「全体主義体制」という概念は時代遅れ?--與那覇潤氏の著書から

『中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史 』(與那覇潤)http://www.amazon.co.jp/dp/4163746900 の記述から「左右の全体主義体制」という用語について「もう現代では使われない概念」といった指摘・意見が出されました。それについてのさまざまな説明です(つぶやきの採集範囲が不十分かもしれませんので、気づいたら補足をお願いします)
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トトロフ @totoro_spitfire

@yama0117 こんばんは。面白い本を見つけたのでお勧めします。『中国化する日本』文藝春秋。僕の日本史観に近いです。世界史的文脈に日本を位置付け、啓蒙書の体裁をとってます。http://t.co/JEDYkPi4 ここで1章まで読めます。ただ日本史好きは腹を立てるやも。

2011-11-20 16:46:41
トトロフ @totoro_spitfire

@yama0117 所々見受けられる煽りに吹きながら読みました。ついでなんですが、ウィトゲンシュタインの解説書なら、哲学のエッセンスシリーズより講談社の現代思想の冒険者たちシリーズの方を推します。あと、やまさんがレーヴィット好きでしたっけ?

2011-11-20 17:24:07
トトロフ @totoro_spitfire

@jyonaha (承前)③最後に、ソ連史を研究している立場からですが、現在、ソ連(及びドイツ)を全体主義体制として捉える観点(特にp172~p180)は、世界規模で完全に時代遅れorナンセンスとして見られています。また、「社会主義」という言葉もかなり曖昧すぎる気がします。(続く

2011-11-22 19:32:19
トトロフ @totoro_spitfire

@jyonaha (承前)尤も日本において出版されるソ連関係の本は概ね「全体主義モデル」に基づいて書かれる為、仕方が無いのかもしれません。(「てかソ連って何?」には爆笑しました。)あと、もう一点だけ、「中国化」と「グローバリゼーション」とはどう異なるのかが気になります。(続く

2011-11-22 19:35:13
トトロフ @totoro_spitfire

@jyonaha (承前)以上3点(+おまけ1点)を差し引いても一般書でこのような本が出たことは、価値のあることで、大変喜ばしいことではないかと思います。面白い本ありがとうございます。各方面からかなりの批判・罵倒・非難があるかもしれませんが、私は與那覇先生を応援しております。

2011-11-22 19:37:05
與那覇潤(Yonaha Jun) @jyonaha

@totoro_spitfire 長文の丁寧なご批判、ありがとうございます。2.はまぁネタが半分ですが、1.は難問ですね。ゲルナーのナショナリズム論ではないですが、ある種の「共同体」形成作用を持つ産業資本主義を経由せずに、中国は市場経済化したから、という辺りが暫定的な解でしょうか

2011-11-22 23:16:42
與那覇潤(Yonaha Jun) @jyonaha

@totoro_spitfire 全体主義概念はもう古い、は「100%完璧な収容所的管理社会はない(どこかに必ず穴がある)」的なニュアンスでOKでしょうか。トラヴェルソ『全体主義』など読んだものの、プロでないので詳しくないですが…。やはり西洋史的には甘い個所が拙著はありそうです。

2011-11-22 23:20:55
トトロフ @totoro_spitfire

@jyonaha そうですね。グローバル・ヒストリーという枠組みは世界はグローバリゼーションへ向かっているというのが前提になっていますから、始動因を考察するのは困難だと思います(目的論的だという批判もあります)。ブローデルの『歴史入門』は別の視点から切り込んでて面白いと思います。

2011-11-24 21:25:11
トトロフ @totoro_spitfire

@jyonaha 大体そんなニュアンスです。全体主義という用語は非常に政治的な用語なので、使うことは少ないです。近年ドイツ史とソ連史の学者が”Beyond the Totalitarianism”なる本を書いているので参考にすると面白いと思います。(続く

2011-11-24 21:27:58
トトロフ @totoro_spitfire

@jyonaha (承前)例えば、収容所ひとつとってみても、政治犯を収容するものと、一般的な犯罪者を収容するものとあるわけで、そのありかたも多様なわけで、ある見方をすれば、WW2中のアメリカも日本人収容所があるから全体主義的だという言い方もできてしまうわけです。(続く

2011-11-24 21:29:42
與那覇潤(Yonaha Jun) @jyonaha

@totoro_spitfire 諸々ありがとうございます。いわゆる「現存した社会主義」、興味はあるのですが、なかなか勉強する時間がなく…。尤も「権威主義」と呼んでしまうとかなりライトなものまで含んじゃうので、よい新概念がまだないのですかね。機会がありましたら今後もご教示ください

2011-11-24 23:42:35
トトロフ @totoro_spitfire

@jyonaha いえいえこちらこそ、まだまだ修士のひよっこですので…。確かソ連に関しては塩川先生が色々書いていたと思います。『ソ連とは何だったか』(勁草書房、1993年)等。石井先生は独・ソ・伊の政治体制を「〈党=国家〉体制」と呼んでます。ソ連が独・伊のモデルだったみたいです。

