2011年12月9日

日本の不登校概念の歴史的変遷について~decostatwさんによる

@decostatwさんによる不登校概念の歴史的変遷に関する連続ツイート ●関連 ひきこもり支援と発達障害の特性 http://togetter.com/li/229353
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decostatw @decostatw

風邪により校務を免除されたので,今日は不登校概念の歴史的変遷について,ちょっと書いてみようかなと思います。見てきたわけじゃありませんから,抜けている所もあるでしょうし,事実誤認もあるかもしれませんが,まぁひとまず書いてみます。

2011-12-09 12:08:28
切り取り線 @kiri_tori

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2011-12-09 12:00:10
decostatw @decostatw

不登校school non-attendance / school absenteeismは,従来,怠学や学校恐怖症,登校拒否などと呼ばれていた状態像を包括する概念で,ここに至るまで,ほんとうに様々な歴史的経緯があったようですね。訳あって,それを以前調べたことがありました。

2011-12-09 12:10:37
decostatw @decostatw

ちなみに文科省による不登校の定義は「何らかの心理的,情緒的,身体的あるいは社会的要因・背景により登校しないあるいはしたくともできない状況にあるため,年間30日以上欠席した者のうち,病気や経済的な理由による者を除いたもの」というものです。

2011-12-09 12:11:21
decostatw @decostatw

Broadwin(1932)は,従来から指摘されていた非行を伴う怠学者のなかに,神経症的な性質を持つ者がいることを発見しました。さらにその数年後,Partridge(1939)が多数の事例から同様の指摘をしています。

2011-12-09 12:13:52
decostatw @decostatw

さらにJohnson(1941)は,大きな不安を伴い,学校の欠席という深刻な状態に至る一群があることを指摘しました。これを怠学と区別し,学校恐怖症と名付けたわけです。その背景には,児童の急性的な不安や,親の不安,親子間の依存関係があると考え,こうした考えを分離不安説と呼びました。

2011-12-09 12:14:41
decostatw @decostatw

Johnsonは学教恐怖症を症候群とみなしていて,ヒステリーや強迫神経症との類似性を指摘しています。この考えは,第二次大戦後,KleinやWarrenによる精神分析的な立場からの支持を獲得,さらに50~60年代のアメリカの児童精神医学やその周辺領域でも熱心に研究されたそうです。

2011-12-09 12:15:57
decostatw @decostatw

ただし,Kleinは「学校ぎらいreluctance to go to school」,Warrenは「登校拒否school refusal」という用語を用い,学校恐怖症school phobiaという用語の使用は保留としました。

2011-12-09 12:18:21
decostatw @decostatw

Johnson自身も1957年に,恐怖症というよりもむしろ分離不安によるものだとの考えから,学校恐怖症という用語は誤りだったとしています。

2011-12-09 12:19:39
decostatw @decostatw

このように,背景の病理を踏まえた概念設定が重視されたわけですが,その結果,自分なりの定義を主張する研究者が多く現われました。Waldfogelら(1957)は学校のある側面にたいする病的な恐れを,Eisenberg(1950)は学校のある側面への不合理な不安を,特徴に挙げました。

2011-12-09 12:20:56
decostatw @decostatw

さらにChotinerとForrest(1974)は学校恐怖症を深刻な感情的問題の顕れであると指摘し,Lasserら(1973)は家から離れることへの不安の顕れだとしました。Weiner(1970)は,広く「心理的理由で学校にいけない状態」と定義し,その重症度に着目しています。

2011-12-09 12:23:52
decostatw @decostatw

これらの定義は,主に不安や恐怖といった感情的問題という病理的観点から,学校に行けないという現象を理解しようとしたものだと言えるんじゃないかなと思います。

2011-12-09 12:25:45
decostatw @decostatw

日本でこの種の問題が熱心に扱われ始めたのは50年代半頃だそうです。高木(1959)は京都市の長欠児童に対して調査を行い,典型的な学校恐怖症とみなせる児童が存在することを明らかにしました。同時期,佐藤(1959)も「神経症的登校拒否」の研究を発表しています。

