『ソーシャル・ネットワーク』の主人公マーク・ザッカーバーグの“欲しいもの”は何か?

まとめました。
映画 ストーリー&シナリオ 映画よもやまばなし
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榎本憲男★『エージェント 巡査長 真行寺弘道』シリーズ第四弾(中公文庫)出た! @chimumu
0.はーい、chimumuだよー。今日は『ソーシャル・ネットワーク』という映画のちょっと変わったストーリーについてつぶやくよー。
榎本憲男★『エージェント 巡査長 真行寺弘道』シリーズ第四弾(中公文庫)出た! @chimumu
1.で、これから『ソーシャル・ネットワーク』という作品はどう特殊なのかという点について話すんだけど、じゃあノーマルってのはどんなだということについては、こいつを読んで復習して欲しい。http://t.co/cFdBRlXE
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2.映画の物語は、もの凄ーく簡単にいうと、状況設定し、その中で主人公が特定され(第一幕)、“欲しいもの”を追い求めて旅に出て、葛藤し(第二幕)、ものすごく盛り上がり(クライマックス)、成長して帰還する(第三幕)という基本構造を持っている。
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3.しかし、『ソーシャル・ネットワーク』はそうなっていないのだな。まず、第一幕が果たすべき状況設定において、キャラクターがきちんと設定されてない。キャラクター設定というのは主人公の“欲しいもの”を明確にセットアップすることだ。しかし本作ではこれがイマイチわからないのだよ。
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4.さらに2幕目の“葛藤”もビミョーである。観客はマーク・ザッカーバーグがフェイスブックを成功させたことをすでに知っている。つまり「果たしてマークはこのビジネスをサクセスさせることができるか」という win or lose のサスペンスはまったく利かない。
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5.3幕目のクライマックスもどこだかよくわからない。ショーンへの裏切りが時間的にはクライマックスの位置にあるが、クライマックスとしての機能については説明しがたいものがある。そして、主人公の変化も明確に見られない。ハリウッドのエンタテインメントの脚本としてはかなり異色である。
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6.という具合に物語の基本構造を裏切りつつも、観客を惹き付けてやまない本作の隠し味は一体何かということをchimumuなりの解釈でつぶやいていこうと思うのだ。
榎本憲男★『エージェント 巡査長 真行寺弘道』シリーズ第四弾(中公文庫)出た! @chimumu
7.まず、第一幕目からいってみよう。主人公が誰かは一目瞭然だけれどマークが何を欲しているのかはわからない。ここが一番の問題だ。が、逆にいえば、これこそがこの物語のキモなのである。つまり『ソーシャル・ネットワーク』は「マーク・ザッカーバーグとは何者か」を巡る物語なのである。
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8.主人公は一体何者なのかというクエスチョンで物語が進んでいく代表的な作品に『市民ケーン』がある。映画が始まった時点でケーンは死んでおり、今際の際につぶやいた“バラの蕾”という言葉を手がかりに、生前の関係者を訪ね歩き、真のケーン像をリサーチするという具合に物語が構成されている。
榎本憲男★『エージェント 巡査長 真行寺弘道』シリーズ第四弾(中公文庫)出た! @chimumu
9.『市民ケーン』ではリサーチする任務を帯びた調査員には「バラの蕾の謎」は結局わからずじまいで終わるが、観客には最後に明示される。バラの蕾とは愛であり、愛をケーンは欲していたというのである。これが『市民ケーン』のスタンダードな解釈である。
榎本憲男★『エージェント 巡査長 真行寺弘道』シリーズ第四弾(中公文庫)出た! @chimumu
10.またそれを裏付けするようなエピソードもちりばめられていて、観客がじゅうぶん納得できるような構造になっている。
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11.ところが、『ソーシャル・ネットワーク』とってのバラの蕾=マークの“欲しいもの”はそのように明確には表現されていない。
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12.一方でマークが“欲しいもの”は明示されないままに、いかにも“欲しそうなもの”はマークの周辺にばらまかれている。これが金と女と権威である。しかし、これらをマークが“欲しいもの”だと解釈することをことごとく否定するかのごとく物語は進む。
