ビースト・オブ・マッポーカリプス 前編 #6

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【この物語は】 古事記の時代から人類をカラテで支配してきた半神めいた存在、闇のリアルニンジャ達。彼らはダークカラテエンパイアとして蘇り、現代ネット社会を侵食する。ネオサイタマが緑に呑まれ、混迷深まる中、活路はカリュドーンの儀式の破壊にあり！？戦え、ニンジャスレイヤー！

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【おもな登場人物】 pic.twitter.com/4gFnAllFV3

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エメツクラフト技術によって浮かび上がる反重力バイクは、もはや道なき道と化したハイウェイをも支障なく通行することが可能だ。KATANA……即ち、KOL社を母体とする、ネオサイタマ広域治安部隊。その一編隊が今、自主判断による治安維持パトロールの為、該当地域へ向かおうとしていた。　0

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隊を率いるのは、一般機とは細部の異なる高性能機体だった。黒くシャープな機体には、出自めいて「渾崎高速師団」のテクノカタナ・フォントが白い。ネオンブルーのライトの軌跡を後ろに連ね、そしてその乗り手は、黒とダークブルーの装甲装束に身を包んだニンジャであった。彼の名はレイテツ。　0

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ゴウ。ゴウ。ゴウ。ゴウ。緑に覆われ、傾いたインターチェンジ標識の横を黒い質量が次々に通過し、路上でカラテを構えた黒い影たちを無慈悲に轢き殺す。機体の液晶パネルに「HELPして」「まだ生存」「アブナイ」の文字が明滅する。目的地は降りてすぐだ。レイテツはカタナに手をかける。白い冷気！　0

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【ビースト・オブ・マッポーカリプス前編】#6 pic.twitter.com/1S2pivMj5B

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一般道に滑り降りた反重力バイク群は、到底曲がりきれない急カーブでも速度を減じることはなかった。かわりに先頭のレイテツはカタナを逆手に掴み、かざした。刀身のカタナ・オブ・リバプール社紋が奇妙な光を発すると、たちまち前方に氷の壁が出現し、バンクを作り出した。バイク群は見事に走行！ 1

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レイテツの得物は単なるカタナではない。カタナ・オブ・リバプール社が彼の為に作り出した試作兵器、K.E.S。即ちコリ・エンハンス・システムの端末である。強力なコリ・ジツを操るニンジャとして社に認められるレイテツは、先端技術の提供を受けている。KOL社はニンジャ専用武装の開発に積極的だ。　2

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K.E.Sはレイテツのジツの効率を向上せしめる。ネオサイタマはテクノロジーの坩堝であり、企業間の公式・非公式の抗争も絶えない。レイテツはこの地で特殊な役職を与えられ、激しい戦闘頻度と高い成果を期待されていた。彼は本社の要請に応え続けてきた。治安部隊を出身とする叩き上げのプロパーだ。　3

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ネオサイタマは現在、正体不明の植物侵食を受け、リバプールの本社との通信手段は断たれた。レイテツがこうしてKATANA治安部隊の陣頭指揮を取って動くのは独断に基づく行動であり、ある意味で、古巣に戻ったセンパイじみてもいる。奇妙な感覚であったが、KATANA隊員には彼を英雄視する者が多い。 4

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狂ったネオサイタマで、ただ黙って自我喪失を待つ気など、さらさらなかった。上からの指示がないならば、やりたいようにやらせてもらう。すなわち、本分に立ち返る時である。『隊長』『前方に高度カラテ反応、複数です』『……行くぞ』レイテツはフルメンポのスリットの奥で、眼光を光らせた。　5

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『のぞむところ！』『ヤル』『暴れ足りないッス！』血気盛んな隊員達。彼らは非ニンジャだが身体を重サイバネ化し戦闘能力が高い。怠慢と汚職もそれなりにはびこるKATANAだが、反重力バイク部隊は精鋭じみて士気と責任感、心の熱さを持ち合わせる。今回彼が率いる部隊は十人。別働隊にもう十人いる。 6

