連心珠 より【講談完結】

原神二次創作、茶博士劉蘇の次回が聴ける講談です。
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次回お楽しみに @cha_boshi

今夜は新しいお話をしよう。 机上戯曲と云うのもまたひとつの文学の形ではあるのだが、一人でするには少し難しいのでね。私なりの伝え方になってしまうけれども、楽しんで頂けたら幸いだよ。 それでは連'心'珠より。

2023-04-01 21:02:07
次回お楽しみに @cha_boshi

潮は遠くの山々を映し、そよ風は緑の岩礁を撫でる。早朝に一人小舟を出して漁をする若い娘がいる。 漁家の娘で名は梓心。今年十六となったばかりだが、年老いた両親に代わり家業を継いで生計を立てていた。たった一人若い娘が両親を養い三人分の家計を支えて暮らすのは非常に困難なことである。

2023-04-01 21:03:06
次回お楽しみに @cha_boshi

梓心は若い身空ながら飢えや寒さに耐え清貧な生活を送らざるを得なかったが、心まで貧しい者ではなかった。 綺麗な着物に憧れるけど、私には大事なお数珠があるのだと、自分を可哀想に思うこともなかった。しかし、今は稼ぐ事だけで精一杯だ。娘らしく家に花を飾る余裕だってない。

2023-04-01 21:04:51
次回お楽しみに @cha_boshi

水面へ網を投げては引き、採れた魚を籠へ入れていく。洋々たる大海に日が登り、すっかり明るくなれば漁を引き上げる頃合だ。梓心は舟を漕ぎ、岸へ着けて縄を結んだ。 さあ、そろそろ魚を売りに行こう。 娘さんの物語は始まったばかりだ。この話の続きは次回をお楽しみに!

2023-04-01 21:06:08
次回お楽しみに @cha_boshi

今日も続きをお話しよう。 場面は第二場に入った。 梓心は早朝捕った魚を町へ売りに出た。しかし、魚の市での売れ行きは芳しくない。 お魚はいかがですか もの慣れぬ売り子の声に老婆から反応が帰ってきた。嬉しそうに魚を眺めながら老婆が話しかけて来る。

2023-04-02 20:51:36
次回お楽しみに @cha_boshi

活きのいい魚だね。今晩はそれで汁物でも作るとするかのう。 老婆の話す前で並べられていた魚の尾が丁度跳ねた。 ふぉっふぉっ こんなにいい魚じゃ。食べたら儂もピチピチになるかもしれんねぇ。 愉快な老婆はそう軽口を続けるのだった。

2023-04-02 20:52:08
次回お楽しみに @cha_boshi

奥様、お名前を伺っても? 梓心が老婆へ尋ねた。 張じゃよ。張ばあと呼んでおくれな。この通りで花を売っておる。 それにしてもお嬢さんや、と人好きのする顔で張ばあはお節介を始めた。

2023-04-02 20:54:19
次回お楽しみに @cha_boshi

そんな小さな声じゃ、日が暮れても魚は売れんよ。ただまあ、あんたみたいな初なべっぴんさんじゃ大声を出すのは難しいかねぇ。じゃが、その調子ではいつまで経っても御まんまの食いあげじゃ。 耳に痛い言葉に梓心は俯きがちに返事をした。 べっぴんなんてご冗談を。

2023-04-02 20:54:52
次回お楽しみに @cha_boshi

あれ、どうして… 梓心が俯いた拍子にふと、腕を見ればいつも肌身離さずつけている数珠が見当たらない。慌てた様子を見て張ばあも声をかける。 おや、どうしたんじゃ? いつも着けているお数珠が無いんです!どうしよう…

2023-04-02 20:55:51
次回お楽しみに @cha_boshi

娘は大事にしていた数珠を無くしてしまった。これが後に運命的な出会いを運んで来ることを梓心はまだ知らない。 この続きは次回お楽しみに!

2023-04-02 20:56:30
次回お楽しみに @cha_boshi

数珠が繋いだ縁のお話。本日も続きをお話しよう。 小金色の光が波間をきらきらと煌めかせている。 これはなんと綺麗な! 水に手を差入れその光を拾い上げた若者がいた。名を範皆。埠頭で仕事を得て生計を立てており、兄弟たちの助けもあって頭領をしている。実直な性格の男である。

2023-04-03 20:51:45
次回お楽しみに @cha_boshi

若者は拾った数珠を手に考えた。 どうやらこの女物の数珠は彼処で魚を売る娘さんの物の様だ。勿論、持ち主に返すのは吝かでないが、嘘吐きに騙されては芸もない。よし、ひとつここはあの娘の腕に数珠を着けていた跡がないか確かめてみよう、とね。 そうして市が立っている方へ足を向けた。

2023-04-03 20:52:28
次回お楽しみに @cha_boshi

範皆は魚売りの娘へ声を掛けた。 こうも暑い日には魚で一杯やるに限るな。 梓心は客に答えた。 うちのは新鮮だから煮ても揚げても美味しいですよ。 範皆はここで一計を案じた。 チ虎という魚がいいな。どれだい? 近くで見せてくれないか。 梓心が近くへ寄って客の若者へ魚を見せた。

