カース・オブ・エンシェント・カンジ、オア・ザ・シークレット・オブ・ダークニンジャ・ソウル #2

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

第2部「キョート殺伐都市」より 「カース・オブ・エンシェント・カンジ、オア・ザ・シークレット・オブ・ダークニンジャ・ソウル」#2

2011-12-03 21:48:42
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目的のピラミッドまであとわずか1キロ弱というところで、ベンチャー冒険企業マレニミル社のセスナは撃墜され、右翼から黒い煙を吹き出しながらエジプト砂漠の熱砂へと不時着した。 1

2011-12-03 21:55:11
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セスナに乗り込んでいたホソダ社長、唯一の社員であるフジオ・カタクラ、傭兵として雇ったフリーランス・ヤクザのデグチ、そして現地ガイドのアズラットは、素早くクリーム色のセスナ機の陰に隠れた。アズラット以外の3人は拳銃を抜く。セスナの機体は、ベーコンが焼けそうなほど熱されていた。 2

2011-12-03 22:05:26
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200メートル先の砂丘の稜線から姿を現したのは、黒いローブに身を包み黒馬にまたがった、謎のエジプト人の一団であった。コワイ!全員が口々に何かを叫び、円月刀を掲げてセスナへ迫ってくる!「アイエエエエエ!何て言ってる?!」ホソダ社長が叫ぶ。「殺すそうです!コワイ!」とアズラット。 3

2011-12-03 22:15:38
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「どうすんだ、社長?」黒いヤクザスーツに身を包んだデグチが、分厚いサングラスに陽光を反射させながら聞く。何度も死線を潜り抜けてきた傭兵ならではの冷静さである。「迎撃しましょう」とフジオ。「やるしかあるまいな」ホソダも頷いた「奴らは恐らく、古代ニンジャ文明の秘密を守るカルトだ」 4

2011-12-03 22:25:07
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「ザッケンナコラー!」鎖を解かれた狂犬のように、デグチは破損していない左翼に飛び乗ってオートマチック・ヤクザガンを連射する。「グワーッ!」「アイエエエ!」カルティストらは次々と体を撃ちぬかれ即死!フジオとホソダは機体の陰から慣れない拳銃で応戦し、アズラットは恐怖に震えていた。 5

2011-12-03 22:32:26
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敵は十数騎。左右に別れ、セスナの裏側へ回り込もうとしている。拳銃を握るフジオの手に、嫌な汗が滲んだ。マレニミル社の実態は、ほとんど違法行為を繰り返すトレジャーハンターである。マヤ、カッパドキア、死海、デスバレー……数々の危険を経験してきたが、今回のそれは明らかに桁外れだった。 6

2011-12-03 22:45:13
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「来るぞ、フジオ君!君が左、私が右だ!」タフネスが服を着たような、イノシシめいた体格のホソダも、これまでになく異常興奮している。「解ってますよ、社長!」フジオは銃を構え直した。……俺には使命がある。死んでなるものか。背中に刻まれたエンシェント・カンジが俺を導く限りは……! 7

2011-12-03 22:57:23
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…数分後。砂漠にはカルティストと馬の死体がいくつも転がり、どす黒い血が砂に染みこんでいた。ハゲタカたちがどこからともなく飛来し、上空を旋回する。ホソダ、フジオ、デグチの3名はいささかの刀傷を負いながらも、襲撃者を皆殺しにしたのだ。アズラットは無傷だが、精神が悲鳴をあげていた。 8

2011-12-03 23:05:12
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「アイエエエ……アイエエエ……」アズラットはオハギのように丸まって失禁し、神に祈り続けている。「急ごう、敵の増援が来るやもしれん」とホソダ。「無理です、私は帰りたい!」アズラットは絶叫した「私は彼らが死に際に喋った古い言葉を聞いたのです!その中に、ニンジャというフレーズが!」 9

2011-12-03 23:08:43
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「ニンジャリアリティ・ショック…」ホソダ社長はかぶりをふった。このエジプト人の中に築かれた世界史観が、真の歴史、すなわち古代ニンジャ文明の痕跡により破壊されようとしているのだ。錯乱の可能性もある、危険な状態である。「置いていこう。フジオ君、彼の水をセスナに残しておくように」 10

2011-12-03 23:15:50
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「了解」フジオはホソダ社長の指示通り、セスナから食料や水、ノートUNIX、遺跡調査機具などを3人分の冒険リュックに詰め込んでいた。有能な助手だ。ホソダは彼方のピラミッドを見据える。デグチは頬から血を流しながらも平然とした顔で、セスナの日陰に座って四本指で煙草を吹かしていた。 11