2011-11-25 02:54:51
トトロフ @totoro_spitfire

『中国化する日本』、山本七平の頃と違って、日本が危機を、転機を迎えているからこそ、今度こそマトモに受け取って貰えそうな気がする。でも、あまりにも遅すぎた。日本人の日本大好き病はかなりのものだし、この今の時期でもマジギレする奴は多そう。

2011-11-25 04:39:01
トトロフ @totoro_spitfire

@jyonaha ちなみに、中国国民党もソ連共産党の党組織をかなり参考にしているらしいです。蒋介石もソ連に留学しているので。

2011-11-25 20:25:04
與那覇潤(Yonaha Jun) @jyonaha

@tsukatetsu @totoro_spitfire ふむふむ、どうもです。「党が国家を所有する」系譜は、一度「社会主義か反共か」の色眼鏡を外して見てみる必要がありますね。拙著の「儒教的には正しい論理は一つ」とかもその辺を意識はしているのですが、うまく掘り下げられていません…

2011-11-25 23:25:15
與那覇潤(Yonaha Jun) @jyonaha

【速報】 拙著、増刷が決定…!ありがとうございます、みなさまのおかげです。そして、「修正希望は16:00が〆切」と申し渡されたので、いったん離脱してお仕事専念モードに入ります。期間限定の50ページ立ち読みはこちらから⇒ http://t.co/qDlxLVyU

2011-11-28 11:48:26
與那覇潤(Yonaha Jun) @jyonaha

増刷時修正、WW2の独伊ソを「左右いずれかの全体主義体制」と書いたのを @totoro_spitfire さんに専門家はもうそう言わないと指摘されたので直そうと思うのだが、はて、どうしたものかな。「一党支配体制」だと自民党とかまで入りそうな気もしちゃうが、「独裁政治」とかもねぇ…

2011-11-28 13:01:50
與那覇潤(Yonaha Jun) @jyonaha

…「全体主義と呼ばれた一党支配体制」とかが無難かなぁ、当時呼ばれたのは史実だし。>「左右いずれかの全体主義体制」の代替案。Wikiには「一党独裁制」で項が立っているが、 http://t.co/eWaAmugf これってほんまに政治学でも言うのかな。価値観が強く出てる気もするが…

2011-11-28 13:04:18
トトロフ @totoro_spitfire

@jyonaha @kotekotedylan 一党制では自民党は含まれません。一党制というのは、国家と党が一体であって、党が一つしか存在しないことが前提です。

2011-11-28 21:44:31
Gryphon(INVISIBLE暫定的再起動 m-dojo) @gryphonjapan

ふう見つかった。1週前の話題で恐縮ですが「全体主義体制」概念は今は学問的にナンセンス、というのは、結局何ゆえそうなったのでしょうか。独ソ体制の共通性より差異のほうが大きい、とか選挙から生まれたか否かでしょうか?ご教示あれば幸い@totoro_spitfire @jyonaha

2011-12-05 22:12:33
Daisuke Tano @tanosensei

@gryphonjapan @totoro_spitfire @jyonaha ドイツ現代史に限っていえば、ナチ体制も案外一枚岩ではなく、一挙手一投足に至るまで統制されていたわけではないと明らかにされたことが大きいと思います。

2011-12-05 22:43:25
トトロフ @totoro_spitfire

@tanosensei @gryphonjapan @jyonaha ソ連史についてですが、ナチス・ドイツ同様、統制が十分でなかったことです。例えば、全体主義国家だったとするならば、第二経済や地下出版を説明できません。また、全体主義は政治色の強い用語だったっということもあります。

2011-12-06 06:37:31
トトロフ @totoro_spitfire

@tanosensei @gryphonjapan @jyonaha さらに、独ソの比較で言えば、両国間の国家による暴力には目的にも性質にもかなり差異があります。ある研究者によればドイツは「帝国的」であって、ソ連は「開発独裁的」で、両者を一括するのには問題があります。

2011-12-06 06:39:14
與那覇潤(Yonaha Jun) @jyonaha

勉強になる議論どうもです。全体主義という語法自体に、「共産主義って理想家ぶってるけどナチズムと同類」という反共的ニュアンスが強い時期があったのかも。トラヴェルソ『全体主義』など面白かったです。 @totoro_spitfire @tanosensei @gryphonjapan

2011-12-06 08:32:48
トトロフ @totoro_spitfire

@jyonaha @tanosensei @gryphonjapan ちなみに、翻訳版の『全体主義』ではトラヴェルソが時期に合わせて章立てしているのですが、原著ではさらに、各時代の全体主義に関する主要な論文(ムッソリーニから現代の歴史学者まで)が掲載されていて、かなりオトクです。

2011-12-06 08:42:48