丸山天寿先生の「映画に観る大和撫子」

「昔の日本映画には、ハリウッドにはない日本情緒(特に和服の着こなしの優美さ)があった気がする」
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丸山天寿 @tenjumaruyama

さて日曜日のお遊び。今年の流行語大賞は「なでしこジャパン」に決まったようだ。「なでしこ」は「やまとなでしこ」の事。可憐で繊細だが心の強い日本人女性の美称。私のような年寄りには深い憧れがある。そこで本日のお題は「映画に観る大和撫子」。若い方も是非一度、観賞されたい。文中敬称略→

2011-12-04 08:07:38
丸山天寿 @tenjumaruyama

「祇園囃子」-花街祇園で義理と人情に生きる芸者美代春(小暮美千代)と彼女の元に舞子志願でやって来る少女栄子(若尾文子)。どんな苦労も厭わないという栄子の面倒を引き受ける美代春。悩殺的な色気を持つ小暮と、透き通るような可憐さを持つ若尾の共演。二つのタイプの大和撫子が楽しめる。→

2011-12-04 08:09:01
丸山天寿 @tenjumaruyama

「近松物語」-宮中の使用人茂兵衛は師の後妻(香川京子)と不義密通の汚名を着せられ、やむなく逃避行に出るがいつしか両者に真実の愛が芽生える。捕われて刑に処せられる直前までの香川の愛の言葉が素晴らしい。さわやかで意思の強い香川の当たり役。他に南田洋子も美しく可憐な演技を見せている→

2011-12-04 08:11:02
丸山天寿 @tenjumaruyama

「山椒太夫」-安寿(香川京子)と厨子王の姉弟は人攫いの奴隷になるが、母との再会を夢見て苦しい生活を生き抜く。その母親役が「田中絹代」。彼女は松竹のドル箱スター。けぶるような目元をした美人で、母親役から娘役まで何でもこなした。他にも多数の出演作品があるが、私はこの作品が最も好き。→

2011-12-04 08:12:21
丸山天寿 @tenjumaruyama

「楊貴妃」-ご存じ玄宗皇帝の愛妾。私は多くの楊貴妃物をみたが、一番のお気に入りは1955年に発表された映画。楊貴妃を演じた京マチ子も美しいが、延春郡主役の杉村春子がとても素敵。演技派の彼女は中国美女を「大和撫子」風に見事にアレンジして演じてみせた。日本でも中国でも美女は美女。→

2011-12-04 08:14:30
丸山天寿 @tenjumaruyama

「雨月物語」-上田秋成の作品を溝口健二が幻想的に映画化。妖しく美しい女性達を「京マチ子」「水戸光子」が演じる。京マチ子は「羅生門」や「地獄変」にも出演した、芯の強さを押し隠した愛情を演じるのが巧い。水戸光子は清純役から汚れ役まで器用にこなす女優。二人の妖艶な姿に引き込まれる。→

2011-12-04 08:15:51
丸山天寿 @tenjumaruyama

「お遊さま」-若い骨董商はお見合い相手(音羽信子)ではなく、付き添いに来ていた未亡人で一児の母(田中絹代)に惹かれてしまう。それを知った音羽は二人の橋渡し役になる。こころ気高き三角関係に苦しむ音羽が哀れで美しい。宝塚では淡島千景と人気を二分した音羽の美しさにはただ見惚れるばかり→

2011-12-04 08:17:46
丸山天寿 @tenjumaruyama

「新平家物語」ー平清盛(市川雷蔵)は藤原時信の娘時子(久我美子)に強く惹かれる。来年の大河は清盛らしいが、この映画もスケールの大きさと女優の美しさは凄い。久我の立ち居振る舞いは平安貴族のように美しい。他に木暮美千代等、多くの美女が出て作品を盛り上げる。市川の出世作でもある。→

2011-12-04 08:19:53
丸山天寿 @tenjumaruyama

こうして思いつくまま書いてみたが、こりゃ全部溝口健二監督の作品だなぁ。黒澤明監督、小津安二郎監督と並び称された監督だから若い頃は懸命に観たものだ。昔の日本映画には、ハリウッドにはない日本情緒(特に和服の着こなしの優美さ)があった気がするが、私の回顧主義のたわごとかも知れない。了

2011-12-04 08:22:33