朝日新聞の古市憲寿氏に関する所感

日にちを失念したのだが、ずいぶん前に古市憲寿さんの論説が載っていたのを、最近トゥギャり方を覚えたのでまとめたもの。わたしは新聞以外のメディアは一切読まないであえて書いてみた。古市氏に関してはもうずいぶんいろいろな論説が出ているようだから、そちらを参照した方がいいのかも。個人的なまとめです。
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@taketake_bon

ずいぶん前古市憲寿さんのインタビューが朝日新聞に出ていて、7割ぐらいの若年層が幸せと感じているから若年層は幸せだという趣旨のことを述べていた。すぐにモンテスキューやトクヴィル、アレントを思い出し多数派がそう思っているからと言って社会全体がそうだと思ってる訳ではないこと思い出した。

2011-12-30 23:05:17
@taketake_bon

もとより現代人は状態としては幸せだ。例えば社会学者の竹内洋は自分がこどもの頃の佐渡島の状態を思い出し、乳幼児死亡率が20%を超えていたことを思い出しているが、今はこれは0.3%ほどでは無かったかと記憶している。古市さんの言う幸せというのはそういうのを言うのかも。

2011-12-30 23:08:41
@taketake_bon

もっとも、古市さんのインタビュー見ていると、現代人は不安でもあるようだ。私の経験から行くと、ずいぶん今のお母さんというのは自分の子供が死んだときに悲しむだけでなく自分を責める。我が子を失って悲しいのはわかるが、子供の死が例外的になった分だけ、親の責任が異常にも重くなってしまった。

2011-12-30 23:13:14
@taketake_bon

また、人間の幸せが、リスクと表裏一体なのも古市さんは見逃している。電気がいつも使えるのは都会人にとっては幸福だが、原発事故はあのざま。水力発電も安定供給のために水のため込みに走り、洪水を引き起こしやすい。これらの迷惑施設に住む人はごく少数なので無視できると言いたいのだろう。

2011-12-30 23:17:26
@taketake_bon

自分で結婚相手を選べるようになったのは幸せだが、その分結婚の失敗や子供の非行などの責任は親に降りかかるようになり、家族は安定の場からリスクの場へと変貌。職業選択の自由は増えたが、強制的に労働は流動性を強いられるようになった。つまりは二重労働や、失業の心配が増大している。

2011-12-30 23:20:53
@taketake_bon

古市さんは7割の人間が幸せならみんな幸せだと言うことにしたいらしいが、これらリスクに見舞われる人は皆おおむね三割以内には収まる。大多数は離婚失業も迷惑施設の影響も受けない。だが、社会の中でこれらの不安から全く逃れられている人がおろうか?自分とリスクが無関係と言い切れる人は皆無。

2011-12-30 23:25:59
@taketake_bon

ここで現代人は二者択一を迫られる。古市さんのように7割の満足者こそすべてとみるか、3割の不幸な人間に目を向けるか?古市さんは前者だが私は後者である。リスク論者なのだから。だがそれがなぜかというと、満足や幸福は社会変動の原動力とはなり得ないからなのだ。満足から行動は生まれない。

2011-12-30 23:29:05
@taketake_bon

今日の朝日新聞に出てきたウルリヒ・ベックは「近代においては『我々は飢えている』が社会の原動力。今では『我々は不安だ』が社会の原動力」と言っていた。満足をいくら分析しても社会不安・社会問題が見えないのはもちろん、社会変動も見逃してしまう。

2011-12-30 23:32:25
@taketake_bon

また、古市さんは高度に構造化された社会を前提とするために、社会学で古くからある問題、秩序問題解決の可能性も持っていない。以上を総合すると、古市さんのインタビューはあまり面白くないことになる。が、彼の著作は売れているらしい。それはなぜなのかを推測して見ると…。

2011-12-30 23:34:30
@taketake_bon

10年くらい前フランクフルトに留学してフランクフルト大学に留学していた人がご当地でフランクフルト学派の研究があまりふるわないことを目の当たりにして、がっかりしたそうだ。こんな言葉も聞かれたという「批判理論って言うけど、批判はありふれている。現状を肯定する方が遙かにラディカルだ」。

2011-12-30 23:37:07
@taketake_bon

今本屋の本棚の新刊のコーナーを見ると「国を憂える」類いの現状否定の本があふれかえっている。また社会問題は数えれば枚挙にいとまがない。このような状況の中で「現代人がいかに幸せか」を強調する理論は一定のラディカルさを持っているのだろう。ただこの思想的位置は先に述べたとおり盲目である。

2011-12-30 23:39:53
@taketake_bon

さんざん古市さんが受けた批判があるだろう。「幸せなのは今の若年層全体ではなく、あなた自身じゃないの?」。私もそれを感じる。慶応出身だから受験勉強は不要。東大も院から簡単に入る。就活は必要ない。男だから性差別受けない。マイノリティではない。都会にしか住んでないのでリスクもない。

2011-12-30 23:43:42
@taketake_bon

以上は想像。ただ、まだ古市さんは若い。これから彼がどんな試練をくぐり抜けるか。第二の近代に潜む試練に直面してなお「オレもみんなも幸せ」だと言い切れるだろうか?自分だけは救済されていると信じて疑わないカルヴァンのような精神が彼には備わっているのだろうか?そこまで彼のことは知らない。

2011-12-30 23:46:49