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13.まず、金。ウィンクルボスと最初に出逢った時に、高校生の時に開発したアプリをマイクロソフトに売ったとマークは言う。「いくらで売れた」と聞かれて「無料でアップロードした」と答えるマーク。「なぜ」と問われても肩をすくめるだけだ(22分付近)。
榎本憲男★『エージェント 巡査長 真行寺弘道』シリーズ第四弾(中公文庫)出た! @chimumu
14.さらに共同事業者であるエドゥアルドが利益を出すためにフェイスブックに広告を掲載しようという案を出すが、これに対して強く反対する。理由は「クールじゃない」から。
榎本憲男★『エージェント 巡査長 真行寺弘道』シリーズ第四弾(中公文庫)出た! @chimumu
15.権威やブランドについてもマークは距離を取ろうとする。冒頭でいかにもクラブ(友愛会)に入りたそうな態度を取るマークは、一方で「ハーバードの学生はモテるから」と排他的なサイトの設計を依頼されて、半開放的なサイトに仕上げてしまう。
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16.ついでに伝統と権威あるクラブ、フェニックスに入会したくてたまらない友人のエドゥアルドに対しても冷ややかな目で見ている(のだが同時に嫉妬ではないかという表現にも読み取れてここがややこしい)。
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17.では女はどうか。『ソーシャル・ネットワーク』の最後は、映画の冒頭でフラレてしまったエリカに友だち申請のクリックをするところで終わる。ここでマークが本当に欲しかったもの(バラの蕾)はエリカだったという解釈が生まれそうだ。実際、町山智浩氏はこの説を取っている。
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18.しかし、物語の中盤、マークはエリカを獲得しようとするアクションがほとんどない。彼女のことなどほとんど忘れてフェイスブックに夢中であるのはどうしたことか。
榎本憲男★『エージェント 巡査長 真行寺弘道』シリーズ第四弾(中公文庫)出た! @chimumu
19.『市民ケーン』では、主人公は民衆に愛されたくて選挙に出たり、惚れた歌手の為に(実はほとんど歌えないのだが)オペラハウスを建てたりする。こうした闇雲な行為とはマークは無縁である。
榎本憲男★『エージェント 巡査長 真行寺弘道』シリーズ第四弾(中公文庫)出た! @chimumu
20.エリカ=バラの蕾=“欲しいもの”という解釈は無理があると僕は思う。映画はあたかもそのように解釈してくれてもいいよという作りになっているけれど、作り手の真意はその向こうにある、そういうややこしい作品なんだと捉えたい。
榎本憲男★『エージェント 巡査長 真行寺弘道』シリーズ第四弾(中公文庫)出た! @chimumu
21.特にアメリカ映画というのは、孤独な天才が最後には身近な異性を選択するという結末で締めくくることを好む。例えば『グッド・ウィル・ハンティング』などがそうである。うがった見方をすれば、これはそのような物語の法則性を用いた“かりそめの解決”である。
榎本憲男★『エージェント 巡査長 真行寺弘道』シリーズ第四弾(中公文庫)出た! @chimumu
22.では、マークが“欲しいもの”は一体なんなのか? それを解明するためには物語の中盤から出てくるショーン・パーカーというキャラクターが鍵を握っている。
榎本憲男★『エージェント 巡査長 真行寺弘道』シリーズ第四弾(中公文庫)出た! @chimumu
23.マークはショーンが現れた時、他の人間には決して見せないようなシンパシーを露骨に表現する(ニューヨークでの最初のミーティングのシーン)。そして、ショーンをクビにした企業に乗り込んで復讐の代行のような役割すら引き受ける(1時間40分あたり)。
榎本憲男★『エージェント 巡査長 真行寺弘道』シリーズ第四弾(中公文庫)出た! @chimumu
24.これは明らかにマークがショーンに対して似たもの同士の共感を感じていると解釈できるシーンである。
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コメント

秋島 @akisima 2011年11月9日
ソーシャルネットワークは、意図的に映画内での明確な結論を避けてるように思えてもやもやしてたんだけれど、このまとめ見てたら何となく自分の中で納得できる答えが出てきた。映画内のマーク・ザッカーバーグはキャッチャーインザライのホールデン的立ち位置じゃないのかな。そう考えると凄いしっくりきた。
秋島 @akisima 2011年11月9日
自分を取り巻く環境の『インチキさ加減』に辟易しながら、そのインチキな世界から自分自身が抜けられない事を強く自覚してるが故に『崖から落ちる子供足りを拾い上げる』なんていう抽象的な夢に執着する。そういう視点で見ると、自分にはこの主人公のとらえようのなさも何となく理解可能な気になってくるなぁ。
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