ダークアレイの詩と酒より

次回お楽しみに @cha_boshi

今日は余談では有るのだが、義賊のお話をするよ。今回手に入った人も居るのではないかな。 とても優雅な装丁が施されていて、雛菊と熟成したワインの香りが今なお残っている楽譜。貴族支配の下でも強く生きる人々が裏路地と酒場で歌ったくだらない流行り歌の詩だ。

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酒好きの大泥棒をみんなが知ってる。 だけど、あいつがどこの誰かだぁれも知らねぇ。あいつ突然俺たちの路地裏に現れたんだ！幽霊みてぇに！ あいつは酒を飲んじゃ歌を歌い、通りや屋根を上へ下へと駆けていく。 けど、俺たちはみんな知ってるんだ。 あいつはめちゃくちゃ良い奴だってな！

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貴族の自慢の家宝をかっぱらって腰に差し、背中の黒弓は狙った獲物を逃さねぇ。 剣の腕もピカイチよ！剣を振れば夜空を切り裂く彗星で、足運びは木の葉をそよがす軽やかな西風だ！ シー'ドル湖一杯の『午後の死』を飲み干したってグッスリおねんねしてる貴族の屋敷に忍び込めるのはあいつだけ！

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あいつは金持ちから奪って貧乏人にやっちまう。風のように瘴気を散らし、光のように闇を切る。あいつは義賊だ！ あいつは数多の乙女の王子様。部屋まで盗みに来ちゃくれないかと夢に見る。でもあいつが好きなのはダチと酒を飲むことなんだ！

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ある時、あいつはいつもの様に貴族の屋敷に忍び込み盗んだ後で、去り際に銀盃も頂いた！ そん時さ！あいつは月光の下で窓に佇む美人に会ったんだ。美女の瞳は宝石みてぇに青くって銀盃に嵌った澄んだ石とおんなじだ。 あいつは美女に一目惚れ。迷わず石を外して贈り、美女も満更でなくはにかんだ。

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二人が貴族の統治を終わらせて、手に手を取って冒険の旅に出た。互いが互いにを照らす光となったのさ！ 物語はここまで。徳政が行われている今では歌う者のいなくなった歌。酒と剣、乙女と勇者、爽快なプロローグとハッピーエンド。平民に愛される要素でいっぱいだ。

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事実がどうであろうと、この詩は苦しい日々を生きる人々に明日と権力者へ立ち向かう勇気を与えたのだ。 今日は裏路地の人々の歌った、人々を救う為に正道を行かなかった義賊の詩からお話したよ。