転生王女と天才令嬢の魔法革命から見る革命と天皇制

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シネマンドレイク @cinemandrake

【感想 書きました🏳️‍🌈】「百合」作品ですが、いわゆる「女の子同士がイチャイチャする」みたいなフワっとしたものでもなく、わりと明確に同性愛を描いており、加えて社会の同性愛差別などの構造に反旗を翻す物語になってます。 アニメ『転生王女と天才令嬢の魔法革命』感想⬇️ cinemandrake.com/tenten-kakumei

2023-04-06 07:01:00
リンク シネマンドレイク:映画感想&レビュー アニメ『転生王女と天才令嬢の魔法革命』感想(ネタバレ)…百合は国に虹をかける 百合は国に虹をかける…アニメシリーズ『転生王女と天才令嬢の魔法革命』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。英題:The Magical Revolution of the Reincarnated

私利私欲や既得権益の温存にばかり執心し、自分に都合のいい構造を伝統と表現し、社会の歪みに苦しむ者たちの声を嘲笑って踏みにじり、権力者としての責任を放棄する…。

そんな世界に失望し、幻滅する…。そういうことはこの人類の歴史で幾度となくみられました。そのたびにやがて起きるのが「革命」です。「革命」というのはそうした権力体制を抜本的に社会変革しようと立ち上がることで勃発します。

権力側にしてみれば「革命」は反逆であり反乱であり規範からの逸脱です。鎮圧しようと躍起になります。一方で「革命」を起こす側にしてみればそれは生存のための最終戦略であり、ここに一縷の望みを託すしかない状況です。

ともかく「革命」とは本来そういうもので、そのため「革命」という言葉に対して抱く感情は、あなたがどの立場に立っているかでも変わるでしょう。権力側か? 虐げられる側か? はたまた虐げられているけど権力に従属する道を選んだ側か? 徹底抗戦を選んだ側か? 中立を決め込んで漁夫の利を得ようとする側か?

今回紹介するアニメシリーズも「革命」を主題にしたものですが、主人公たちは「虐げられたので抗うことにした側」の者たち。そしてその者たちは「百合」です。

鴉ぴえろ @piero_BBT

成人済み。雑多なこと呟いてます。色んなジャンルが好きなので雑食気味。趣味で悪堕ち関連ワードが多いので苦手な人は注意。気ままにのんびり思いついた思いつきなど呟いてます。お仕事用Mail:clown.crow.fantasia@gmail.com

鴉ぴえろ@低浮上気味 @piero_BBT

百合はドロっとしたものと相性が良くてジャンルの持ち味が出しやすいと言うのが僕の考えですね。百合と呪いと祝福はうまく組み合わせられるとドラマを劇的にしやすいので。過去の作品だと禁断とか呪いの側面が強めの作品がよく名前を聞きますが、最近は祝福面を強めの百合も増えてる印象ですね。

2022-10-18 01:26:20

しかも、いわゆる「女の子同士がイチャイチャする」みたいなフワっとしたものでもなく、結構ハッキリと同性愛を描いており、加えて社会が同性愛を差別しているという構造も内包する物語になっています。要するに異性愛規範(ヘテロノーマティビティ)を寓話のアプローチで批判し、そういう保守的な社会を変えようと戦う御伽噺なのです。だから「魔法革命」ならぬ「百合革命」ですね。

日本はどうしても政治的に波風立てないようにするクィアな物語が多く、小さなコミュニティでクィアな人たちがひっそりと生き抜いている姿を通して、それを見た視聴者がささやかに元気を貰っている…みたいな状況が多いです(例えば『作りたい女と食べたい女』とか、『恋せぬふたり』とか)。

そんな中で『転生王女と天才令嬢の魔法革命』が同性愛を描くだけでなく、社会規範への政治的な訴えまで明確に踏み込めているのは特筆に値しますが、それはやはりファンタジーという枠に当てはめて表現しているからできる、ある種の奥の手なのかなとも思います。

別に現実世界を舞台にそれをやってもいいと私は思うのですけど、日本は作品内で「現政権打倒!」とか「天皇制解体!」とか叫ぶことに躊躇してしまう世相ですからね。革命はファンタジーの中でしか起こせないのも寂しくはあるのですが、でもこれもまた表現による闘い方でしょう。

シネマンドレイク @cinemandrake

#ネトフリ ただの残虐殺人事件ではない シネマンドレイク:映画感想&レビュー : 『月影の下で』感想(ネタバレ)…Netflix;災いの元凶はどこにある? cinemandrake.com/in-the-shadow-…

2019-09-28 18:01:24
リンク シネマンドレイク:映画感想&レビュー 『月影の下で』感想(ネタバレ)…Netflix;災いの元凶はどこにある? 災いの元凶はどこにある?…Netflix映画『月影の下で』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。原題:In the Shadow of the Moon製作国:アメリカ(2019年)日本では劇場未公開:2
シネマンドレイク @cinemandrake