2011-12-09 12:28:03
decostatw @decostatw

とないえ,戦前にも長欠児童の精神医学的特徴を調べた研究報告はありました。けっこう興味深い資料でしたが,今その資料が手元に無い…。

2011-12-09 12:29:08
decostatw @decostatw

国立精神衛生研究所も,1960年,こうした問題に対して分離不安説からアプローチした研究を発表しました。これらを足がかりとして,1970年代以降,学校恐怖症の研究は急激に増加していきました。その中で,典型的な学校恐怖症は,当初考えられていたよりも割合的に少ないことが指摘されました。

2011-12-09 12:32:04
decostatw @decostatw

この頃,児童本人の感情的問題だけでなく,学校での友人関係や教師との関係,教育内容や方法とのミスマッチ,学級運営といった学校側の要因にも注目が集まるようになりました。その結果,背景を恐怖という個人内の問題に限定しない「登校拒否」という用語が一般に用いられるようになったそうです。

2011-12-09 12:33:42
decostatw @decostatw

これについて鑪(1989)は,「『恐怖症』という精神病理学的イメージを避け,もっと一般的な不適応行動としてとらえ,関わっていこうという風潮の表れだったかもしれない」と考察しています。まぁ定義を拡大し,より多様な状態像を包括するものになった,とも言えるでしょう。

2011-12-09 12:36:39
decostatw @decostatw

こうした風潮に先立って,高木(1963)は「両親の勧めにもかかわらず,心理的事由で子どもが学校に行くことを拒む状態」のことを登校拒否と呼びました。拒む,という行動的特徴に焦点が当たっています。学校恐怖症が背景の病理に着目したものだったのと比較すると,より広い定義だとわかります。

2011-12-09 12:43:04
decostatw @decostatw

一方,梅垣(1978)は,登校刺激への「すくみ反応」や,様々な身体的・精神的症状を呈する者を登校拒否の「中核群」とする考えを提案しました。その他の者は辺縁群と呼ばれます。すくみ反応の有無で区別するという点で,登校拒否を細分化させたものとも言えるでしょう。

2011-12-09 12:45:22
decostatw @decostatw

なお,すくみ反応とは,児童が登校刺激に対して示す敏感な感情的反応(不安,行動化傾向,身体愁訴など)を指しています。これが査定もしくは診断のポイントになる,というわけですね。

2011-12-09 12:47:16
decostatw @decostatw

1980年には小林による「登校拒否症について」という論文が発表されました。ここでは,「客観的には通学可能な状況下にありながら,児童自身の行動・情緒的問題,彼と環境との相互作用上の問題など,主として心理的原因により登校不能の状態にあること」という定義がされています。

2011-12-09 12:49:19
decostatw @decostatw

さらに,行動主義的な観点から「家庭-学校-家庭という往復パターンが家庭で停滞し,断続してしまった状態」とも定義していて,学校が嫌悪刺激となり,登校拒否とはすなわち回避行動なのだ,という考えが提示されています。シンプルで大変わかりやすい。

2011-12-09 12:52:55
decostatw @decostatw

日本で不登校という用語が大々的に用いられるようになったのは,1980年代に入ってからです。登校拒否という用語は反学校的な響きを持つため,逸脱した問題行動であると認識されやすいが,不登校はそうした価値判断を伴わないのではないか,という意見もあります(森田, 1991)。

2011-12-09 12:55:37
decostatw @decostatw

文科省が不登校という用語を採用したのは1990年で(「登校拒否(不登校)」),登校拒否はどの子にも起こりうるものであるという見解を,この時に打ち出したようです。その1年前,法務省人権擁護局も,登校拒否という用語は現実にそぐわないとして,不登校に関する独自の定義を行なっています。

2011-12-09 12:58:44
decostatw @decostatw

曰く「何らかの心理的・環境的要因によって,登校しないか,登校したくてもできない状態」。発生や維持に関わる要因を特定していません。少し遡ると和田(1972)や清水(1979)による不登校の定義なんてのもあるわけですが,ここでも背景までは特定していません。

2011-12-09 13:01:34
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