ソウル・フラワー・ユニオン中川敬さんの「男はつらいよ」140字映評

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『男はつらいよ・翔んでる寅次郎』観了。マドンナ桃井かおりの第二十三作。寅が恋愛指南役に収まる様式も確立され、観る側もそういうものだと割り切り観るのがこの時期の作風。とはいえ、寅が常に他者の幸福の為に駆け回り、泣き笑う姿は胸を打つ。本作なら最終章の結婚式シーン。満男作文騒動も秀逸。

2011-12-01 00:36:03
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『男はつらいよ・寅次郎春の夢』観了。米白人の薬売りがとらやに下宿し、さくらに惚れたり、寅と行商人同士心通わせたりと、国際的でスクリューボールな第二十四作。とらやの人々に洋の東西文化論を語らせ、結果、人種差異を越えて下々の者はつらいよともっていく、山田洋次ならではの爽快な人情喜劇。

2011-12-01 23:04:56
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『男はつらいよ・寅次郎ハイビスカスの花』観了。リリー三度目登場の第二十五作は、寅の恋の終着点を暗示し、気をもませながら、甘美で哀切極める二人の心緒沁みる中期決定版。那覇の病院で寅がリリーの口に佃煮を運ぶシーン、リリーが「白浜節」を歌うシーン、そして勿論大団円は、連作屈指の名場面。

2011-12-03 22:11:41
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『男はつらいよ・寅次郎かもめ歌』観了。寅にとって庇護すべき娘的存在として描かれるマドンナ伊藤蘭出演の第二十六作。さくらの新居。江差追分。テキヤ仲間の死。奥尻島への墓参り。葛飾定時制高校…。挿話は流麗に流れ、観る者は寅と同化し、すみれの幸せを心より願う。「寅の願書」シーンにホロリ。

2011-12-04 01:05:21
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『男はつらいよ・浪花の恋の寅次郎』観了。上方芸人の活力迸る、大阪舞台の第二十七作。松坂慶子演じる芸者ふみとの出逢いは、寅にとって久々の本物の恋。さくらの「お兄ちゃん、余程好きだったのね、あの人が」という台詞もいつ以来か。結局逃げる寅はいつものことだが、男女の機微、哀感沁みる一篇。

2011-12-05 01:08:22
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『男はつらいよ・寅次郎紙風船』観了。余命幾許もないテキヤ仲間(小沢昭一)と交した約束から始まる、マドンナ音無美紀子への恋慕を描く第二十八作。同窓会の東八郎との騒動、フーテン娘・岸本加代子との旅、寅の就職活動等、挿話満載だが、マドンナへの恋愛度は低調で、悲愁が全面に漂う過渡期作。

2011-12-13 02:03:20
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『男はつらいよ・寅次郎あじさいの恋』観了。寅がマドンナいしだあゆみに秋波を送られるという、連作中空前絶後の展開はらむ第二十九作。情念を感知し合う二人の夜の心理描写は連作中屈指の名場面なのだが、寅の性の限界を否応なく見せつけられる鎌倉デート騒動が、お約束だが、絶望的に切なく哀しい。

2011-12-14 00:13:40
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『男はつらいよ・花も嵐も寅次郎』観了。寅が我が思いをひた隠し、マドンナ田中裕子と口下手青年沢田研二の恋愛指南役に徹する第三十作。寅の恋愛度は下がる一方にみえる今作だが、縁側の二人の名シーンから滲む寅の恋愛道に、連作を貫く寅の哀切極まる深い孤独をみる。前作同様、連作の分水嶺的作品。

2011-12-15 03:00:50
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『男はつらいよ・旅と女と寅次郎』観了。寅次郎が旅の道中に、失踪中の人気歌手と出逢い、二人、佐渡島へ渡り、意気投合するという筋書きの第三十一作。マドンナ役に都はるみ抜擢は、大ファンである渥美清の提案で実現。展開するのは、いつもの寅次郎失恋物語だが、心なしか楽しそうな渥美やんである。

2011-12-15 23:44:38
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柴又「とらや」にて、天麩羅蕎麦。店のお姉ちゃんに、「男はつらいよ」第四作目まで店が撮影で使われていた話など、諸々を聞く。 http://t.co/ZpN9SnLl

2011-12-19 17:39:41
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『男はつらいよ・口笛を吹く寅次郎』観了。離婚して実家・寺に帰っている竹下景子に惚れ、ひょんなことから納所坊主として僧侶の仕事に付く、寅、出家騒動の第三十二作。法話も寅にかかれば啖呵売。とらやと旅先の絡みも絶妙で、全篇笑いに満ち、二人の相性も抜群。リリー連作に並ぶ傑作認定をここに。

2011-12-24 00:22:18
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『男はつらいよ・夜霧にむせぶ寅次郎』観了。訳ありマドンナの系譜にある第三十三作。フーテン気質の中原理恵と寅の旅中の意気投合はいつも通りだが、善意に満ちた寅の(山田洋次の)結婚幸福論が凱歌では辛い。渡瀬演じるバイク乗りの演出も痛いが、何より今作、異なる価値観同士の葛藤が希薄なのだ。