『月影の下で』 ただのタイムトラベルSFではない。歴史上の偉人の名前をあえて出し、アメリカの建国精神そのものに毒を吐きかける大胆な殺意のこもった映画。天皇の写真を燃やしただけで騒ぐ日本では作れない作品です。

2019-10-02 08:50:50

アニメとなった『転生王女と天才令嬢の魔法革命』は絵柄が可愛らしいので、ビジュアルではわからないと思いますが、しっかり社会に革命を訴えるクィアなストーリーになっていますので、そういうのが見たい人にもオススメです。とくにそこまで未成年のキャラクターがフェティッシュになりすぎて描かれていることもありません。

既存のジャンルを百合で反転させる

『転生王女と天才令嬢の魔法革命』は、第1話から示唆されますが、主人公のアニスは前世の記憶があり、私たちの知る現実社会から転生した存在であることがわかります。

鴉ぴえろ@低浮上気味 @piero_BBT

アニスフィアの前世は敢えて決めたくなかったので決めてません。男かも女かも決めてないです。「魔法に強い憧れを持っていた」「現代日本の価値観、日常生活で得られる知識」を持つという点ぐらいしか決めてません。 #マシュマロを投げ合おう marshmallow-qa.com/messages/c5085… pic.twitter.com/xmgwCQlxzy

2019-11-16 21:58:02
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鴉ぴえろ@低浮上気味 @piero_BBT

前世の人格、記憶という背景はアニスフィアの場合はあまり重要視していなくて「魔法がある世界に現代知識を持ち込む為の導線」としての前世設定でしかないので、前世の人生や人格が掘り下げられるような事はないかなぁ、と現段階では思っています。予定は未定ですが、必要になったら考えるかもです。

2019-11-16 22:02:07

つまり、この本作はいわゆる「異世界転生モノ」の土台の上にあります。多くの日本の異世界モノは、主人公が転生した後に、その以前の知識や経験を駆使して新しい世界で優位に立ったりすることが定番なのですが、そういう意味ではアニスも同じで、魔法科学(魔学)を通して独自の存在感を放ちます。

ただ、本作が面白いのは、そうやって主人公が異世界で好き勝手に無双する…とはちょっと違って、社会を真っ当にしようという極めて健全で正当な政治的目標を見い出し始めることです。まさに革命の旗頭になります。

なので異世界モノにありがちな「植民地主義的な構造の内包」という弱点はあまり目立ちません。そういう悪い構造を変えてみせようと奮闘するアクティビストなわけですから、このアニスは。

鴉ぴえろ@低浮上気味 @piero_BBT

「ここを異世界植民地とする!!」

2019-12-02 11:59:29
リンク はてなブックマーク 『アニメ『とんでもスキルで異世界放浪メシ』感想(ネタバレ)…異世界アニメは植民地主義が隠し味?』へのコメント cinefuk: 「アニメをレビューする文化が業界の本流にはない」本邦アニメ雑誌は"業界紙(宣伝メディア)"であって、批評するメディアじゃないからなあ。異世界もの(白人酋長)に実在する企業の広告が載ってるのが本件の特徴か 1 user

そしてその主人公の行動の動機として深く関与するのが「百合」要素…もっと言えば同性愛であり、百合が目の保養的な消費に終わらず、しっかり革命のエネルギーになるのが本作の清々しさでした。

加えてここも既存のジャンルを上手くメタ的に拝借しているところでもありますが、本作はいわゆる「ハーレム系」の構造も持ち合わせています。これまた一般的には男性のキャラが異世界で多くの女性キャラを囲ってハーレムを作ることが多いですが、『転生王女と天才令嬢の魔法革命』は逆転しています。しかし、逆転といっても女性キャラが複数の男性キャラを集めるのではなく、女性キャラが複数の女性キャラを集めていくという、百合ハーレムです。

一方で、アニスは単に女の子たちを手中に収めていく欲望ありきに行動しているわけではなく、ここがアニスの良識的な人柄が滲むところですが、王族としての特権を生かしつつ、言わば社会規範の中で居場所を失った女性を保護するという支援の役割も果たしています。

実はヴァンパイアの血縁で体内に魔石を宿しているレイニに対しては、彼女の尊厳を守るために事情説明の際は人払いするなど配慮が行き届いています。レイニのエピソードは、自分の意図しないところで好意を持たれてしまう(それに嫌悪感がある)という点においてはちょっとアセクシュアル感がでているのですけど、作中ではイリアとのカップリングみたいになっていくのかな。

そんな包容力のあるアニスですが、弟アルガルドの失脚後、自分が王位を継ぐという役割を受け止めようとします。未成年のアニスを「世継ぎを産む母体」としか見ていない、精霊信仰派などの権力側の男たちの気持ち悪さなど、このあたりの描写は辛いものがありますが、それを今度は救うのはユフィで…。

序盤で「虹」を意味する「アルカンシェル」という武器を貰ったユフィは、まさしくレインボー・プライドを手にしたわけですが、今度はそのユフィがアニスを肯定してあげて、「自分のことも愛して」と支える。しっかり相互作用する連帯が築かれていました。