霜田光一先生の「水はどうして透明なの?」という文章を読むと、レジェンド級の研究者は問題設定の出発点をここまで持って来るのか、と驚かれされる。 ちなみに 「水分子は可視光を吸収する遷移がないから」 は答えではあるけど、そこで「問い」が止まらないのが面白い。 1/n
2023-06-03 20:55:08以下、「」内は上記の文章から引用 「水分子の振動回転状態の遷移は赤外線を吸収し、電子遷移は紫外線を吸収するが、可視光線を吸収する遷移はないので、可視光線に対して水は透明なのである。これは正しいが、これで、水がどうして透明なのかわかっただろうか。」 2/n
2023-06-03 20:58:17「裏を返せば、赤外線や紫外線で見ると水は透明ではないのだ。電磁波の広いスペクトルで見ると、すべての物質はある波長では電磁波を吸収し、ほかの波長では透明である。水はどうして可視光線(波長380nmと760nmの間)に対して透明なのだろうか?」 3/n
2023-06-03 20:59:25「コップの水は確かに透明だが、川や海の水は青く見える。10mの深さの水では、波長が440から520nmまでの光は80%以上透過するが、400nm以下の光も、590nm以上の光も、40%以下しか透過しない。だから汚れのない水のなかは青い世界であることは、水中カメラの映像でよくわかる。」 4/n
2023-06-03 21:00:42「ヒトの眼の水晶体も硝子体も主成分は水であるから、ヒトは水を透過しない波長の光を見ることはできないはずである。だから水を透過する光が可視光線なのである。水が透明なのは偶然ではなくて、水が透明になる波長の光に感ずるようにヒトの眼の網膜ができたのではないだろうか?」 (引用終わり) 5/n
2023-06-03 21:04:16上記の引用元はこちらの本↓の霜田先生ご執筆のところなのですが、 「物理って面白いんですか?」 ってお題に対するエッセイに、(あれほどの先生が)自分の研究歴の話を書かず、エッセイ全体の残り2/3くらい生物の眼の進化に考え巡らせてるの、すごいと思うんですよ。 6/n amzn.to/3qs3DVy
2023-06-03 21:06:53前にも呟いたのですが、レジェンド級のモノ作る量エレ実験系物理研究者は、問題にあたる時、その測定デバイスのことまで深く考えてるんだな、と。 今はそういう時代じゃないとは言え、デバイスをブラックボックスとして使ってる自分をちょっと省みたくなります。 7/n twitter.com/drboar/status/…
2023-06-03 21:10:35それほど関係ある話ではないのですが、霜田光一先生の書かれた 「水はどうして透明なの?」 という文章を読むと、モノ作る量エレ実験系物理研究者は、本来ここまでデバイスを遡って問題設定するべきなのか、とハッとさせられます。 →RT
2022-02-04 20:27:09霜田先生は「レーザー研究」で、光電効果の説明に本当に「光子」(電磁場の量子化)が必要かなど考える連載も書いてて、それっぽい説明でそのまま納得してはいけないんだなと考えさせられます。 8/n jstage.jst.go.jp/article/lsj197…
2023-06-03 21:28:01直接の面識はほぼない、玄孫弟子くらいの量エレ研究者の身ですが (というか、今の日本の量エレ実験系研究者って、師匠筋を辿って行くとかなりの確率で霜田先生まで行きつくんじゃないかという気もしますが) 霜田先生のご冥福をお祈りします。 9/9
2023-06-03 21:31:57【訃報】東京大学名誉教授の霜田光一氏が死去 optronics-media.com/news/20230530/… レーザー,マイクロ波,量子エレクトロニクス等の研究で業績をあげた霜田光一氏が,5月29日に逝去した。102歳。 #訃報
2023-05-30 17:57:42霜田光一先生の本を買いました。 『エレクトロニクスの基礎』、予想外に面白そうです。 pic.twitter.com/aSJKHPV7ZC
2023-05-31 20:01:53で、水分子に可視光を吸収する遷移がないかというと、電子遷移はないが分子振動の遷移の倍音に相当する吸収があって・・・という話はWikipediaの記事「水の青」でまとまっている。 ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B4… twitter.com/drboar/status/…
2023-06-04 10:23:08「水はなぜちょうど0度で凍ってちょうど100度で沸騰するのか(そのように定義されているから)」は愚問として扱われるのに「水はなぜ透明なのか(吸収されない波長域で生命が進化しなければ目が機能しない)」は良い問題提起として扱われるの、人類の平均的思考力がこのあたりと示されてるようで興味深い
2023-06-04 10:29:49@cicada3301_kig しょーもないマジレスをすると、摂氏0度と100度を昔どうやって決めたかは義務教育で習った気がするのに対して、「水はなぜ透明なのか」は習った覚えがないというのが大きいと思います。
2023-06-04 11:35:55「昭和天皇は偶然にもちょうど平成になる直前で亡くなった」は笑い話になるけど「COVID-19 は偶然にもちょうど2019年に発生した」は命名の理由を知らない人が結構多そう
2023-06-04 10:36:26「五度圏で偶然にも白鍵が並ぶ」も偶然ではないが皆あまり理解していない(古代に五度圏の考え方で琴が調律されたのに基づいて音階が生じてからピアノができたので循環している) pic.twitter.com/i7sYOKEUsX
2023-06-04 10:44:14(1)この問いは実は科学としてめちゃくちゃ奥が深い。水は「ほぼ」透明なだけであって、わずかに赤色を吸収する。だからたくさん集めてくると青く見える。白い湯船に入れた水が青っぽいのは赤色を吸収するから。可視光の赤色を吸収するのは水のOH伸縮振動の倍音結合音が赤色のところにくるから。 twitter.com/cicada3301_kig…
2023-06-04 11:28:39(2)水のOH伸縮振動は3500cm-1付近(この単位は赤外・ラマン分光の周波数の単位で値に30GHzを掛けると振動数になおせる)拡がっているけど、分子の振動というのは完全な調和振動ではないので振動数が何倍とか他の振動の振動数を何倍かしたものとの和とかでも弱いけど吸収が起きる。 twitter.com/apj/status/166…
2023-06-04 11:31:05(3)水の場合はこの倍音達による吸収がちょうど可視光の赤色のところにあるので、水を分厚くすると赤が吸収される結果水が青く見える。水ではなく水素が重水素の同位体(D2Oという)で実験すると、水は青くならない。D2OというのはODの結合の「ばね」はOHと同じだけどおもりの重が違うようなもの。 twitter.com/apj/status/166…
2023-06-04 11:32:57(4)高校物理のバネにおもりつけて振動させたときの振動数の式からわかるように、ばねが同じでおもりが重くなると振動数は低くなる。これは分子振動でも同じで、OD伸縮振動は普通の水よりも低いところにくる。すると倍音や結合音達も低いところにくるので、可視光の赤色に届かないから透明に。 twitter.com/apj/status/166…
2023-06-04 11:34:44(5)もう一つの問題はちょっと専門的になる。電子レンジで水を加熱できる理由は、水の誘電損のピークが25GHzにあってその裾野を叩いているからなんだけど、水の誘電損だけではなく誘電体の電場応答のスペクトルの形はだいたい「デバイ型」であることが多い。 jstage.jst.go.jp/article/jsfe20… twitter.com/apj/status/166…
2023-06-04 11:38:14