2023-04-03 20:53:17
次回お楽しみに @cha_boshi

やはり美しい人には、上品な装飾品がよく似合うな。 出し抜けに若者は梓心にこんな事を言ってくるではないか。梓心は混乱と怒りを覚えた。 仰る意味が分かりません。もう買って頂かなくて結構です。なんて恥知らずな人なの! 急に怒り出した娘を前に、範皆は己の失敗を悟り慌てて弁明をした。

2023-04-03 20:55:13
次回お楽しみに @cha_boshi

お嬢さん落ち着いてくれ。さっきお嬢さんの腕に数珠をしていた跡が見えた。この数珠は貴女のだろう。返すよ。 私は、範…いや、これで失礼するよ。 範皆は、言い募れば言い募るほどに言い訳染みて聴こえる気がして途中で自分の口を押さえて言うのを止め立ち去った。

2023-04-03 20:56:13
次回お楽しみに @cha_boshi

数珠を自分に返してくれた若者の様子に梓心も我に返る。 あ、お待ちを── 声を掛けたが間に合わず。若者の姿は雑踏へ消えてしまった。 梓心は心苦しくなった。どうしましょう。勘違いで恩人に嫌な思いをさせてしまいました。恥知らずは私の方。あの方のお名前を訊いてなんとかお礼をしないと。

2023-04-03 20:56:52
次回お楽しみに @cha_boshi

娘の右往左往する様子を見て、張ばあはしたり顔である。 ふぉっふぉっ これが縁というものじゃ。いいオンナにはいい出会いが待っておる。 このお話の続きは次回お楽しみに!

2023-04-03 20:57:57
次回お楽しみに @cha_boshi

梓心は勘違いで数珠を届けてくれた若者にお礼を言わずに追い返す事になってしまい気持ちが落ち込んでいるようだ。今夜も続きをお話しよう。 市で魚を売りに出しながら梓心は張ばあと話をしているが、どこか萎れた様子だ。

2023-04-04 20:52:06
次回お楽しみに @cha_boshi

張ばあ、私はここ何日か気持ちが沈んでしまってよく眠れないんです。親切をしてくださったあの方を誤解して責めてしまったから。 お数珠を返しに来てくれたのに名前を訊ねもせず、お礼も言えませんでした。それどころか逆に罵声を浴びせてしまうなんて…

2023-04-04 20:52:32
次回お楽しみに @cha_boshi

恩人を探したいのですが、こんな人の多い港町でどうしたらいいのでしょう。 張ばあには何か考えがある様で、すかさず梓心にこう言った。 お嬢さんや、そう思い悩む必要は無いんじゃ。 張ばあ、どうしてです? 人探しの貼り紙をすれば良い。モラを報酬にすれば簡単じゃ。

2023-04-04 20:53:25
次回お楽しみに @cha_boshi

梓心は張ばあの提案に不安を感じていた。 よく言いますよね。 酒は人を惹き付け、財は人の心を動かすと。この方法で、あの方が本当に見つかるのでしょうか。 考える余りに深みに嵌り下を向いて歩き始めてしまった梓心を見て張ばあは発破をかける。

2023-04-04 20:54:08
次回お楽しみに @cha_boshi

ウジウジしとらんで、さっさとやるんじゃ!このばあを信じよ。損などさせんよ。 亀の甲より年の功とは言ったもの。不安はあるが張ばあには策があるようだ。梓心の恩人は見つかるのか。それは次回をお楽しみに。

2023-04-04 20:54:50
次回お楽しみに @cha_boshi

三人のろくでなしは、大切な物を拾って届けた恩人としてそれぞれ名乗り出て梓心からモラをせしめるつもりだった。本日も続きをお話しよう。 男たちは、魚を売りに市へ立っていた梓心を囲んで口々に捲し立てのである。これには梓心も困ってしまった。

2023-04-06 20:50:51
次回お楽しみに @cha_boshi

梓心ちゃんよぉ、香膏を拾ったのはこの俺だ!報酬の準備はできてるかぁ? 邪魔だ。あっちへ行け!オレが髪飾りを届けたんだ。報酬はオレにくれ。 二人とも黙れよ。耳飾りを拾って返したのは俺だ。報酬は俺んだ。 身に覚えの無い品々の恩人に梓心は困惑を隠せない。一体何が起こっているのだろう。

2023-04-06 20:51:16
次回お楽しみに @cha_boshi

えぇ…一体なんですか。私は皆さんにお会いした覚えがありません。もし本当に耳飾りも香膏も髪飾りも失くしていたら、どれも覚えていないわけないと思うんですが? 梓心は言い返すが、しかし、男たちはどうにかして言いくるめてモラを払わせようと迫ってくる。

2023-04-06 20:52:42
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