ディフュージョン・アキュミュレイション・リボーン・ディストラクション #2

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

第二部「キョート殺伐都市」より:「ディフュージョン・アキュミュレイション・リボーン・ディストラクション」 #2

2011-12-01 11:48:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

この日もマルノウチの空は灰色で狭く、スゴイタカイビルの威容は雲を貫き、その上層はブッダガーデンめいて、市民の手の届かぬ視界外にある。飛行するマグロツェッペリンの横腹には広告ビジョンが点灯、「ヤンバーイ」とポップ体で書かれた文字が、赤から黄色へグラデーション変色を繰り返す。 1

2011-12-01 11:59:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

スゴイタカイビル前の広場に沿ってしめやかに進むそのタクシーの後部座席に、三人の男あり。二人はニンジャスレイヤーとシルバーキー。当然彼らは外套と帽子で己のニンジャ性をカムフラージュしており、風変わりなサラリマンが何らかの会食へ訪れた体である。もう一人の非ニンジャも同様だ。 2

2011-12-01 12:06:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼は何者であろうか?二人のニンジャに挟まれて座り、額の前で己の指先を風変わりな動作でクネクネとウォームアップするコーンロウ・ヘアーの男は。ストライプのスーツ姿であるが、似合っておらず、これもやはりニンジャ達同様のカムフラージュ服装なのだ。 3

2011-12-01 12:26:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

タクシーはそのまま滑るようにスゴイタカイビルの地下駐車場へ降りてゆく。ゲートをくぐる際、ネオン表示の「高さ可能」の文字が点滅し、オコト音が鳴ると共に「イラッシャイマシネ。お客様はブッダ様」とマイコ音声が告げた。風雅な演出、細やかな気配りは、こんな所にまで施されているのだ。 4

2011-12-01 12:30:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

タクシーが停止すると、後部座席と運転席を完全遮断する隔壁に設けられた素子スロットのカバーが開き、「明朗会計な」の文字盤が光った。走行距離と料金単位、精算内容が書かれたパンチシートが迫り出す。ニンジャスレイヤーが素子を投入すると、両側のドアがオートで開き、音楽が鳴った。 5

2011-12-01 12:39:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「チャチャッとやっちまいますかね」タクシーを見送ると、コーンロウの男が指を鳴らして二者を振り返った。ニンジャスレイヤーは無言で頷いた。シルバーキーは男のアウトローめいた身なりを目で追っている。男の名はシバカリ。こめかみには六つのLAN端子が並ぶ。テンサイ級のハッカーである。 6

2011-12-01 12:44:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「聞かずにいられないんだけど、ネオサイタマでは、こういうのアレなの?」シルバーキーはシバカリの過剰なLAN端子増設を見ながら言った。「ノープ」シバカリはややバカにしたように肩を竦めた。「……」三人は地下駐車場の通路をエレベーターに向かって進む。時折、買い物客が車から乗降する。 7

2011-12-01 12:56:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

三人はエレベーター脇の警備員詰所のカーボンフスマの前に立った。ニンジャスレイヤーが目で合図した。シルバーキーは額に指を当て、目を閉じた。(アバババーッ!?)室内からくぐもった悲鳴が聴こえた。ニンジャスレイヤーはニンジャ握力でカーボンフスマのロックを音もなく破壊、引き開けた。 8

2011-12-01 13:27:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

警備員詰所の中には三人の警備員が口から泡とスシを吐き、机に突っ伏してのびている。アワレ、シルバーキーの精神攻撃を受け、なす術なく気絶。食事中だったようだ。「見回り中の奴はいない」シバカリが呟いた。ニンジャスレイヤーは手早く三人に猿轡を噛ませ、後ろ手に縛って部屋の隅へ追いやる。 9

2011-12-01 13:32:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イェップ」シバカリは椅子を奪い、重箱に残っていたスシをひとつ、掴んで口に放り込んだ。UNIXデッキはオンラインだ。「じゃあ、チャネルは俺が用意したmarunouchisugoitakai111144111、使い捨てな。入っておいて」「うむ」「そこのエスパーのアンタもだぜ」 10

2011-12-01 13:58:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「どうだ。オヌシの方は」「ああ。見えてる、ぜ」シルバーキーは瞬きした。「バッチリだ、おっかないナラク=サンが指し示す目標は相変わらず動いてない。そりゃそうか……ここからだと、ほぼ真下」「……」ニンジャスレイヤーの言葉をシルバーキーは遮る。「ビジネス。今更おかしな事言うなよ」11

2011-12-01 14:08:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「じゃ、グッドラックして」シバカリは欠伸して言った。卓上にカタカナで「マイコン」と書かれた小型のルーター装置を置き、そこに頭の六つの端子全てケーブル直結している。ルーターは極太のケーブルで侵入デッキに接続されている。「軍用施設じゃなくても違法は違法だし。タイムイズマネー」 12

