ビヨンド・ザ・フスマ・オブ・サイレンス #4

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

第二部「キョート殺伐都市」より:ビヨンド・ザ・フスマ・オブ・サイレンス」#4

2011-11-02 12:18:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(これまでのあらすじ:相手の精神に侵入するジツを持つニンジャ、シルバーキーは、己の能力を秘密にし、鍼灸院を営んで来た。だがそんな緩やかな上向きの暮らしも、ザイバツニンジャ、パープルタコとサージョンの来訪により、終わりを告げる。) 1

2011-11-02 12:23:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(ザイバツの神秘的陰謀の遂行の為、シルバーキーの超自然の情報収集能力が狙われたのだ。二人の来訪ニンジャはシルバーキーを痛めつけ、インプラント手術を施した。有無を言わせず拉致する構えである。追い詰められたシルバーキーはテレパシーめいた能力で助けを求めた……正体不明の赤黒い影に!)2

2011-11-02 12:27:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(自我を破壊し洗脳を施すべく、シルバーキーに理不尽な拷問を開始するザイバツニンジャ。そこへ赤黒い影の正体、ニンジャスレイヤーは電撃的に到着、修羅場に乱入。サージョンを殺し、パープルタコを瀕死状態に追い込んで退散させた。解放されたかに見えたシルバーキーだが……!)3

2011-11-02 12:32:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何者だ。ニンジャめ」ニンジャスレイヤーは繰り返した。シルバーキーのニューロンが加速した。実際ヤバイ!「俺は、その……」「ソウカイヤの残党か」「ソウカイヤ?」「イッキ・ウチコワシか」「イッキ?」シルバーキーはツバを飲み込む。「あ、ああ、イッキね……」「知らんのか。では何だ」 4

2011-11-02 12:54:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺はケチな鍼灸師だよ」「……」ニンジャスレイヤーは瞬き一つせず、シルバーキーに凄味のある無感情な視線を据えている。「俺は……ニンジャで、力を使って鍼灸師をしていた」「ニンジャが?」「アイエッ、おかしいのかい?ニンジャ的に?その、事実を知ったのはさっきで」シルバーキーが慄く。 5

2011-11-02 13:01:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャ、殺すべし」ニンジャスレイヤーはシルバーキーの目を凝視しながら言った。「私がオヌシを殺さぬ理由はあるか?」「な……」シルバーキーは絶句する。殺す事がまず前提なのか?「ナンデ?俺がニンジャだから?殺すのか?」「そうだ」「ナンデ?」「ニンジャだからだ」 6

2011-11-02 13:29:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「例外を認めてくれよ」シルバーキーが言った。「今までもまさかだぜ、100%例外なく殺して来たって事はあるまい。おっ、俺だってなりたくてニンジャになったわけじゃねえよ?」「……オヌシは何者だ?」質問には答えず、ニンジャスレイヤーは問いを繰り返した。「私に呼び掛けたな」 7

2011-11-02 13:36:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「咄嗟だったんだよ」シルバーキーは正直に話すしかないと考えた。誠意!誠意に賭けるしかない。「俺は見ての通り、殺されかけてた。いや、さらわれそうになってたのかも。とにかくヤバかった」「オヌシがザイバツでないと証明できるのか。誘い出しの罠の一部では無いと?」 8

2011-11-02 13:52:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺は……つい最近だよ、この俺のテレパスがあんたを捉えたんだ。目を閉じると見えるようになったんだ。あンたの赤黒い影、魂だよな?『ニンジャ殺すべし』って繰り返してたからさ……だからザイバツ?の奴らを倒してくれるかも、って、身体の自由も効かなかったし、あんたしかいなかったんだ!」 9

2011-11-02 13:52:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「最近だと?」ニンジャスレイヤーは腰に吊るした「それ」がにわかに重みを増したような感覚に陥った。彼は訝った。そして腰に吊るしたヌンチャクに視線を下ろした。「光ってるぜ!」指摘したのはシルバーキーだ。「ヌウッ……」嘘ではない。聖なるヌンチャクの鎖がマグマめいて輝き出したのだ! 10

2011-11-02 13:56:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「これは」見る間に赤熱するヌンチャクの鎖は黒い煙を噴き出し始める。否!それは煙ではない。赤黒く輝く瘴気である!「ナラクだと?ヌンチャク?どういう事だ!?」「これだ!これだよ!」シルバーキーは己の危機的状況も一瞬忘れて叫んだ。「俺が見たのは!これだ!」11

