1938年にヒトラー・ユーゲントの代表団が来日し、米・麦の二毛作が行われて、驚いた。//こういった米麦二毛作の農村スケジュールをスリリングに体験できるのが、黒澤明の映画『#七人の侍』である。

この一連の流れを理解すると、映画の勘兵衛の「勝ったのはあの百姓たちだ、儂たちではない」というセリフがより味わい深くなる _(:3 」∠ )_
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剣kenn @hskenncutter

1938年にヒトラー・ユーゲントの代表団が来日し、3か月ほど日本各地を訪問したことがある。このときユーゲントの団員が日本で米と麦の二毛作が行われていることを知り、大変驚くと同時に日本の肥沃さを羨ましがったという逸話が残っている。 pic.twitter.com/SqhrmI8KhD

2021-04-03 14:10:00
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ヨーロッパ、特にドイツなどは寒すぎて稲作ができないこともあり、秋に麦の種を播いて初夏に収穫し、すかさず同じ場所で稲の田植えをして、秋にはまた米を収穫するという、日本の米麦二毛作などヒトラー・ユーゲントには全く想像もできないことだったのだろう。

2021-04-03 14:14:00
剣kenn @hskenncutter

日本では、大麦はもっぱら米の裏作として作られてきた。麦の収穫は米の端境期に当たる初夏の食料不足に対応できるため、稲が不作だった場合の救荒対策の意味合いが強かったと言われている。麦ご飯、麦味噌、麦の麺類、麦焼酎などになって美味しく食べられてきた。 pic.twitter.com/8rqwIUyPP9

2021-04-03 14:23:36
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米麦二毛作のはじまりは鎌倉時代にまでさかのぼるらしい。無肥料では麦はとにかく収量が少なくて話にならないが、鎌倉時代になって牛馬の糞が積極的に肥料として活用されるようになったことが大きいと言われている。大型家畜は日本では食用にはならなかったが、農耕用として大いに活用されていた。 pic.twitter.com/unI79Cborh

2021-04-03 14:31:50
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米麦二毛作の弱点は、麦を収穫するために夏作の稲の作期を後ろにずらさなくてはいけないことだ。稲は日長時間に依存するので、播種時期を遅らせると生育期間が短くなって、収穫量が減る恐れがある。そこで苗代を整備してあらかじめ稲を播種しておく対策が取られた。 pic.twitter.com/dtqPjA51pj

2021-04-03 14:45:11
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今は4月初旬だが、米麦二毛作なら麦が穂を出し始める頃だ。5月下旬から6月初旬の「麦秋」に収穫し、畑に水を入れて田んぼにして田植えをするという流れになる。麦は湿気に弱いので梅雨空とにらめっこしながらの作業となる。 pic.twitter.com/gZAQJRQCLu

2021-04-03 14:51:39
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こういった米麦二毛作の農村スケジュールを大変スリリングに体験できるのが、黒澤明監督の映画『七人の侍』である。物語は麦の収穫前から始まって、田植えの場面で終わる。

2021-04-03 14:57:02
剣kenn @hskenncutter

映画冒頭、去年の秋に村を襲って米を奪った野武士たちがまた村にやってくるが、まだ麦が実っていないため時期尚早として、麦秋を待って再度村を襲撃しようと計画している。それに気づいた村人たちが侍を集め始めるのは、4月下旬ぐらいなのではないか。 pic.twitter.com/au6ffaq34U

2021-04-03 15:02:47
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利吉、与平、万造、茂助の4人が町へ侍を探しに行くが、そう簡単に侍は見つからず、村を出て10日目には麦が実り始めてしまう。収穫の時期は刻一刻と近づき焦り始めるが、主戦派の利吉は「ここらの麦は早い。山の麦とは違う」と強がって不安を払拭しようとしている。 pic.twitter.com/pwrHZ3Tl8j

2021-04-03 15:08:15
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野武士から村を守るため勘兵衛が立てた戦略は、村の南側に広がる麦畑の刈入れを急ピッチで進め、畑を水田に変えて村を守る堀にしてしまい、野武士の攻撃正面を北側の山からの一本道に限定してしまうことだった。これはまさに時間との戦いである。 pic.twitter.com/8Rjm0aXCqe

2021-04-03 15:15:17
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剣kenn @hskenncutter

いよいよ麦の収穫が近づく。刈入れを急げるだけ急いで3日。そのあとに水を引いて急造の堀にする作業が1日。時間がないので長老と会議のうえ、村人全員が全力で作業に当たることになる。 pic.twitter.com/RBhuQdJvux

