「内田樹先生@levinassien 【大阪W選挙の結果について】」連ツイまとめ

新自由主義という「支配的なイデオロギー」に対するオルタナティヴはこれから僕たちが手作りするしかない。 by 内田樹(http://twitter.com/#!/levinassien/status/140796036338810880) 2011年11月28日
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内田樹 @levinassien

おはようございます。神戸はどんより肌寒い空模様です。ダブル選挙の結果について新聞の社説をいくつか読みました。すべてが「閉塞感」と「行政の非効率」と「既成政党への不信」について書いていました。

2011-11-28 10:07:55
内田樹 @levinassien

閉塞感について言うなら、人々が閉塞感を感じていない場所はもう世界のどこにもないと思います(NYや上海の一隅にはいるかもしれませんが)。ただそれは「社会が経済成長過程にあるときにしか開放感を感じられない」という特異な歴史的な「病」の徴候のように僕には思われます。

2011-11-28 10:10:42
内田樹 @levinassien

「鼓腹撃壌」というのはある種の統治の理想です。「日出て作し、日入りて息ふ。井を穿ちて飲み、田を耕して食ふ。帝力我において何かあらんや」と歌う農夫は「閉塞感」を感じていたでしょうか?「帝力我において何かあらんや」と嘯く人が「行政の非効率」や「既成政党への不信」を口にしたでしょうか?

2011-11-28 10:18:01
内田樹 @levinassien

僕は「鼓腹撃壌」が正しい民衆のありようだと言っているわけではありません。けれども、神経症的にものを壊し、効率を上げ、費用対効果を追い求めている状態が「閉塞感がなくて、幸福だ」というふうに感じるのはやはり一種の「時代の病」だと思うのです。

2011-11-28 10:20:14
内田樹 @levinassien

政策の適切性を吟味することよりも政策実現までの速度を優先させるのは、政治についてのかかわりかたとして、あきらかに「病的」です。「早く」という言葉は思考の深化にとって最大の障害です。けれども、現代日本人は思考を深めることより、変化の速度を選好します。

2011-11-28 10:25:31
内田樹 @levinassien

判断を急ぐことによって適切さが増すということは原理的にも経験的にもありません。でも、「とにかく変化を」と強く要請する制度はたしかに存在します。市場です。市場は人々の嗜好の変化、欲望の変化、毀誉褒貶のジェットコースター的変遷から利益を得るように構造化されているからです。

2011-11-28 10:28:44
内田樹 @levinassien

今回の選挙結果を僕は「市場が政治を呑み込みつつある」過程としてとらえています。行政、司法、医療、教育は「政治と市場が介入してはならない」制度資本領域だということをこれまで書いてきましたが、それを政治という大蛇が呑み込み、それを市場というさらに巨大な蛇が呑み込もうとしている。

2011-11-28 10:32:50
内田樹 @levinassien

経済的な停滞というのは、メディアがヒステリックに語るような退嬰的な現象であるのではなく、「市場への抵抗」のあらわれではないかという気がします。ものモノは要らない。消費にも欲望を感じない。神経症的な経済競争にも興味がない。自然と調和した穏やかな暮らしがしたい。そういう人たちが

2011-11-28 10:35:33
内田樹 @levinassien

バブルのときのような狂騒的な消費活動がまた始まることにうんざりして、ささやかな抵抗を試みている。その結果としての「いわゆる」経済活動が停滞している。その一方で、GDPではとらえられないかたちでの贈与や互酬のシステムはゆっくり形成され始めている。僕にはそんな感じがします。

2011-11-28 10:38:15

11月29日追記

内田樹 @levinassien

選挙についてのコメントについて、批判的~罵倒的なツイートがふだんよりおおめにありました。特徴的なのは「お前のような『持てるもの』に貧困層の若者の気持ちがわかってたまるか」というものです。この手の「お前のような…には」論は僕が高校生の時から辟易してきたものです。

2011-11-29 09:16:32
内田樹 @levinassien

…にはどんな言葉でも代入できます。「男は」、「若造は」、「プチブルは」、「健常者は」、「インテリは」、「日本人は」…と列挙不能なほど多くの理由で僕の発言は遮られ、否定されました。その経験から学んだことがあります。

2011-11-29 09:25:55
内田樹 @levinassien

自分より多くの利益や特権を享受していると自分が見なす人間に対してはいくら非礼にふるまっても、暴力的にふるまっても「よい」と信じている人々が世間にはたいへん多いということでした。

2011-11-29 09:29:05
内田樹 @levinassien

以来、僕は「お前のような…」という言葉を聴いた瞬間に逃げ出すことにしています。純粋な消耗ですし、彼らの自己呪詛の巻き添えになるリスクは侮れませんから。

2011-11-29 09:36:21

11月30日追記

内田樹 @levinassien

相変わらず、ダブル選挙結果について「お前には…の気持ちがわかっていない」という書き込みが絶えません。では、質問。「お前に…の気持ちがわかっていない」という条件を満たせば、その人の…についての発言の真理性は損なわれるというのが本当なら、

2011-11-30 08:48:17
内田樹 @levinassien

僕が「きみには僕の気持ちがわかっていない」と言った場合にはウチダについてのすべての発言は真理性を失う、というルールでよろしいということですね?

2011-11-30 08:39:34
内田樹 @levinassien

「ウチダの気持ちなんて、まるわかりだ」ということで主張を維持したいなら、なぜ僕にはあなたの気持ちがわからないのに、あなたには僕の気持ちがわかるのか、その知性の非対称性については挙証する義務があるのではないか、とは考えませんか?

2011-11-30 08:42:42
内田樹 @levinassien

挙証義務をニグレクトしてもよい、と判断したのはなぜですか?「私は正しく、ウチダは間違っている」という前件から同一の結論を導くのは同語反復といってふつう議論には使うことができません。

2011-11-30 08:45:06
内田樹 @levinassien

そういう人が僕との圧倒的な知的非対称性を言い立てても、少なくとも僕が納得するはずがない、という推論はできなかったのですか?

2011-11-30 08:47:03

12月3日追記

内田樹 @levinassien

昨日はその間に取材が二件ありました。一つは選挙の総括。2005年の郵政選挙、2007年の「ロストジェネレーション」と同じトレンドの中で理解すべきものだという話をしました。「抵抗勢力」「既得権益の受益者」「強欲で無能な老人たち」を「諸悪の根源」に擬して、それを排除すれば、

2011-12-03 09:01:57
内田樹 @levinassien

(続き)すべての社会的不幸は解決されるという「供犠と浄化」の物語は「今我が身に何が起きているかよくわからない時」に選好されます。「悪の張本人」がいる、というプリミティヴな話型は僕たちを安心させてくれるからです。

2011-12-03 09:06:28
内田樹 @levinassien

それは「悪徳の権化」のように橋下候補を攻撃したメディアにも共有されていました。「すべての不幸の源泉であるワルモノがいる」という説明は思考停止の病態に他なりません。

2011-12-03 09:09:20
内田樹 @levinassien

思考停止している人たちは「今我が身に何が起きているか」をほんとうは理解していないし、自分が「状況を理解していないこと」に気づいている。だから声が大きくなり、断定的になるのです。あれは自分の不安を鎮めるための、自分を励ますための大声なのです。

2011-12-03 09:13:00