フィジシャン、ヒール・ユアセルフ #4

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
文学 書籍 ニンジャスレイヤー
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR
第二部「キョート殺伐都市」より:「フィジシャン、ヒール・ユアセルフ」#4
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オオヌギ・ジャンク・クラスターヤードからタマ・リバーを 遡ると、そこは巨大な車両廃棄区画である。ナンバープレートを剥がされ、ネオサイタマ中から集められてきた自動車たちの墓場が、川の両岸に広がるのだ。 1
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廃墟めいた立体駐車場が空を遮り、積み上げられたスクラップ達の間を時折、フォークリフトや後ろ暗いヤクザリムジンが走り抜ける。廃墟区画の縄張りは闇の勢力の管理下で厳重に切り分けられている。クズ鉄、レアメタル、車載UNIX、人工知能、スシマシン、偽装プレート。宝の山なのだ。 2
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それでもこれだけ広大な廃墟的空間となれば、管理の目をかいくぐり、命知らずのスクワッター達や、ガス吸い、自然繁殖してしまったバイオスモトリすらもが混沌と隠れ潜んでいる。見よ!あそこを。廃棄されたトーフトラックの薄汚れたホロに首を突っ込むバイオスモトリだ。 3
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「フシューッ、フシューッコーッアバッアバッ」ホロからはみ出した巨肉が醜くふるえ、くぐもった咀嚼音が聴こえてくる。バイオスモトリがホロの中で何かおぞましいものを食べているのだ。それがトーフで無い事は明らかである。「……ビンゴウ!」その醜い尻を、遠くから銃口で指し示す者あり。 4
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赤いモヒカンヘアーの青年は口からバリキドリンク由来のヨダレを垂らして喜んだ。レーザーサイトつきの無骨な銃は、型落ちしたデッカーガンの横流し品であろうか?彼は相棒のカモメヘアー青年を振り返った。「俺が睨んだ通りだ!」カモメヘアー青年のサイバーサングラスに「大入り」の文字が灯る。 5
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「最高だぜ」カモメヘアーはガムをクチャクチャ噛みながら恍惚として言った。彼の武器はハープーン・ガンだ。逆棘つきの物騒なモリを発射する対バイオマグロ武器で、携帯許可証が要るシロモノである。当然、無免許だ。二人はこの廃墟を狩り場とする残虐なマンハンターである。 6
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彼らは殺人衝動をどうしても抑えられなくなった異常者であり、公式には人口ゼロとされるこのスクラップ区域で自由な殺人を愉しむべく、わざわざ遠征して来ているクチだ。普段はスクワッター達を追い回す彼らであるが、バイオスモトリは身体が大きいため、獲物としてより好まれるのだ。 7
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「もうガマンできない!」カモメヘアーが言う「早く!早くやろうぜ!」BLAM!BLAM!返事のかわりにモヒカンは銃を撃った。バイオスモトリの臀部が爆ぜる。「フゴッ、フゴーッ!」ナムサン、バイオスモトリは人間ではない。だが人間に似た姿をしている。マンハンターに慈悲の心は無いのだ! 8
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「フゴーッ!フゴーッ!」バイオスモトリが攻撃に反応し、ホロから上半身をもぎ離した。そして二人のマンハンターを振り返る。ヒグマめいた巨体と吐き気をもよおす脂肉!おお、なぜテクノロジーはこんなものを産み出してしまったのか?神聖なオスモウ・リチュアルを冒涜する怪物! 9
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「ヒャア!コワイ!」「ヤルヤルー!」モヒカン・マンハンターは満面の笑みでガンを乱射!全身からバイオ液を噴き出しながら突進するバイオスモトリ!だがその機関車めいた突進はカモメヘアーのハープーン・ガンがその呪われた脳天を貫いた事で終了した。バイオスモトリは絶命しうつ伏せに転倒! 10
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「イエッフー!ハンチングー!イエッフー!」「イエッフー!」二人のマンハンターは薬物摂取の異常なハイ・テンションのもと、バイオスモトリの死体の周りで踊る!「ポイント倍点!」「もっと殺したい!」「おい、あっち!獲物だ!」「バカ、鼻を削がないと……」「あっちだ!逃げられるぞ!」 11
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モヒカンが振り返りもせず駆け出した。「あのスクラップの角を曲がったぜ!逃げた!」「もう!休むヒマも無いな!この町は!」カモメヘアーがヨダレを垂らして笑い、それに続く。二人は全速でダッシュし、トーフトラックの脇を通過し、積み上げられた車体をよじ登った。「おい!あれを!」 12
