知らない中年男性が部屋にいきなり入って来た「曇天エスポワール」

2011年11月8日、午前9時半頃から11時頃にかけて東京都中野区で @koretsuto の身に起きた実際の出来事をまとめました。
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是(コレ/珍盤亭一門) @koretsuto

一時間半ほど前、ぼーっとする頭を熱いシャワーではっきりさせた僕は、TVをつけながらbedの上で髪をかわしていた。すると唐突に、キッチンにつながるドアが空く。 『あの〜』 ハッとしてドアの隙間を見ると、顔を出しているのは眼鏡の中年男性だった。もちろん私は一人暮らしである

2011-11-08 11:20:20
是(コレ/珍盤亭一門) @koretsuto

うん、新しい大家? なんかの工事業者? なんで部屋の中まで入ってきてんの? テンパった僕は言った。『…はい?』 すると男は言った。 『ここ〜、101ですよね〜。僕の家ですよね〜』 イカレているのは奴か俺か?

2011-11-08 11:40:48
是(コレ/珍盤亭一門) @koretsuto

何やらまずい予感を感じた俺は、ドライヤーを止めて素早く立ち上がり、『いやいやいや、僕の家ですよー。ちょっと外に行きましょうかー』と、男の進路を塞ぎながら外に行くよう促す。 男をよく見ると、唇の下にはカサカサになった他の塊。額には二つほどの青アザ。Tシャツにも血の跡が。

2011-11-08 12:05:27
是(コレ/珍盤亭一門) @koretsuto

ちょっと仕事してた。続き再開。 そんな大した話じゃないけど、まぁ書きます。

2011-11-08 13:11:45
是(コレ/珍盤亭一門) @koretsuto

男の顔は、完全に生気というか正気を失った「やくみつる」という感じ。意外なほどあっさりと男は俺の言葉に従い、覚束ない動きでのろのろと玄関に向かって歩き始める。なんか聞き取りづらいが、『あぅー、2日前に脳挫傷やっちゃいまして~。ここ僕の家ですよね?』とつぶやいている。

2011-11-08 13:12:34
是(コレ/珍盤亭一門) @koretsuto

玄関に向かいながらふと横を見ると、洗濯機の上に男が脱いだと思わしき黒のコーデュロイのジャケット。『こいつ、俺の家に勝手に上がり込んだあと、ジャケット脱ぐ余裕があったのか!』と驚愕。外に出た瞬間パンティ姿だったことに気付き、慌てて部屋に戻って下半身の武装を固める俺

2011-11-08 13:18:56
是(コレ/珍盤亭一門) @koretsuto

俺『ていうか、どうやって入ったの? どうやって鍵開けたの?』  男『いや~101が僕の家で、鍵は空いてたのかな? 多分そうだと思うんですよね…』 外からよくドアを見ると、鍵が引っかかって閉まり切っていない。つまり昨晩、扉を完全に締め切る前に鍵をかけていたようだ…。

2011-11-08 13:26:39
是(コレ/珍盤亭一門) @koretsuto

こんな日に限(鍵)って、こんなことが起きやがる…

2011-11-08 13:26:49
是(コレ/珍盤亭一門) @koretsuto

最初は驚かされたが、顔や態度を見ていると、シャブをきめてるわけでもなさそうだし、いきなり切れて殴りかかってくるような雰囲気でもない。落ち着きを取り戻した俺は尋問に入る。 俺『あの、家はどこなの?』  男『エスポワールの101です…。ここです…』

2011-11-08 13:33:53
是(コレ/珍盤亭一門) @koretsuto

俺『ここ、エスポワールじゃないよ。●●だよ』  男『えっ! エスポワールじゃない!?』 “カイジかよ…”(エスポワール号は、限定ジャンケンが行なわれた船の名前)と思いながら質問を続ける。

2011-11-08 14:02:05
是(コレ/珍盤亭一門) @koretsuto

俺『何なの? 家どこなの?』 男『あぅ~、2日前に脳挫傷をやってしまいまして病院いってまして…』 俺『えっ、脳挫傷!? どこに入院してたの? もう退院していいの?』 男『あ~、入院はしてないです』 俺『脳挫傷なのに?』 男『…はい~』 おいおい、こいつはやはり記憶喪失系か…

2011-11-08 14:27:42
是(コレ/珍盤亭一門) @koretsuto

この男、よく見ると、ズボンの下の下着の中にまでTシャツをインしている。律儀なお方だ。 俺『…で、どこなの家は? 住所は? ここ中野だよ』 男『え~…沼袋の…エスポワールです』 俺『うんうん沼袋ね。エスポワールね。調べるよ』

2011-11-08 14:42:33
是(コレ/珍盤亭一門) @koretsuto

アイフォンで「沼袋 エスポワール」を検索。世間にはエスポワール(フランス語で「希望」の意)という名の付く賃貸物件は意外とあるもんです。この街にそんなに多くの希望なんてございません。 それでも地道にがんばりゃよお!! ファミリアぐらい買えるんだぜ、アニキ(いましろたかし先生)

