「ぶら下げ」再考

ぶら下げ組みについて、活版まで溯り再考する。 『「ベタ組み」再考』http://togetter.com/li/210626 の続きです。 「約物」の定義については『「約物」とは何か』 http://togetter.com/li/212530 にて。
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小形克宏 @ogwata

連日すいません。以下、連投します。『電子書籍やWebの行揃え』 http://t.co/qT4R3uxI@koueihei さん @monokano さんが言われた「和文組版の公理」は、「字送り均等、行送り均等、行頭行末そろえ」とまとめることができるだろう。

2011-11-08 17:00:21
小形克宏 @ogwata

この考えに異存はない。先の「拗促音の行頭禁則は一般的なのか?」 http://t.co/RJuKesog で述べた、最も基本的なルールもこれに倣った。ただ、以前から隔靴掻痒というか、もう一言足りない感じを抱いていた。なにか別の角度から光をあてられないだろうか。

2011-11-08 17:00:29
小形克宏 @ogwata

組版上の振る舞いをながめていると、違う局面であるにもかかわらず、同じ二者択一が繰り返し出現することに気付く。もしかしたら、これもまた別の「公理」なのではないか。以下、これについて書きたい。

2011-11-08 17:00:38
小形克宏 @ogwata

その二者択一とは、「ベタを維持するか」それとも「行頭・行末に揃えるか」というもの。前者は「字送りベタへの志向」と、後者は「矩形への志向」と言い直せるだろう。

2011-11-08 17:00:47
小形克宏 @ogwata

例として、これがもっとも頻繁に見られるのが、行頭禁則による調整だろう。20字詰めのところに、21字目に句読点が来た場合、普通に折り返せば行頭に句読点がきてしまう。一番簡単にこれを避けるには、19字で折り返すことだ。しかし、それでは行末が揃わなくなる。

2011-11-08 17:00:56
小形克宏 @ogwata

そこで禁則をするわけだが、これには何種類かの調整が考えられる。追出し・追込みは、どちらも行末が一直線に揃うことで「矩形への志向」を満足させる。ただしベタ組みは維持されなくなる。他方で、ぶら下げを選べばベタ組みが維持できる。つまり「字送りベタへの志向」だ。

2011-11-08 17:01:07
小形克宏 @ogwata

また、ぶら下げを4種類に分ける考え方(強い/弱いぶら下げなし・強い弱いぶら下げあり)は、「弱いぶら下げなし」(行末約物全角)はより調整が少ない「字送りベタへの志向」であり、それ以外はすべて、強制的に矩形に揃おうとする「矩形への志向」と分類できる。

2011-11-08 17:01:14
小形克宏 @ogwata

中でも「強いぶら下げ」は、とくに「矩形への志向」が強いと言える。これについては『クリエイターのための印刷ガイドブックDTP実践編』(玄光社、1999年)に前田 @koueihei さんが書いた一文が参考になる。以下引用。

2011-11-08 17:01:24
小形克宏 @ogwata

〈昨年晩秋、筆者は秩父の山奥にいた。ふと見ると、近景の山なみでは一本杉が目立つが、遠くの山では空とのなだらかな境界線に含まれてしまう。突き出た一本杉は「ぶら下げた句読点」のたとえであり、近景とは行長の短い組版、遠景とは行長の長い組版のことではないか、と。〉(つづく)

2011-11-08 17:01:33
小形克宏 @ogwata

〈行長の短い本文では、でこぼことして目障りになっても、行長の長い本文では気にならず、むしろ句読点以外の文字の並び線が箱に揃っていたほうが、かっこいいわけだ。行長が長ければ、目立たぬ句読点を突き出すことによって行末の並び線はきれいに揃う。(同書、p.26)〉

2011-11-08 17:01:41
小形克宏 @ogwata

この〈行末の並び線〉こそが、版面が描く矩形への志向だ。他にも、たとえば早川書房は分離禁止(…、‥、ー)をしないことで知られるが、その動機は調整を少なくすることで、「字送りベタへの志向」を満足させようというものと考えられる。

2011-11-08 17:01:49
小形克宏 @ogwata

このように、全てとまで言うつもりはないが、多くの組版上の振る舞い、とくに和文組版では重要な行末処理に関する振る舞いを、この「字送りベタへの志向」と「矩形への志向」という2つの動機によって説明できるのではないかと考えている。