2011-12-01 14:16:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「うむ」「……ウープス、何もナシでアンタらがスゴスゴ帰ってくるのが俺にとっても一番ラクだけど、それ無いみたい」背中に投げかけられるシバカリの言葉。「気をつけてね」「オヌシもな」二者は周囲に目を配りながら、エレベーターの前に立ち、ショウジ戸が開くや中に滑り込んだ。 13

2011-12-01 14:21:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

階数パネルには地下3階まで表示されている。上はこのエレベーターで22階まで上がれるが、今回は特に意味は無い。二人がパネルに触れずに待つと、自動的にエレベーターは急降下を開始。地下2階。地下3階。地下3階の点滅は続くが、下降は止まらない。シバカリが動かしているのだ。 14

2011-12-01 14:34:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シルバーキーの網膜、ナラクが指し示し続けるランドマーク。それすなわち、マルノウチ・スゴイタカイビルの地下であった。天を突く巨塔の……地下!あの惨劇の舞台の真下に、一体なにが待つのか?この禁忌めいて遠ざけられ隠匿された地下3階よりも下、エレベーターの行く先は? 15

2011-12-01 14:41:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼らの手には言わば、×印のついた地図だけがある。その×が意味するものは正確にはわからぬ。だがナラク・ニンジャは明確な意志を持って、これを指し示している。……ニンジャスレイヤーは横目でシルバーキーを見る。地獄への旅に、知り合って間もない第三者を巻き込む事になりはしないか。 16

2011-12-01 14:48:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

あのテンサイ級のハッカー、シバカリは、ナンシーのもとで考えあぐねる二者のもとへ、彼自身のほうからコンタクトを取ってきた。彼はナンシーに雇われ、遣わされた者だと自己紹介した。ナンシー自身で無ければ知り得ない情報を持っていた彼を、ニンジャスレイヤーは信じる事にした。 17

2011-12-01 14:54:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

||到着な||……IRC通信機にシバカリのノーティス有り。エレベーターが停止し「到着ドスエ」のマイコ音声。開かれた扉をくぐり、壁面をアルミシートで覆われた短い通路を抜けると、そこは……「ナムアミダブツ」シルバーキーが呟く。彼らは大仏殿めいた巨大な地下の空洞に立ったのである。 18

2011-12-01 15:16:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その巨大な空洞は、恐ろしき事に自然の穴では無い。壁には鉱山めいた補強が為されており、床もまたしかり、テンプルの庭のごとく、石が道のように敷かれ、前方の闇へ伸びる。彼らが前へ踏み出すと、ゴウランガ……道沿いに立つストーン・ランタンの火がひとりでに灯った。誘うように! 19

2011-12-01 15:42:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そして見るがいい。道の先にひときわ明るく照らし出されるのは、朽ちたトリイ・ゲート!そしてその先に鎮座する、シメナワが巻きつけられた御影石のオベリスクだ!「年代物ってもんじゃねえぞこれは!」シルバーキーがトリイ・ゲートを指差した。「見ろよ」 20

2011-12-01 15:48:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

はるか頭上のトリイ・ゲートには腐りかかった木の板がオフダめいて掲げられ、そこには毛筆カタカナで「ナラク」と確かに書かれている。見上げたフジキドの全身を、ぞっとする感覚が駆ける。ナラク!ここが、この封じられた空間が、かの邪悪な魂の神殿だというのか? 21

2011-12-01 15:53:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『フジキド!』「グワーッ!」フジキドは頭を抱えよろめく!『フジキド!よくぞやった!』「グワーッ!」フジキドは耐える。そして腰に吊ったヌンチャクの重みに慄く!神器が何らかの働きをして、ナラクの意識とチャネルを繋いでいるのか?『だが足らぬ!これ……で001010は11101』 22

2011-12-01 16:14:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「今の声、クソッ」シルバーキーが呻いた。彼にも聴こえているのだ。「おいアレだろ、あのオベリスク!」シルバーキーは目を細めた。「あれ……なンか、まるで、黄金太陽みたいな」ストーンランタンやトリイ・ゲートが陽炎めいてぼやける一方、シメナワの巻かれたオベリスクは銀色に光り始める! 23

2011-12-01 16:21:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ナラクよ!」フジキドは叫んだ。「この後どうする!道を示せ!」よろめきながら彼はオベリスクに到達した。地面に斜めに突き刺さった四角い立方体……銀色に輝いて……『0100とにか010く、100どうに010か0100せよ010!』「ヌウーッ!」彼はオベリスクのシメナワを掴んだ! 24

2011-12-01 16:25:43