マイモニデス『迷える者への導き』:訳書や原典の文筆的評価について
- nirvanaheim
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マイモニデスの「迷える者への導き」っていう文書がありまして、Shlomo Pinesという、パリ生まれで一時期ロンドンに住んだこともありますという方の英訳が『A Maimonides Reader』という本に収録されてるんですけど、この人の英語がヘタでヘタで、いつも怨嗟の的です。
2011-11-13 20:57:20ちょっと検索したら『Classics of Western philosophy』という本で「outstanding translation」とか称賛されてまして、思わず「バカじゃないの」と思いましたが、多分「難解そうに見えると実際スゴイ」という悪習の影響じゃないかと思います。
2011-11-13 21:00:03いやホントに、詩的表現がとかじゃなくて、例えば単純に代名詞を過剰かつ連続使用してくるとかそういう読みにくさですので、奥深いとかじゃないです。
2011-11-13 21:01:54Friedlanderという方がした別の英訳が、現在ウェブ上で見ることができるのですが、こちらの方が圧倒的に読みやすいです。あとわたし自身が読めるわけではないのですが、ヘブライ語の原典と照合する限りでもPines訳は微妙で、Friedlanderさんの訳の方が正確らしいという。
2011-11-13 21:04:35Pinesさんはイスラエル建国後にヘブライ大学で38年もの間ユダヤ思想学科・哲学科の教授を勤められ、はなはだ影響力が広い大学者だったようですが、少なくとも英語で表現する能力には残念ながら欠けるところがおありだったらしいのは残念なことです。その辺が上手い弟子に任せればよかったのに。
2011-11-13 21:10:56あ、勢いでヘブライ語原典とか言っちゃったけど、たしかマイモニデスが書いた時点ではアラビア語だった気がしてきました。まあそんな感じで。
2011-11-13 21:25:10『迷える者の導き』はヘブライ文字アラビア語で書かれているのですが、アラビア語自体が代名詞を過剰かつ連続使用する言語な上にマイモニデスがアラビア語が超下手なので忠実に英訳してそうなったのでしょう→ @nirvanaheim単純に代名詞を過剰かつ連続使用してくるとかそういう読みにくさ
2011-11-13 21:43:56なるほど、すると、同時代から初期のヘブライ語訳アラビア語訳等が原典にない明晰さを付与してしまっている可能性とかあるのですね。留意しておきます。そうだったらPinesさん申し訳ありません。 → @HASSANKONAKATA:アラビア語自体が代名詞を過剰かつ連続使用する言語な上 ┉
2011-11-13 21:49:22.。oO(迷える弟子に教え諭すための文書が何故こんなことに…… >マイモニデスがアラビア語が超下手なので)
2011-11-13 21:50:36マイモニデスはアラビア語が下手、というより、意地になって、美しくなく書いている感じがしました。まぁ、この辺りの話は@barhebraeusに伺うほうがよいでしょう。
2011-11-13 21:50:25ズィンミー指導者で宮廷医も勤めたような人物がアラビア語ヘタというのもどうなのか感はありますので、「意地になって、美しくなく書いている感じ」というお話ですと納得感が高まります。
2011-11-13 21:53:47@nirvanaheim 『迷える者への導き』ですが、先に仰られたとおり原典はユダヤ・アラビア語で、一般には中世のイブン・ティボーンによるヘブライ語が「準原典」として出まわってます。「タハケモニ」というヘブライ語 マカーマートの金字塔を著したイブン・ハリーリー訳もありますが、
2011-11-13 22:27:29@nirvanaheim このイブン・ハリーリー訳の方が逐語訳でなくヘブライ語として読みやすいように訳したのですが、翻訳一家のティボーン訳(逐語訳)の方が受け入れられたんですね(ヘブライ語としても分かりにくいのに)。
2011-11-13 22:28:26@nirvanaheim ユダヤ・アラビア語に関してですが、Pinesはユダヤ・アラビア語からの逐語訳を試みているはずです、確か。マイモニデスの「アラビア語が酷い」のは「アラブ・ムスリムの伝統的アラビア語=クルアーンを規範でとするフスハー」を学ぶ必要性がなかったからでしょう。
2011-11-13 22:31:06@nirvanaheim Joshua Blauなんかも指摘していますが、ダイグロシアはかなり初期の段階でアラブ世界の中で発生しています。その高位変種のフスハーで書かれていない、ある程度まで低異変種の話し言葉に近いのが、マイモニデスの書いたユダヤ・アラビア語ということです。
2011-11-13 22:33:22@nirvanaheim 僕はマイモニデスのアラビア語文章をそんなに読んだわけではないので俄に判断しかねますが、「意地になって美しく書いてない」というより書けなかった(書かなかった)ような気がします。ヘブライ語原典の「ミシュネー・トーラー」のヘブライ語は凄く簡潔で綺麗ですよ。
2011-11-13 22:35:34@barhebraeus ありがとうございます。勉強になります。迂闊に暴言を吐き不勉強を晒してしまいましたが、正して下さるのはありがたい限りです。
2011-11-13 22:37:45@barhebraeus "A Maimonides Reader" を講読しているのですが、For Perplexed から特に評判が悪いので、ああいう認識になっておりました。マイモニデスのアラビア語文筆能力の問題だったのですね……口語では問題なかったが、と。
2011-11-13 22:39:28@nirvanaheim また、そもそも書物の宛先がユダヤ人、つまりフスハーの伝統に連ならない、連なる必要がない人たちなので、フスハーで書く必要もなく、彼らの分かる言葉(ユダヤ・アラビア語)で書かなければならない、という前提があります。まあアラビストの目からすれば酷いのはその通り
2011-11-13 22:38:06