2011-12-03 23:26:18
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熱砂の広野を、サファリ服姿の冒険家2人とヤクザ1人が歩む。観光客もエジプト考古学調査隊すらも訪れない、打ち捨てられた崩落ピラミッドに向かって。「社長、9人殺したからな、9百万円だ」デグチが煙草を吐き捨てながら言う。「もちろんだ」先頭を歩くホソダは、想定外の出費に顔を歪めた。 12

2011-12-03 23:33:08
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マレニミル社は、ネオサイタマ大学のウミノ考古学研究室で助手をしていたホソダが、5年前にアカデミズムの世界を飛び出して興したベンチャー企業である。古代ニンジャ文明説が、考古学会で嘲笑の的となったことがきっかけであった。同研究室にいたフジオも、この時に大学を中退し社員となった。 13

2011-12-03 23:46:15
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3人は既に、ピラミッドの落とす大きな影の下に入っている。別世界のような涼しさだ。「入口の方向はどっちだ?」ホソダは後ろを振り向き、フジオに質問した。「やや左手です」フジオは歩きながらノートUNIXを開き、冷静に、無表情に返す。ホソダは改めて、不気味な男だ、と心の中で呟いた。 14

2011-12-03 23:54:19
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共に行動し5年になるが、ホソダ社長は未だにこのフジオ・カタクラという若者の性格を掴めずにいた。多くの考古学者は、歴史的発見へ近づくと、鼻息を荒げ興奮するものだ……ホソダ自身のように。だが、フジオにはその様子が無い。あまりにも淡々としており、情熱的喜びを一切感じさせないのだ。 15

2011-12-03 23:58:33
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「いよいよだぞぉ、フジオ君」ホソダは少し歩を遅め、エネルギッシュな笑みを浮かべてフジオに語りかけた「いよいよ古代ニンジャ文明の秘密が明かされる……時価数十億の大量の財宝とともに」。「はい、いよいよですね」サファリ帽から漏れる灰色の前髪の下で、ハガネ色の瞳が作り笑いを作った。 16

2011-12-04 00:06:17
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フジオ・カタクラは人間らしい感情を持っていた。ただそれを表向きに表現するのが、あまり得意でなかっただけだ。彼は実際、研究者として深い知識を持つウミノを尊敬していたし、ホソダの情熱や俗っぽいバイタリティを心強いと思っていた。ホソダがいなければ、自分はこの地にいないのだから。 17

2011-12-04 00:18:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「座標よし、この壁の向こうに通路が」フジオはピラミッドの壁に小型ドリルで穴を空け、手馴れた様子でダイナマイトを詰め込んでゆく。歴史的文化財へのリスペクトは無い。「へっ、ヤクザの俺が言うのも何だが、あんたらいつも、荒っぽいよな」デグチは銃の手入れをしながら皮肉めかして言った。 18

2011-12-04 00:41:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

カブーーーーム!硝煙が晴れると、そこには数千年の秘密を孕んだ石造りの通路が姿を現す。回廊の入口を守るように、両脇にはアブシンベル大神殿のファラオ座像めいた高さ2メートルの石像4個が並んでいた。だが、おお……ナムアミダブツ!それらの顔は、ニンジャ頭巾によって隠されていたのだ! 19

2011-12-04 00:55:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

カブーーーーム!硝煙が晴れると、そこには数千年の秘密を孕んだ石造りの通路が姿を現す。回廊の入口を守るように、両脇にはアブシンベル大神殿のファラオ座像めいた高さ2メートルの石像4個が並んでいた。だが、おお……ナムアミダブツ!それらの顔は、ニンジャ頭巾によって隠されていたのだ! 19

2011-12-04 21:29:59
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「おお……ブッダ……恐ろしい……何たる背徳的な光景だ……」ホソダ社長はサングラスを外し、興奮と緊張を隠せないように手を軽く震わせた。「なあ……」そしてフジオを振り返る。そこには、4体のニンジャ坐像を前に呆然と立ち尽くす助手の姿があった。「おい……!フジオ君!フジオ君!?」 20 

2011-12-04 21:34:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナムアミダブツ!確かに目の前に広がるのは常人を狂気へと誘う光景だ。だが、長年ニンジャ文明を研究してきたフジオが、本当にこの程度でニンジャリアリティ・ショックを起こしてしまうものなのか?……否。彼の背中の漢字が激しく疼き、フジオの意識を遠い昔のトラウマへと誘ったのである…… 21

2011-12-04 21:38:48