暴力からあげ

熊本県のひみつ @kuma_himitsu

熊本名物「暴力からあげ」は美味しい唐揚げと暴力を同時に味わえることで人気を博している。ジューシーな唐揚げと悲しい暴力の組み合わせはやみつき間違いなしだ。

haxose @haxose1

眼帯で隠せない傷を負った少女がカタカタ震える手でお盆を持ってきて、その給仕を鬼の形相で厨房から睨みつけている母親と思しき中年女性が瞬時に出てきた。奥の座敷は暗く、健康器具とかが積んである。 二階からは老人のものと思われる怒声が響き、店主は舌打ち。 唐揚げが普通にうまいし安いのがま

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「暴力からあげ」 その看板を見た酔客が、時折娘の腕を掴む。「そういう店」だと勘違いしているのだ。怯えた様子で唐揚げのお盆が揺れる。店主は厨房から、またか、という顔で憎しみの表情を客ではなく娘に向ける。 そういう店じゃないんだよな。 暴力の出番はわたしに移る。

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酔客の隣で割り箸を二つに折り、太腿に突き立てる。にやにやしていた男は酔いが覚めたのか、汚い悲鳴をあげた。 開いた口に熱々の唐揚げを突っ込み、椅子の足を払う。どたん、という派手な音。 仰向けに倒れた男の頭を蹴ると、せっかくの唐揚げがぼろんと飛び出した。

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「もったいないことするんじゃないよ」 何度か蹴ると、男は悲鳴を上げなくなった。娘は、自体が飲み込めていないようで棒立ちだ。 「あんたも蹴る？まあ、少しはスッキリするかもよ」 尋ねるとようやく娘は厨房に後退りし始めた。二階から、不明瞭な老人の叫び声が聞こえる。

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わたしが両手を広げて店内にお辞儀をすると、まばらに居た他の客が拍手をし始めた。 19時、20時、21時に三階行われる「暴力タイム」は終わった。しばらくは「からあげタイム」だ。溌剌とした娘が山盛りのお盆を持って再登場する。