初代三遊亭圓朝「死神」はグリム童話『死神の名付け親』の翻案だがオチの違いが面白い話…サゲは多様に変化も

息で吹き消すは変化した後のサゲか
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SOW@ @sow_LIBRA11

作家のはしくれでございます。「戦うパン屋と機械じかけの看板娘」(HJ文庫)全10巻。「剣と魔法の税金対策」(ガガガ文庫)全6巻「機動戦士ガンダムSEED ECLIPSE(ストーリー担当)」ガンダムエースにて連載中です!

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そういえば落語の演目で「死神」というのがありまして、貧乏な男がある日死神と出会い、「死ぬ人間の見分け方」を教わる。それを利用して大金を稼ぐも、死神との約束を破ってしまい・・・という内容で、名作の一つに数えられますが、実はこれ元ネタグリム童話なんですな。

2023-03-30 15:56:55
リンク Wikipedia 死神 (落語) 『死神』(しにがみ)は古典落語の演目の一つ。 幕末期から明治期にかけて活躍して多数の落語を創作した初代三遊亭圓朝がグリム童話の第2版に収載された『死神の名付け親』を(おそらく福地桜痴から聞いて)翻案したものである。 なお類話としてイタリアのルイージ・リッチ、フェデリコ・リッチ兄弟の歌劇『クリスピーノと死神』がある。 やることなすこと失敗続きで金もなく、ついに自殺しようとしている男が眼光鋭い痩せこけた老人に声を掛けられる。老人は自らを死神だと言い、男はまだ死ぬ運命にないこと、また自身との数奇な縁を明かして助 24 users 65
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元ネタは「死神の名付け親」という話で、天使も悪魔も信用しなかった父親が、「死神は貧乏人にも金持ちにも平等だ」と、死神を生まれた我が子の名付け親にしてもらうところから始まるお話です。 明治の頃に、海外の文化が入り、それをもとにして生まれたある意味で「グリム童話の和製版」といえます。

2023-03-30 15:58:42
SOW@ @sow_LIBRA11

この時期、文明開化で欧米文化がそれまでとは比べ物にならない勢いで入り込んだため、当然日本の文化面でも大きな影響を受けます。その中で起こった動きの一つが「海外の有名な物語を日本設定で作り直す」でした。

2023-03-30 16:00:02

なじまなかった翻案

SOW@ @sow_LIBRA11

「ハムレット」や「ロミオとジュリエット」、さらには「フランダースの犬」までも、設定を日本に変えたバージョンがあります。そちらではネロの名前はキヨシです。パトラッシュはブチです。 有名なバラエティ番組でも紹介されたのでご存知のお方も多いでしょう。

2023-03-30 16:09:09
SOW@ @sow_LIBRA11

まぁ結果として、これらの「日本設定版」は、あんまり馴染みませんでした。理由としては様々ありますが「なんかしっくりこなかった」が一番のようですね。 おもしろいもんです。 関わった中には、西洋文学に通じた学者や文芸家、欧州帰りもいたのですが、ダメだった。

2023-03-30 16:10:22
SOW@ @sow_LIBRA11

まぁひとえに、やはりこういった物語は、それこそ古くから伝え紡がれて来たものほど、その土地に根ざした文化が根本にあり、先っちょを変えた程度では根に馴染まず、花が咲きにくいのかもしれません。 まさに「竹に接ぎ木」です。

2023-03-30 16:12:03
SOW@ @sow_LIBRA11

ちなみに、先述の落語「死神」と、グリム童話の「死神の名付け親」、ともに流れは同じなんですが、こちらがおもしろいのは、ラストなんですね。 まぁ古典なんでネタバレかまわないと思うんですが、死神との約束を破ってしまった主人公は、寿命を失うんです。

2023-03-30 16:13:28

和洋でのオチの変化

SOW@ @sow_LIBRA11

死神に連れて行かれたあの世の世界。 そこに並んだ無数のろうそく。 その長さが各人の寿命を表し、死神が殺すはずだった人を生かしてしまった主人公は、代わりに自分の寿命を失ってしまい、そのろうそくは爪先ほども残っていなかった。