2021-04-03 15:21:13
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剣kenn @hskenncutter

麦の刈入れにはとにかく人手が必要なため、隠れていた女たちも作業に参加する。菊千代は大喜びで女の3倍の労力を発揮。 pic.twitter.com/RUBw2GxuX8

2021-04-03 15:24:57
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剣kenn @hskenncutter

農耕用の牛馬の糞を肥料として活用することで麦の二毛作が成立したことは前述の通りで、馬で農作業する様子もちゃんと映画で描かれている。菊千代は無理して痩せ馬に乗り、落馬して大恥をかく。 pic.twitter.com/62LwMhlYRm

2021-04-03 15:33:17
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剣kenn @hskenncutter

刈り取った麦の穂を杵や殻竿で打って実を落とす「麦打ち」の場面もちゃんと描かれているので本当に驚く。もう6月に入っているのだろう。麦の収穫が終わったので、そろそろ野武士が攻めてくるはずだが、なかなか来ないので村人が油断し始めている。 pic.twitter.com/jnJ41SsUIv

2021-04-03 15:39:41
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剣kenn @hskenncutter

さすがに勘兵衛は油断しない。やはり野武士は攻めてきた。これは梅雨入り直前の6月上旬ぐらいではないか。 pic.twitter.com/y6an5kenrv

2021-04-03 15:44:41
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剣kenn @hskenncutter

最終決戦前に「明日みんな死ぬんだべ!」で志乃とやっちゃった勝四郎が、みんなの前で勘兵衛に大人として認められるが、ここで本格的に雨が降り始めているので梅雨入りしたことがわかる。6月半ばに近づいているのだろう。 pic.twitter.com/UlXM0fRCZy

2021-04-03 15:59:32
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剣kenn @hskenncutter

村の中に野武士を引き込んで袋叩きにする最終決戦はとんでもない大雨になっている。ひょっとしたら台風だったのかもしれない。観測史上最速の上陸は4月だから可能性はあるかもしれない。 pic.twitter.com/jaGnzRz3RH

2021-04-03 16:06:18
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剣kenn @hskenncutter

野武士を倒してすぐに田植えが始まっている。もうこれ以上は遅らせられなかっただろう。ここで田植えに入れなかったら秋の収穫もなく、村は完全にアウトだったので、これは野武士との戦いという以上に、非常に厳しい時間との戦いだったわけである。 pic.twitter.com/cFXoEM97X4

2021-04-03 16:13:27
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剣kenn @hskenncutter

こうやって非常に厳しいスケジュールで農作業をこなしていかないと、米麦二毛作は成立しない。重労働につぐ重労働だが、労働力の投下に見合うリターンはあった。この点、ヨーロッパの麦作は一定以上の労働力投下が無益であったことは覚えておく必要があるだろう。

2021-04-03 16:18:55
松永 和紀 @waki1711

このスレッド、米麦二毛作から、黒澤映画「七人の侍」の話に広がって、たいへん面白い。映画、何度も見たのに、まったくわかってなかった。そういうことだったのか! twitter.com/hskenncutter/s…

2021-04-04 10:34:09
花田一三六 @hanada136

これまで漠然と捉えていたのですが、より緊迫感に迫力が加わりました。凄く面白いツイート。 twitter.com/hskenncutter/s…

2021-04-07 22:50:36
はるやすみ @dandonban

@hskenncutter そういえば、このブログncode.syosetu.com/n0132dz/1/では日英の労働生産性比較があるのだけど、日本は土地生産性は高くとも、労働生産性ではむしろ英国の方が高いというもの。「手間を掛けない農業」というのも一つの解答なのでしょうね 1人当たりの収穫量(抜粋) イングランド3.39石 日本    2.19石

2021-04-04 14:07:04
BronzeParrot @BronzeParrot

この一連の流れを理解すると、映画の勘兵衛の「勝ったのはあの百姓たちだ、儂たちではない」というセリフがより味わい深くなるな。 twitter.com/hskenncutter/s…

2021-04-04 12:28:31
剣kenn @hskenncutter

ヨーロッパの伝統的な麦作は、耕地を整えて播種したら、あとは収穫まで放っておくもので、次々と時間に追われて重労働を続ける日本の農業とは大違いである。おかげで日本人は不必要なまでに勤勉になってしまった。まったく因果な歴史である。怠惰さが美徳として称賛される社会を作りたいものだ。

2021-04-03 17:05:59