:33:34
愁夢 @s_shumu

『親愛なるセシリア 元気にしているか?お前が学校に入って1年以上。今年こそクリスマスは帰って来なさい。×××伯爵』かさり手紙を畳む。「帰らないわ」そこは私の家なんかじゃない。父様は確かに優しかった。けれど。「私は、ただのセシリアよ」ママと同じ。 #twnovel #悪魔と少女

2011-10-31 23:46:02
愁夢 @s_shumu

昔むかし、ある女性に恋した悪魔がおりました。けれど魂を糧とする不吉な悪魔を、それでも女性は心底愛していました。死ぬはずの悪魔が生きたのは、恋する女性が娘さえも捨てて悪魔を選んだからだとは悪魔しか知らないのです。 #悪魔と少女 #twnovel #twremix @1_dark

2011-11-01 00:13:14
愁夢 @s_shumu

@1_dark 女性→悪魔を呼び出した少女の母親 悪魔→女性に恋をして死にかけた 少女→今回の召喚者。悪魔を殺したい。 すごく解り辛いと思いますが、こういう感じでしょうか。つまり、女性と悪魔なので、今回のついりみは昔の話なのです。なんか設定たらたらとごめんなさい(o*。_。)o

2011-11-01 00:29:47
愁夢 @s_shumu

煌めく銀色の瞳。黒い翼。「セシィ?」心配そうに覗き込んでくる級友。「え、あ、エリカ?」「大丈夫? 最近、上の空でいること多いよ?」「そ、うかしら。気を付けるわ」「そういう問題じゃないよ。何か悩みでもあるの?」「……何もないわ」そう、悩みなんてない。 #twnovel #悪魔と少女

2011-11-01 23:10:51
愁夢 @s_shumu

「お前、どうして俺を喚び出したんだ?」夕闇を背にするアベルの影。「理由が必要なの?悪魔の貴方に?」「アグネスはこんなこと望んじゃいなかった」顔が歪む。悪魔の顔は窺えないのに。なんて卑怯者。「別に、」理由を言う訳にはいかなかった。「退屈しのぎよ」 #twnovel #悪魔と少女

2011-11-02 00:28:25
愁夢 @s_shumu

幸せになりたいのです、少女は呟く。まるで罪悪を告げるように。「幸せ、しあわせ。幸せとはなんでしょう?」見上げた十字架には、磔にされた神の子。「わからない」でも、悪魔に作られる幸せはきっと罪悪。そんなものはいらない。私が欲しいのは……「悪魔の命」 #twnovel #悪魔と少女

2011-11-02 23:23:00
愁夢 @s_shumu

悪魔を手に入れた人間は堕落していく。それが当然、それが必然。なのに。アグネスも、アグネスの娘も、そんな素振りは見せない。俺を見るときの真っ直ぐな瞳。願う故に召喚したためか。アグネスの願いは娘の幸福、それだけ。では、アグネスの娘、セシリアの願いは? #twnovel #悪魔と少女

2011-11-02 23:39:55
愁夢 @s_shumu

「契約の印に我が名を」糖蜜のような声で告げられる契約。その最後に。「名?」「ああ、今回の契約に値する俺の名をお前が決めろ」「いいわ……、セシリアの僕として与えられる名はアベル」紅い口唇が弧を描く。「いいだろう。我が名はアベル」そして、契約は成る。 #twnovel #悪魔と少女

2011-11-03 00:02:36
愁夢 @s_shumu

「アベル」深夜、寝台の上で呟く。それだけで現れるソレ。「なんだ?」不機嫌そうな声。それでも甘く。「アベル」振り返りもしない契約主に悪魔の声が険しくなる。「なんだ?」覗き込まれた、その顔は濡れて。「どうした?」顔が歪む。これに頼ってはいけないのに。 #twnovel #悪魔と少女

2011-11-03 00:19:49
愁夢 @s_shumu

「どうした? セシリア」優しく尋ねると、其れはくしゃくしゃの笑顔を浮かべた。「何もないわ、アベル」「嘘吐きだな、お前は」背を向ければ、其れは手を伸ばし。「いるから。さっさと汚い顔どうにかしろ」少女はやはり笑って。「あ、このヤロ、翼で拭くな!」 #twnovel #悪魔と少女

2011-11-03 00:30:20
愁夢 @s_shumu

橙色に染まる部屋。いつものようにアベルは窓辺に座り込んで空を見ていた。「貴方、毎日毎日空ばっかり見て、飽きないの?」「別に……。地上界の空は色鮮やかだから、退屈しない」振り返った彼に息を呑む。煌めく銀色の瞳。「俺の主人は何も求めないから暇だしな」 #twnovel #悪魔と少女

2011-11-03 23:15:53
愁夢 @s_shumu

少女が寝込んだ。冬へと寒くなる季節。人間はこんな季節には余計に脆くなるのだ。「大丈夫か?」覗き込んだ顔が笑った。「なにその顔。心配って、貴方、悪魔なんでしょう?」『貴方、悪魔よね?』浮かぶ少女の母の面影。心臓がびきりと音を立てて。「死なれたら困る」 #twnovel #悪魔と少女

2011-11-03 23:23:38
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