2023-03-30 16:14:49
SOW@ @sow_LIBRA11

生き延びる方法は唯一つ、「火が消える前に新しいろうそくに火を移す」です。オチとして、結局それは失敗し、主人公は死んでしまうのですが、この「火を移す」ところ、落語の方が主人公が行うのですが、グリム版では死神が行うんですね。

2023-03-30 16:16:17
SOW@ @sow_LIBRA11

落語版の方は、「恐怖のあまり焦り、息が激しくなり、自分自身の吐いた息で火を消してしまう」的な内容なのに対して、グリム版は「死神が自分との約束を破った報復に、わざと失敗して火を消してしまう」なんです。

2023-03-30 16:17:42
SOW@ @sow_LIBRA11

この微妙なオチの差がポイントだと思うんですな。 主人公が死神との約束を破った理由は、どちらも「目先の欲望に目がくらみ」です。死神が殺すはずだった者を生かせば大金なり地位なり美女なりが手に入ったからです。

2023-03-30 16:19:00
SOW@ @sow_LIBRA11

しかし、それに対しての報いが、落語版はいうなれば「主人公自身の失敗」で描かれ、グリム版は「死神とは言え『神の怒り』の報復」で描かれる。 因果の応報の描かれ方が、「自業自得」と「天罰」との差があったわけですね。

2023-03-30 16:20:46
SOW@ @sow_LIBRA11

ここらへん、文化思想の差とも言えるでしょう。 だからこそ、その部分を変更したからこそ、馴染んだ。 こういうところからも見えてきますね。 単純な設定変更では馴染まない。 馴染まそうとするなら、その設定に即したテーマもきちんと踏み込まなければならない。

2023-03-30 16:24:29

設定変更の成否を見る

SOW@ @sow_LIBRA11

昨今様々な「設定変更」が行われることがあります。 理由も様々。 ですが、失敗するものと成功するものの差が激しいのもまた事実。 「なんで?」と思うそういった現象の理由は、こういうところにあるのかもしれませんね。

2023-03-30 16:30:45

サゲの変化に納得

hanhan @UtuutuBO

@sow_LIBRA11 話のオチとして『死神がわざと蝋燭移しを失敗して主人公は死んだ』とか言われても、「クソしょーもな…😮‍💨茶番じゃん😩それなら最初からチャンスみたいなもん作るなよアホ臭い😓」と思ってしまう。 しかし主人公の自業自得だと、教訓めいた話に聞こえて気に入ってしまう。日本人のツボがそこなんですね

2023-03-30 18:08:02
オオカワキクオ @00kawa_kikuo

@sow_LIBRA11 そのラストなら落語版のほうが面白いな自業自得って言うのが喜劇に感じるし天罰って言うのは喜劇として面白くないし。

2023-03-30 18:47:45
@suna_maru

落語はあんまり知らないけど、この話は何かで見て割と好きだったんだが、米津玄師が歌にしてもっと好きになったのよね グリム童話が元だったのは知らなかった、面白いな でも、蝋燭の部分は落語のオチの方が絶対いいと思うな…日本人向けに改変したからなんだろうけど 自分の蝋燭の火を扱う部分が良い twitter.com/sow_LIBRA11/st…

2023-03-30 18:31:03

サゲは変化する

しいもと かなえ @kanae_shiimoto

伝統的な死神は、演者が倒れ。 小三治師匠(だったかな?)は、接いでホッとした自分のタメ息で消しちゃって。 談志師匠は接いだ後に死神が吹き消して。 更に今は、死神が吹き消したのに男が死なず「…ああ、そうか。お前は生きても死んでもいない、お前も今から死神だ」ってサゲにしてますね。 twitter.com/sow_LIBRA11/st…

2023-03-30 19:32:35