2011-11-08 17:02:11
小形克宏 @ogwata

「矩形への志向」について補足しておきます。おそらく従来の言い方だと、これは「行末への志向」というような、矩形よりも行末を意識した言い方になると思う。たとえば前掲の前田さんの〈行末の並び線〉という表現がそうだったように。

2011-11-08 17:02:19
小形克宏 @ogwata

しかし、ここで意識されているのはそれだけだろうか? 行末だけではなく、むしろ上下左右を区切る版面の矩形ではないか。これについては、まさに今朝、前田さんがツィートされていた。 http://t.co/Uwdegn1Y

2011-11-08 17:02:28
小形克宏 @ogwata

この中で〈各行が透かしてみて裏表あっている〉というのは、矩形を透かして一致させているわけで、まさに「矩形への志向」と言えるのではないでしょうか。以上、迷ったが昨晩の @koikekaisho http://t.co/uTClcTVj を読み、力を得てツィートすることにしました。

2011-11-08 17:02:40
なんでやねんDTP/おぢん @works014

行末約物は全角/半角を許容、「強制」ぶら下げもしない私の場合…@ogwata さんの仰る「字送りベタへの志向」ということになろうか…とはいえ、ぶら下げありの場合は3種類の行末句読点の形態が見開きに出現することは避けるが…

2011-11-08 17:28:43
2SC1815J @2SC1815J

@ogwata 句読点ぶら下げの場合は、句読点を「一人前の文字」と見なさないことで、小形さんのおっしゃる「字送りベタの志向」と一人前の文字(であると組版者が認識している文字)のみで成立させる「矩形への志向」を両立させていると言えるかもしれませんね。

2011-11-08 18:23:26
Taro Yamamoto @ragged_right

矩形に合わせたい、というより、普通和文グリフは等幅で、禁則や和欧混植や約物・括弧類との組み合わせを除けば、全角以外で送る場合がほとんどなく、ラギッドにしても行長に視覚的に意味のある変化が生ぜず、結果、ジャスティファイするのが最良と考えられる、というのが私の少し風変わりな解釈です。

2011-11-08 20:36:00
小形克宏 @ogwata

@2SC1815J なるほど、そういう言い方もできるかもしれません。ところで〈句読点を「一人前の文字」と見なさない〉って面白い見方ですね。ぼくの中でぶら下がりは、小数点以下切り捨てのイメージでした。あるんだけど、ないことにしちゃうという。

2011-11-08 22:54:13
2SC1815J @2SC1815J

@ogwata 以前、行頭の始めかぎ括弧が天より飛び出している明治時代の書籍についてツイートした際、前田さんから『約物が一人前の「ひとつの文字」としての位置を獲得する前の産物かと分析』と伺ってなるほどと思ったことが頭に浮かびました。

2011-11-08 23:51:08
小形克宏 @ogwata

なるほど、面白い。RT @2SC1815J: @ogwata 以前、行頭の始めかぎ括弧が天より飛び出している明治時代の書籍についてツイートした際、前田さんから『約物が一人前の「ひとつの文字」としての位置を獲得する前の産物かと分析』と伺ってなるほどと思ったことが頭に浮かびました。

2011-11-08 23:53:19
ものかの @monokano

@ogwata 書籍の数百頁に渡る「読ませる本文」とグラフィック系の「見せる本文」はまったくの別物で、読ませる本文は「字送り均等」、見せる本文は「矩形」を重視する傾向がありますけど、これは媒体の意図する効果や目的の違い。小形さんは「読ませる本文」の方を俎上にのせているんですよね?

2011-11-09 00:24:44
小形克宏 @ogwata

@monokano はい、書籍の本文組版における振る舞いをイメージしています。

2011-11-09 00:27:47
ものかの @monokano

@ogwata ほっとしましたー。で、多段組って、ぶら下げしないですよね。行長が短いのでぶら下げた方が乱れにくいのにしない。これは段組だと矩形の印象が強く、ぶら下げが目に付くので好まれないのが理由だと思います。つまり、処理方法の選択は志向より嗜好で決められるのが実際だと思うんです

2011-11-09 00:34:56
ものかの @monokano

@ogwata そして単段組の「読ませる本文」に矩形志向を持ち込むのは、ちょっと無理があるような気がします。それはグラフィック傾向であってやはり嗜好だと思うんですね。

2011-11-09 00:40:58
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