2011-12-24 23:14:51
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『男はつらいよ・寅次郎真実一路』観了。蒸発する証券マンの妻役に大原麗子起用(二度目)の、寅版『無法松の一生』ともいえる第三十四作。前作同様、葛藤なき安易な道徳的裁断が散見され、とらやの金庫に手を付ける寅の場面に至っては連作の低調を感じずにはいられない。が、廃線駅舎の最終章は流石。

2011-12-25 23:30:25
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『男はつらいよ・寅次郎恋愛塾』観了。寅次郎、顔で笑って心で泣いてと恋愛指南役に徹する、マドンナ樋口可南子主演の第三十五作。久しぶりに、寅の滑らかに躍動する口舌、活きのいい身ごなしを拝め、近作の低調を吹っ切った感。とらや幸福談義に満男も参加、渥美の旧友関敬六大活躍の、悠々たる佳作。

2011-12-27 00:54:59
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『男はつらいよ・柴又より愛をこめて』観了。『二十四の瞳』をもじった、島の女先生役栗原小巻マドンナ(二度目)の第三十六作。山田洋次は第二十九作頃から渥美の体の変調に気付き、時に芝居が弾まない、と後に漏らすが、美保純の副次的挿話に頼る脚本がその辺を示しているのかも知れない。やや低調。

2011-12-27 22:10:00
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『男はつらいよ・幸福の青い鳥』観了。第八作以来しばしば寅と道中を共にする坂東鶴八郎一座の花形・大空小百合役を志保美悦子が演じる第三十七作。前半の再会の設定、筑豊の炭住の描写に、否応なく期待は高まるが、お粗末な長渕剛の演技、それを許した山田洋次の演出に、この時期の低調を改めて思う。

2011-12-30 00:33:00
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『男はつらいよ・知床慕情』観了。マドンナ役二度目の竹下景子、そして何より三船敏郎と淡路恵子の圧倒的存在感が嬉しい格調高き第三十八作。後期の双璧たる第三十二作同様、渥美と竹下の相性の良さは抜群、寅一日店主騒動、三船告白騒動等、見所満載の、笑いと感動の一編。やはり映画は役者で決まる!

2011-12-31 02:44:07
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『男はつらいよ・寅次郎物語』観了。寅とテキヤ仲間の遺児の、母親探しの子連れ旅を描いた異色の第三十九作。旅先でのマドンナ秋吉久美子との家族ごっこ、要所に映える人情の機微、端役ベテラン勢の話芸、頭角現す満男の存在感等々、低恋愛度ながらも、寅の義侠心に光を当てた、連作の哲理に迫る佳作。

2012-01-01 23:44:00
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『男はつらいよ・寅次郎サラダ記念日』観了。俵万智の句を随所に散りばめた、三田佳子マドンナの第四十作。人生の末期に向き合うという荘重な命題を通奏低音に、大学講義騒動、電話百円玉騒動等の喜劇が絶妙に配置され、哀切極まりない敵前逃亡ですら心地良い余韻を醸す。山田洋次、円熟の妙技である。

2012-01-03 03:37:32
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『男はつらいよ・寅次郎心の旅路』観了。連作唯一の異国ロケ、ウィーン舞台の第四十一作。何とも不調和な寅と欧州観光だが、「どこの川の流れも同じ。流れ流れてどこかの海に注ぐんだろ?」とドナウ川を江戸川に見立て、牧師に「御前様〜」と話しかける寅の、洋の東西問わぬ人情の普遍が本作のかなめ。

2012-01-05 00:23:14
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『男はつらいよ・ぼくの伯父さん』観了。体調不良の渥美の出番を減らすべく、寅が甥・満男の恋愛指南役となり後景に退く、ゴクミ・シリーズ第一弾の第四十二作。満男の恋、初旅、世代間の葛藤が主旋律で、恋のない寅は寂しくもあるが、満男の成長を見守る柴又の群像に連作の力強い声明をみるのである。

2012-01-05 03:56:31
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『男はつらいよ・寅次郎の休日』観了。前作に続き、満男と泉の青春を描く、ゴクミ・シリーズ第二弾の第四十三作。寅の出番は減り、芝居自体の躍動感にも翳りがみえるが、寅のアリアは至って健在、叔父と甥の奇妙な連帯がいい。寅が満男に発する「行け、青年!」の台詞こそが連作四十番台の主題なのだ。

2012-01-05 22:18:20
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『男はつらいよ・寅次郎の告白』観了。ゴクミ・シリーズ第三弾の第四十四作。泉と満男と寅の珍道中という新様式は確立されたが、如何せん渥美の芝居が弾まない。早くも第二十九作で山田洋次は渥美の体調の異変を嗅ぎ取ったというが、前作から衰えは顕著。家族が渥美の癌を知るのは91年のこの時期だ。

2012-01-06 03:35:14
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『男はつらいよ・寅次郎の青春』観了。ルコントの『髪結いの亭主』をヒントにした、マドンナ風吹ジュンが床屋の女主人という設定の第四十五作。体調不良の渥美には最早激しい芝居は望むべくもないが、悠然たる味わいを全面に押し出すことで、新領域に踏み出してもいる。御前様・笠智衆の最後の出演作。

2012-01-07 02:12:29