掌小説語り～自作つぃのべる集～95

リュカ @ryuka511

私の背に翼があったのは遠い遠い過去のこと。禁忌を犯し翼を切除され天界から追放された。だが満足している。愛を知れたから。天使でありながらあの人を愛し、あの人を死なせた人間を全て殺した。あの人は傍にいると確かに感じる。人の身となりながら死なないのも罰なのだろうが、私は幸せだ #twnovel

リュカ @ryuka511

目前に広がるのは朝焼けに白む街 何もかも今始まったかのような静謐さと清らかさに満ちている。だがそれは幻想だ。この静謐さと清らかさは、黎明ではなく終焉を暗示しているのだろう。燻んだこの街に、君はもういないのだから。夜明けにもう意味など無い。この静けさの中で、私も幕を下ろそう #twnovel

リュカ @ryuka511

ある日、天から光る糸が垂らされた。人々はあれは救いだと叫び、細い糸に群がる。案の定、糸はあっさり切れた。あんなのが救いなものか。あれは神が人を試し、人の愚かさを再確認しているだけ。神の気まぐれな慈悲に惑わされない。絹糸の慈悲を無下にしてでも、この地獄で生きると決めている #twnovel

リュカ @ryuka511

背中に冷たく硬い感触、そして彼女の声。「お願い、振り向かないで」両手を挙げ逆らう意思は無いと示す。敵基地の最深部で仲間の裏切り。薄々察してはいたが。敵の口車に乗るタイプではないから、脅されているのだろう。ならどうやって助けるか。仲間を裏切り者になんかしないから、安心しろ #twnovel

リュカ @ryuka511

事象の仕組みが解らぬ者にとって、それは奇跡と映る。いとも簡単に奇跡を起こす者へ人々は畏怖の念を抱く。大勢の人間を容易く支配する方法の一つだ。知識を遮断し、奇跡を起こせる唯一の者として君臨する。反感を抱かせず、人々を懐柔する手腕も必要になる。知は血を伴わない武器と言えよう #twnovel

リュカ @ryuka511

「いるんでしょ、おおかみさん、いらっしゃい」努めて優しく声をかける。まだ若い狼だ。私を仕留めれば一人前だと言われたらしい。話は読めた。恐らくあの女の仕業。もっと強い奴がいるよとある魔女の名を教えると、狼は礼を言い駆け出す。無事に母を倒したらまたいらっしゃい、おおかみさん #twnovel

リュカ @ryuka511

君を護ろうと剣を学び、君を護りたくて剣を振るった。賊から、魔物から、君を傷つけるあらゆるものから。学ぶだけでは足りなかった技術が実戦で身についてくる。敵を退けるだけでなく、確実に葬る。二度と君に近づけないように。君を怖がらせないよう後始末も完璧に。君を護れるのは、私だけ #twnovel

リュカ @ryuka511

竜は常に王の傍にあった。戦ではその背に王を乗せ戦場を駆け、緊張関係にある隣国との会談では背後に控え王を守った。王以外の者には決して従わなかった。竜は無敵だった。人々は竜を恐れ王を恐れた。だが人の寿命の短さは、竜の理解の外にあった。王に忠誠誓いし竜は、帰らぬ王を待ち続ける #twnovel

リュカ @ryuka511

君を守りたくて盾を構えた。世界で一番硬い金属を探し出して、世界で一番腕のいい職人に作らせた盾だ。これなら非力な僕でも君を守れる。君の前に立ち、君を狙う敵の攻撃を全て受け止めひたすら耐えて耐えて。やがて敵は諦めて去って行った。もう大丈夫だよ、と振り返る。君はもういなかった #twnovel

リュカ @ryuka511

あんな奴を許すなんて慈悲深いねと言われました。許す?慈悲?いいえ、これは復讐です。許されたのだと、愛されているのだと信じ込んだ貴方が本当に心を入れ替え生きた時に、許すわけがないと叩き落とすのです。私の生涯をかけた復讐を果たすその時まで、貴方を許し愛するふりなど容易い事です #twnovel

リュカ @ryuka511

そうね、わたしは失敗作だけど、失敗したのはあなたでしょ。罵られる度にそう言いたいのを飲み込む。わたしはあなたに逆らえないよう出来ているから。もし言えたとしてももっと酷い事態になるだけだ。あなたの失敗の原因は解っている。あなたのようなろくでなしが、親になってはいけなかった #twnovel

リュカ @ryuka511

闇に濡れた貴方の横顔が好きだ。諦観や希死念慮を抱え、生きる事に後ろ向きなくせに、圧倒的なエネルギーを放つ貴方に惹かれた。貴方を包むのは純度の高い闇。純粋な闇は悪ではなく、ただ闇としてそこに在る。私をそこまで導いて。希望や生への執着を捨て切れれば、きっと生きるのが楽になる #twnovel