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二人は眼下の光景に息を呑んだ。バイオスモトリをすら恐れぬ薬物ハイにあるとはいえ、このようなジゴクめいた光景となれば話は別だ。眼下を流れるのはタマ・リバー。間違いない。そしてそのタマ・リバーで沐浴している黒ずんだ人影。そのあたりから……七色の汚濁が大量に湧き出している。 13
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「ナニアレ?」モヒカンがカモメヘアーを見た。「タマ・リバー汚染しちゃってンの?あいつ?」「犯罪じゃない?」カモメヘアーのサイバーサングラスに『薬物関係を不法投棄では』というミンチョ文字が表示された。一体何を流しているのか?あの人影から下流が、いきなり全面に汚れているのだ。 14
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「あいつヒドくない?」カモメヘアーが非難がましく言った。「じゃあエコロ・キルしようぜ、あいつ」モヒカンが即答した。「スナイパーアタッチメントだぜ!」彼は自分の銃にスコープを取り付けた。カモメヘアーは笑った。「すっげぇ!やらせて!」「じゃあ一発ずつ交代!」「ヤッター!」 15
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「まず俺!」モヒカンがスコープを覗き込む。「悪いけど一発エコロだから!」彼は廃車の上でうつ伏せになると、ドットサイトに黒い人影を捉え、引き金を引いた。BLAM!「アバーッ」黒い人影が身じろぎした。そして飛沫をあげて川の中に沈み込んだ。「ビンゴウ!」 16
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「……」「……あれ?」カモメヘアーは目を凝らした。「起き上がったヨ?」「え?」モヒカンはスコープを再度覗き込んだ。黒い人影が水の中から起き上がったのだ。何事も無かったかように、再び七色の汚濁が流れ出す。「エコロできてないじゃん?」カモメヘアーが笑った。「次、俺ね!」 17
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カモメヘアーが銃を奪い取り、うつ伏せになってスコープを覗き込んだ。「……ちょっと!何やってんだよ」カモメヘアーがモヒカンを非難した。「暗いヨ。邪魔はずるい!」「え」モヒカンは目をぱちくりさせた。何も邪魔はしていない。だが確かに暗い。「あれ?暗いね。夜?」「だからヤメテ!」 18
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「エ?でも……」モヒカンはキョロキョロと見回し、首を傾げた。どうしてこんなに急に暗くなったんだ?答えは彼らの頭上にあった。モヒカンは上を見上げた。廃車が一台、宙を浮いているのだ。なるほど、これが空の明かりを遮っ……「アバーッ!」 19
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……鉛色装束のニンジャは二人の「クズども」が廃車にサンドイッチされてペシャンコになった事を見届けると、首を鳴らしてアクビをした。彼の背中には「磁改」の漢字二文字が極太ミンチョでプリントされている。川の中から不気味な声が届く。「遊ンダナ……」「悪い悪い!でも痛くねえんだろ?」 20
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「衝撃ハ小サクナカッタ」黒く萎びた筋繊維を剥き出しにした奇怪な存在は鉛色ニンジャをじっと睨んだ。鉛色ニンジャ、メタルベインは馬鹿にしたように肩を竦めた。「陰気なゾンビだな。ヒマなんだよ、こちとら……」「私ハ、ナックラヴィー、デス」「ヘッ」彼は舌打ちした。 21
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このメタルベイン、今回の感染テスト計画にあたり派遣されたアマクダリ・セクトのニンジャである。たった今読者諸氏がご覧になった通り、ニンジャソウルとサイバネ身体改造を組み合わせた磁力テレキネシスの使い手だ。実際彼は腕に自信があったが、今回の仕事には不服であった。暇だからだ。 22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR
やる事は言わば、このナックラヴィーの護衛、そして監視である。無事タマ・リバーを汚染し続けられるよう、見張る事だ。たった今のようなアクシデントがデータの乱れを引き起こさぬように。(全くつまらんベビーシッターだ)メタルベインは心中毒づく。(しかもあいつ、ゾンビのくせに弁が立つ) 23
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彼は川の中に沐浴めいて浸かりジツを行使する邪悪存在を、疎ましげに見やる。実際恐ろしいジツだ。風下に行かぬようメタルベイン自身も注意している。あんな色の川!オオヌギ地区は酷い事になる。メタルベインは他の大部分のニンジャ同様、弱者への共感など持ち合わせない。だがアワレは感じた。 24
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コメント

オスツ🍣 @alohakun 2011年11月21日
フィジシャン、ヒール・ユアセルフ #1 http://togetter.com/li/211642 フィジシャン、ヒール・ユアセルフ #5 http://togetter.com/li/217190
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