2011-11-02 14:06:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シルバーキーが駆け寄り、ジゴクめいて輝くヌンチャクの鎖を掴んだ。「これが呼んだんだな!」「何を!」ニンジャスレイヤーはシルバーキーの首筋にチョップを叩き込もうとした。「イヤーッ!」シルバーキーは咄嗟に頭を振り、振り下ろされるニンジャスレイヤーの手首に頭突きを繰り出す! 12

2011-11-02 14:27:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……フジキドは独り、無限の暗黒の中にいた。目を凝らすと、地平には赤黒い人型の影が佇み、一定の方角を指差している。微動だにしないそれを目指し、フジキドは歩き出す。ナラク・ニンジャ。指差す方角はネオサイタマ、マルノウチ・スゴイタカイビル。コフーン遺跡で見た幻の繰り返しか。 14

2011-11-02 14:56:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

指差すナラク・ニンジャの周囲はスポットライト状に明るく、落ち葉めいて敷き詰められた乾いた骨が視認できる。明かりの中に先客がいた。アグラで座る銀色のニンジャ。シルバーキーだ。「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。ケンカ再開するか?」「……いや」フジキドは首を振った。 15

2011-11-02 15:19:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「これがオヌシのでっち上げた幻で無い事は……わかる」フジキドは暗黒を見渡した。頭上には黄金の立方体がゆっくりと自転している。「ああ違う」シルバーキーはニンジャスレイヤーを見上げる。「俺はこうやって、人のニューロンに入り込む事ができる。ここは、アンタだ。俺が余所者なんだ」 16

2011-11-02 15:35:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

会話する二者のすぐそばで、人型の爛れる影はマルノウチを指差したまま彫像めいて動かない。「……殺すべし……ニンジャ殺すべし……」影の中から低い唸りが繰り返される。シルバーキーは時折それを不安げに見やりながら、話を切り出す。「俺はこいつに呼ばれてたんだよ。今ならはっきりわかる」 17

2011-11-02 16:00:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「呼ばれただと」「心当たりがあるんだろ。教えてくれないか?」シルバーキーは勢い込んで、「正直、呼ばれるようになってから綺麗に俺の人生お先真っ暗だぜ。いきなりツキが無くなったよ。もう店も畳まないといけないんだろ?ザイバツとかいう奴らから逃げるにはさ」 18

2011-11-02 16:24:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「殺すべし……全ニンジャ殺すべし……」ナラク・ニンジャの影は呪い続ける。「これさァ」シルバーキーは言った。そしてフジキドを見た。「あンたと同じ事言ってるな」「……」フジキドは答えあぐねた。やがて言った。「……そうだ。ニンジャ殺すべし。それが私の存在理由だ」 19

2011-11-02 16:46:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「全く同じ?」シルバーキーは言った。「あンた、こいつと同じなのか?この化け物と?」「……」「信じにくいんだよ」彼の口調は驚くほど平静だった。ひととおりの恐怖を乗り越えると腹が据わる、それがこの男の性質であろうか。「あンたなりに、ニンジャを殺す理由があるんじゃないの?」 20

2011-11-02 17:10:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「だから何だ」フジキドは不快感を露わにした。「ここで詮索をしたか!」「いや、してない。あの太陽とブッダに誓う。さすがに殺されると思うし」シルバーキーはひるまず「『俺を殺す』っていう結論が不自然だと思うだけさ。どう考えても理不尽だよ。俺がニンジャだから?何の因縁も無いよな?」 21

2011-11-02 17:55:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャ……全ニンジャ殺すべし……」ナラクの影が呪い続ける。シルバーキーは片眉を上げた。「これはこいつの都合だよ。あンたはもうちょっと色々あるだろ?」「……」「あンたのその理性で考えて、俺はどうだい……。殺すべき敵かい?……俺は、あンたに感謝してる。助けてくれたからな」 22

2011-11-02 18:02:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」フジキドは沈黙する。シルバーキーはまばたき無しでフジキドを凝視する。その額を冷や汗が流れ落ちる。正念場なのだ。「……」やがてフジキドは長く深い息を吐いた。「わかった」 23

2011-11-02 18:35:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

二者の周囲に現実のアッパーガイオン路地が戻ってきた。「恩に着るぜ、マジに」シルバーキーが鼻血を拭う。「……で、だ。俺はまだ、あンたにサヨナラするわけにはいかないんだよ。これだ。これがな」シルバーキーは己の首の後ろを指し、「さっきのニンジャ野郎が機械を埋め込んだ」 24

2011-11-02 19:17:44