ジェレミー・ブラック教授講演要旨
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12月2日に防衛研究所で行われた、ジェレミー・ブラック教授の講演「将来の戦争」についての要約です。
講演者ジェレミー・ブラック教授は英エクセター大学教授で、近代史・軍事史・外交史の研究家。著作は百冊以上。但し、軍事関連はほとんど邦訳されてないので原書で頑張れ → 著作アマゾンリンク
なお、本講演は著書の'War And The New Disorder In The 21st Century (Continuum Compact)'が下敷きになっている。
今日は防衛研究所にて、英エクセター大学のJeremy Black教授による将来の戦争についての講演に行ってきますた。氏によれば百冊以上の本を執筆されておりますが、邦訳されているのはごく僅かなので個人的に死ぬる → http://t.co/Rnrto23U via @
2011-12-02 21:18:20今日の防衛研究所でのジェレミー・ブラック教授(以下JB)の講演要旨。 JBが考える2つの紛争 ・国家内部の紛争。反乱鎮圧、反乱に起因する紛争 ・国家間の戦争、対称性を有する高度な軍システム同士の戦争 どちらが主流になるか、論壇では緊張をもって議論されている。
2011-12-02 22:36:52JBかく語りき(その2)。戦争の定義について。 戦争の法的な定義は不要であり、機能的定義をすべき。組織的な暴力の大規模な使用と定義している。これは国家でなくても戦争できるということ
2011-12-02 22:40:16JBその3。人口爆発が起き、国家内部でも大きな人口移動が起きる。スーパーシティと呼ばれる、これまでの大都市とは異なり、インフラもなく政府統治の弱い都市が誕生する。 例)カラチ
2011-12-02 22:43:39JB5。英国におけるシミュレーションだと、都市のスーパーに食料品が3日間無いと暴動により秩序が崩壊する。この想定すら楽観的に思える国がいくらでも存在する。これは最終的に国家間の戦争に発展しうる
2011-12-02 22:47:50JB6。水、食料、燃料が重要となり、この順番に暴力に訴えることは明らか。ナイル川、チグリス川等では水を巡る周辺国の争いがある。これらの為に、経済活動で世界の水を調整する必要がある
2011-12-02 22:49:52JB7。経済活動での水調整では脱塩が挙げられるが、それには燃料が必要。だが燃料コストは増大している。長期的には燃料コスト上昇からくる水供給不安で戦争が起きる可能性も
2011-12-02 22:52:09JB8。食料の入手可能性は(安全面をとりあえず置けば)遺伝子技術・クローン技術で上げることができるが、それは先進国のみ。人口が増大している国ではそれは難しい。また、食料生産には水が必要だが、水は不足している
2011-12-02 22:54:06JB9。燃料に関して、日英は輸入の必要があるのは明らか。燃費性能は改善しているが、それを考慮にいれても人口増加圧力を相殺できない。日本で人口増加はないが、世界の人口増加圧力から来る燃料需要の高まりは日本にも圧力としてくる
2011-12-02 22:56:24JB10。これまでは社会の調和や安定性に目をつぶってきて話をした。しかし、これら水・食料・燃料・雇用の争いにより、人々の調和や結束が乱れて秩序が崩壊する可能性がある。
2011-12-02 22:58:04JB11。この点に関し、日本は世界の典型から外れている。社会的結束や団結は日本に存在している。しかし、世界各国では宗教的・民族的繋がりがない場合がほとんど。ほとんどの国で立憲政治は60年程度の歴史しか無い
2011-12-02 23:00:00JB12。こうした国家で統治が上手くいかないことは、その国の問題にとどまらない。他国の介入が生じる。一国の問題が世界的な規模で重要な色彩を帯びてくる。 例)ニジェール
2011-12-02 23:01:29JB13。そのような側面が将来の戦争にどう影響するか。 世界の殆どの国は先進国における社会構造が基準と思い込んでいる。しかし、世界的な将来の戦争を考えると、圧倒的軍事力を持つアメリカは例外と見るべき。将来的には、マダガスカルのような国が基準になると考えている
2011-12-02 23:04:07JB14。良い指針となるのが南米。人口が多いが、1935年以降、一部の例外(フォークランド等)を除いて、国家間の戦争をほとんどしていない。そうした国でありながら、軍国化が進んだ大陸で、軍は社会的・文化的に大きな側面を持つ。これはコスタリカを除き、政権の左右を問わず同じ傾向にある
2011-12-02 23:06:44JB15。南米の将来を考えると、資源需要への圧力に政治が対応できないと軍が対応することになるのではないか。そこでは軍事的な政府が大きな役割を持つ。軍による国内の内乱や暴動対策が大きくなってくるのでは
2011-12-02 23:07:52JB16。国内の状況に目を向ける。アメリカを例にとると正規軍が米国民に介入するという例はほとんどなく、1965年が最後。現在も軍による政治介入は行われていない。ロス暴動でも州兵が導入され、国軍は投入されていない。
2011-12-02 23:09:06JB17。このようなアメリカの傾向は将来も続くだろう。911ではテロで潜在的な脅威に対処するのに、正規軍ではなく文民による国土安全保障省設立で対処した。日本もアメリカと同様だろう。しかし世界的に見ると、こうした国は例外で、インドのような国内の紛争に軍を投入している国がほとんど
2011-12-02 23:11:02JB18。インドでは、内部の圧力に国が対応するために軍を投入するのは今後も続く。アジアを考えると中国のような独裁的統治国は89年の反乱鎮圧で軍を使い、フィリピンのような民主主義国でも軍がでている。これは資源需要の問題でさらに悪化するだろう
2011-12-02 23:12:37JB19。翻って日米はどうか。少なくとも、北海道や九州、アラスカで反乱軍に手を焼くような事態は起きていない。日米は全く別の話になる
2011-12-02 23:13:48JB20。将来の戦争を考える上で、主要な国家での軍の役割を考えなくてはならない。国が軍に望む能力は対立における抑止力、そして衝突時の対処力が挙げられる。
2011-12-02 23:15:53JB21。20世紀の戦争は領土の占領により勝利する。将来の戦争は自分たちの意思を強制させることになる。ここで2つの指標が挙げられる。
2011-12-02 23:17:16JB22。 アウトプット:軍事的な成功を意味する。敵部隊の殲滅、領土の占領により成功とされる。 アウトカム:結果。ある国が、他の国に対して自分の意思に従わせることを成功とする。 そして、アウトプットの達成がアウトカムの成功につながるわけではない。
2011-12-02 23:18:06JB23。アウトカムを考えると、軍にどうした任務を与えるかを考えなければならない。アフガンに一定の秩序をもたらそうする任務は現実的ではなかった。将来もアウトカムの問題が引き続き見られるだろう
2011-12-02 23:19:28