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路地にバイクで進入するや、「「AAAAAARGH！」」人間離れした咆哮が、傾いた雑居ビル群に反響する。前方には今まさに、市民が即席で拵えたとおぼしきバリケード群が、顔のない黒い影の群れによって破壊される瞬間があった。「アイエエエエ！」悲鳴を上げる警戒市民たち！「アバーッ！」惨劇！ 7

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BRATATA……BRATATA！市民が倒され、なけなしのアサルトライフルがむなしく空に銃弾を散らす。フェイスレスに角が生え、牙が生え、押し倒した市民を食い殺す。「イヤーッ！」レイテツは躊躇なく怪物の群れに突っ込んでいった。構えたカタナが白く光り、冷気を放射する。横に薙ぐ！「グワーッ！」　8

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レイテツの斬撃は物理的な氷の刃を生じ、数体のフェイスレスをまとめて切り裂いた。後続のKATANA隊員が地面にカタナブレードをガリガリと擦り、赤熱させて、崩れたった彼らにトドメを加えていく。レイテツは反重力ドリフト！倒し残したフェイスレスに向き直り、再度のコリ・ジツを準備した。　9

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「AAAAARGH！」一回り大きいフェイスレスが頭を打ち振り、両手に黒いスリケンを生成した。レイテツのニンジャ動体視力はそのスリケンの形状の奇妙さを捉えた。八方向に刃が飛び出したハッポースリケン。説明の付かない驚異の感情を彼は押し殺し、氷の斬撃で迎え撃った。「イヤーッ！」　10

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パパンパン！破裂音を生じ、斬撃を受けたハッポースリケンは瞬時に冷凍されて弾け飛ぶ。「グワーッ！」「アバーッ！」後方で悲鳴が聞こえた。相殺しきれぬスリケン。レイテツはフルメンポHMDに表示された隊員一名の心停止を噛み締めながら、クロヤギと化したフェイスレスに馬上騎士じみて突進する。 11

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ナムサン！カタナ表面にツララじみて氷が覆い、たちまちのうちに彼の得物は恐るべきコリ・ランスと化した。クロヤギ・ニンジャの横向きの瞳孔がレイテツに焦点を定め、喜悦に歪んだ。「イイイイヤアアーッ！」バイクさらに加速！振り下ろされるクロヤギのチョップよりも速く、彼はランスで貫いた！　12

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「ゴアアアアッ！」痙攣し、身悶えしながら、クロヤギ・ニンジャはレイテツの頭を掴んだ。ヒイイイン。反重力バイクのスラスターが悲鳴を上げる。レイテツはコリ・ジツを重ね、オーバーヒート許容量を稼ぐ。そして押し込んだ。「イイイイヤアアーッ！」『その……ジツ……！』クロヤギが言葉を発す！13

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『隊長！』『グワーッ！』隊員達が切り込むが、次々に湧き出すフェイスレスが彼らの相手となる！頭部に加えられる圧力が高まり、HMDに「危険域」「どうにかしてください」のミンチョ文字が点滅し始めた。レイテツは胴体を貫いたコリ・ランスから刀身を離脱し、再度、脇腹に刺す！「イヤーッ！」　14

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「アバーッ！」怯むクロヤギ！だが握力は継続！ノイズ走るHMDが、高カラテ反応体の接近を示した。バイクに乗った女がクローズアップされ……。「イヤーッ！」その者はクロヤギの斜め死角から飛び込んだ！「アバーッ！」クロヤギ首切断！「サヨナラ！」爆発四散！　15

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「チィ」解放されたレイテツは自分のフルメンポを殴りつけ、ノイズを払った。黒髪の女はカタナを払い、別のフェイスレスにかかってゆく。レイテツは反重力バイクを乗り捨て、不服ながら彼女に続いた。既に知っている相手だった。レッドハッグ。ネオサイタマで一度競り合ったアウトローだ。　16

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「イヤーッ！」「グワーッ！」「イヤーッ！」「アバーッ！」二者はKATANA隊員たちと競り合うフェイスレスの群れに切り込み、激しく攻撃した。イクサは一陣の風じみて過ぎゆき、後には一部負傷した隊員たちと痛ましい死体が残された。「上出来じゃないか。なかなか早かったね」女がレイテツを見た。　17