2011-11-08 14:50:59
是(コレ/珍盤亭一門) @koretsuto

俺『それらしきとこあるけど、そこの住所は練馬区だよ?』 男『あ~、住所は…えーと、え~、あの~…沼袋2丁目です…』 俺『沼袋は中野区だよ』 男『…そうですか』 俺『…なんかさ、住所書いてるものとか持ってないの?』 男『あぅ…(俺の家のドアを指さす)』 俺『えっ、家の中?』

2011-11-08 15:01:01
是(コレ/珍盤亭一門) @koretsuto

慌てて家の中に戻る僕。先ほど、洗濯機の上のジャケットに気を取られて気付かなかったが、逆側のシンクの所に、携帯、保険証、パスモ、1000円などが置いてある。改めて、玄関を上がってからジャケットを脱ぎ、小物を取り出してから部屋のドアを開けたこの男の余裕に乾杯!

2011-11-08 15:16:21
是(コレ/珍盤亭一門) @koretsuto

俺『昭和31年生まれ…45歳ぐらいか。住所は…横須賀になってるよ?』 男『はい…それは実家です』 俺『そうですか…(らちがあかんな…)』 その瞬間通りに見えたパンダカラーの車。慌てて手を挙げて止める。 車に書いてある文字を見ると警察車両ではなく、区のパトロール部隊のようだ。

2011-11-08 15:31:57
是(コレ/珍盤亭一門) @koretsuto

首尾よく止まった車両から出てきたのは鳥羽一郎を彷彿とさせる精悍な顔つき髪型の55歳ぐらいの男性。 鳥羽『なになに、どしたの?』 俺『いや、この人が自分の家と勘違いしたのか俺の家に入ってきちゃって』 鳥羽『ふうーん。おぅ、あんた家どこなの?』 男『あ…、エスポワールです…』

2011-11-08 15:35:23
是(コレ/珍盤亭一門) @koretsuto

鳥羽『エスポワール…。アパートの名前か?』 男『…はい。エスポワールです』 俺『ちなみに、ここはエスポワールじゃないですよ』 鳥羽『…そうか。…じゃああたなの住所は?』 男『あ~、2日前に脳挫傷をやってしまいまして病院いってまして…』 鳥羽『あーそうなの…』

2011-11-08 15:55:01
是(コレ/珍盤亭一門) @koretsuto

鳥羽『住所は?』 男『病院は新青梅街道のセブンイレブンところの…』 鳥羽『いやいや、あなたの家の住所だよ!』 男『えーと、あ~、あの…若宮2丁目の…』 俺『…さっきと違うやん』 堂々巡る会話。 鳥羽『こりゃ駄目だな。警察呼んでやろうか?』 俺『…そうっすね。お願いします』

2011-11-08 15:59:33
是(コレ/珍盤亭一門) @koretsuto

5分で警察官3人組到着。 警察官1『どうしたんですか?』 鳥羽『いや、このお兄ちゃんの家に、この人が入ってきちゃったみたいでさ』 警察官1『ちょっとお話しお伺いしていいですか?』 俺『はい。多分この人記憶がなくて、家間違っちゃってるみたいんですよね』

2011-11-08 16:08:12
是(コレ/珍盤亭一門) @koretsuto

警察官1『なるほど』 俺『なんか2日前に脳挫傷になっちゃんったらしんですが、入院はしてないとかで…。住所聞いてもはっきりしないんですよね…』 俺、警察の取り調べ中わず(10時半頃)。

2011-11-08 16:09:30
是(コレ/珍盤亭一門) @koretsuto

一通り説明し、一旦部屋に戻って会社に電話を入れて遅れる旨を説明。 気を取り直した俺は、コロンを叩き出社準備をして家の外に出る。 警察2『で、あなたの住所どこなの?(地図を見せながら』 男『え~、もっと、次のページの…。沼袋26丁目の…』 警察2『26丁目かぁ…。それはないなー』

2011-11-08 16:16:22
是(コレ/珍盤亭一門) @koretsuto

警察官3『じゃあさ、ちょっと携帯見せてもらってもいいかな? ご家族は登録されてる?』 男『あー、はい。母が』 警察官2『おー、そうなの。ちょっとかけてみてよ』 携帯をいじるがアドレス帳の出し方が分からずメールの受信履歴に辿り着く男。

2011-11-08 16:35:08
是(コレ/珍盤亭一門) @koretsuto

チラリと、利江という方からのメッセージが目に入る。11/7『なんかいい物件見つけちゃった☆もう決めちゃおっかなー……』 この人の大切な人だろうか。この時初めて、この男性のことがなにか可哀想な切ない存在に見えてきた。

2011-11-08 16:43:14