リュカ @ryuka511

太陽も月も遠い、この冥王星でかくれんぼ。ここはとっても寒いけど、みんなといれば大丈夫。一人で隠れていても、ちゃんとみんなみつけるから。ひとりでいてもみんなでいても、淋しくない。太陽系から外されたこの星は、はぐれた人に優しい。 #twnovel

リュカ @ryuka511

今宵は三日月の船に乗って、星の海をいきましょう。銀色の竪琴を、この海の底で眠る者達のために奏でましょう。静かな月に照らされて、星の海の底にはかつて栄えた文明の跡が見えます。尖った屋根を持つ塔や、真四角な建物。そこに生きていた者達がどんな末路を辿ったのかは、誰も知りません #twnovel

リュカ @ryuka511

緊張からか、いつもより饒舌な僕がいる。守らなきゃいけないものがあるのだ。落ち着いて、頭にあるシナリオ通りに話し、振る舞えばいい。あれは練りに練った完璧なシナリオ、大丈夫。だから君は黙っていて。｢あいつを殺したのは、僕です｣#twnovel 君の罪を平然と被れる僕では、君を幸せにはできない

リュカ @ryuka511

あれから誰と恋をしても、相手を君と重ねるようになった。それはすぐに見透かされ、傷つけて破局を迎える。あれ以来、好きになる誰かは君とどこか似ていて、でも君じゃない事に落胆し、傷つける。君を忘れない事と、他の誰かを愛する事は違うのに。私はもう二度と恋をしてはいけないのだろう #twnovel

リュカ @ryuka511

僕を裏切り、僕の友人を君は選んだ。社会的に成功してる彼の方が、君の未来は安泰だ。結婚式の招待状に悩んだ末出席することにした。もう吹っ切れたと示す為に。だけど当日、式場に君が来ないことを知っていた。ざわつく式場、狼狽える友に密かに笑う。大丈夫、すぐ君のいる所へ送ってあげる #twnovel

リュカ @ryuka511

救世の英雄だと神託に告げられた君。剣も魔法も全く扱えない君がなぜ選ばれたのか。本当の英雄は僕だからだ。君は僕を隠す囮。でも何より僕が守りたいのは君だ。君の補佐役として共に旅に出る。君を守って神託通りに君を英雄にするから、君はそこで待っていて。美しい君こそ、英雄に相応しい #twnovel

リュカ @ryuka511

太陽は生命の源である。が、生命の理から外れた我々は、太陽の敵なのだろう。光は我らの目を射り身体を焼き尽くす。世界に陽光が射す時、我々は逃げるように眠りにつく。闇に生まれた我らだが、この身には魂を宿す。太陽に拒まれ、それでも太陽に焦がれて、手を伸ばし叫ぶ。愛してほしいと。 #twnovel

リュカ @ryuka511

私が産まれてから長い年月が過ぎた。最近調子がおかしい。周りの人を認識できない時がある。「お前のパーツはもう生産されていないんだ。直してやれなくてすまない」私の報告に主はそう詫びた。私は主の事がいつかきっと分からなくなる。そんなの嫌だ。忘れない事が、機械の私の強味なのに。 #twnovel

リュカ @ryuka511

幼い頃、閉じ込められていた場所から助けてくれたあの人は私の恩人だ。何年も一緒に街から街へと渡り歩く生き方は、大変だったけど楽しかった。だけど私達の旅は突然終わった。知らない人達に捕まって引き離され、真相を聞かされた。自由をくれた罪人へ。あの家から助けてくれて、ありがとう #twnovel

リュカ @ryuka511

魔王を倒したあの時あの瞬間、感じていたのは罪悪感だと思う。魔王が地上を侵攻する理由を、その悲痛な叫びを、聞いてしまったから。そんなもの聞かずに僕らの正義を掲げ戦えば良かった。あるいはそれも魔王の策だったのかもしれない。あれからずっと考えている。表裏一体の僕ら。他に道は。 #twnovel

リュカ @ryuka511

幼い頃、祈りは海に還るのだと教わった。寄せては返す波は、人の祈りそのものなのだと。繰り返されるそれは、届かなかった祈りの成れの果てだと思った。だがそれは少し違うと今なら思える。昔も今も、人は愛や幸福を願って祈り、その祈りは海に還って、波となり雨となり大地を優しく包むのだ #twnovel

リュカ @ryuka511

戦いの中、あの人なら、きっとあの人なら助けてくれる、以前はそう思っていた。だけど今は違う。あの人ならこうする、そう考えて動く。あの人はもういないから。あの人を奪った魔王軍を倒す。今はその為だけに戦う。世界の平和なんて後回しだ。あの人のいない世界に、私の平和は無いのだから #twnovel

リュカ @ryuka511

それは、許されない恋だった。二人を許してくれる世界を目指し、どこまでも逃げた。だが許されない恋は、やがて二人を蝕んでいった。もしも君が。もしも貴方が。不毛な問いと争いを幾度も繰り返し、それでも離れがたい二人は、許されないまま共に散った。だがその顔は、幸せそうだったという #twnovel