チベットと日本をつなぐもの。

ネパールで仏教の研究をしてらっしゃる文化人類学者の方に、門前の小僧に満たない小僧が愚直に質問してみました。ダライ・ラマによる原子力平和利用の容認発言から見える“チベットのほんとう”、そしてチベットと日本との類似、さらにはユートピアのありかまで。おもしろい講義を聴いているようで、ほおほお言ってました。※誰でも編集可にしましたので、なにかありましたらご随意に。
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佐藤剛裕 @goyou

チベットの密教の大灌頂会というのは、宗教的な意義よりも、政治決起集会としての意味合いが大きいんです。今回のカーラチャクラ大灌頂会はダライ・ラマ、カルマパ、ロプサン・センゲ新首相の3トップ体制が盤石であることを内外にアピールすることに成功しているとみていいと思います。

2012-01-08 01:17:37
佐藤剛裕 @goyou

そもそもの話、大群衆に対してイニシエーションを与えることなど、タントラでは堅く禁じられてるんです。それが近世に入ったころから、宗教政治上のプロパガンダに用いられるようになったんです。近代の密教行者の著作などでもそのことは嘆かれていますね。

2012-01-08 01:20:46
佐藤剛裕 @goyou

近代の中央チベット政府がカーラチャクラタントラを神学的な頂点に位置づけて作った社会の構造は、原発が作り出す社会と非常によく似ています。高野山の招待で来日したダライ・ラマが原子力の平和利用を支持する発言したのも、その両者の類似性によるものだと言えるでしょう。

2012-01-08 02:30:27
佐藤剛裕 @goyou

チベット高原やヒマラヤ山地で暮らしてきた人々の魂を数万年にわたって豊かにしてきたものは、自然を相手にした素朴な宗教的実践であり、仏教が導入されてから千年余りの間も、それは本質的には全く変わっていなかったんです。

2012-01-08 02:59:18
佐藤剛裕 @goyou

ですから、カーラチャクラ大灌頂会のようなものがチベット仏教文化の核心に位置するというような言説には疑いの目を向けざるを得ません。そういう言い方の中に、自然と直接対峙して生活している人々を排除する原理が働いていないかどうか、しっかり目を凝らしたほうがいいでしょう。

2012-01-08 03:05:10
佐藤剛裕 @goyou

これは、人々を自由にするはずのものが人々を縛りつける制度になってしまう、または共同体をまとめるはずだったものが排除原理として機能してしまうという、あらゆる宗教につきまとう両義的な問題なんですよね。

2012-01-08 03:07:51
hiroyuki_takahashi @hiropopopopon

@goyou すいません、門外漢としての質問ですが、ダライ・ラマによる原子力の平和利用支持発言、ぼくは単純に「低開発地域のことを考えるとノーとは言えない」と受け取っていました。でもそれだけではない、という理解でよいのでしょうか。それとも全然そうではなく、神学的に根ぶかいものだと?

2012-01-08 02:50:20
佐藤剛裕 @goyou

@hiropopopopon 端的に言うとものすごく神学的に根深いです。あの発言は後進的な地域の開発が独占的な権力によって行われることを是認することになりますが、それはチベットのダライ・ラマ政府が三百年間行ってきたチベットの地方統治の方法論と同じなんです。

2012-01-08 03:03:15
hiroyuki_takahashi @hiropopopopon

@goyou うわ、はじめて聞きました、そんなお話。でもとても大事な観点ですね。原発をとりまく権力論と統治理論が同じところに根があるというのは、すごく頷けますし、原発周辺を読み解く際のキモでもあるような気がします。ありがとうございました! やりとり、RTしてもよろしいですか?

2012-01-08 03:13:12
佐藤剛裕 @goyou

@hiropopopopon 公開ツイートですのでRTもTogetterも構いませんよ。

2012-01-08 03:20:04
佐藤剛裕 @goyou

@hiropopopopon チベット文化圏の周縁地域に辛うじて残っている少数派な宗派を支えていた地域共同体の観察をしているんですが、その人たちがやってきたことって日本で反原発運動をしている人たちととてもよく似ているんですよ。

2012-01-08 03:19:18
hiroyuki_takahashi @hiropopopopon

@goyou そっか、祝島につながると! いち読者として、彼岸寺に書かれたものは拝読してましたので、おっしゃることよくわかります。そしてちょっと鳥肌。

2012-01-08 03:23:27
佐藤剛裕 @goyou

@hiropopopopon そう、ヒマラヤの南側っていうのは、中央チベットの政治勢力に抵抗し続けてきた祝島みたいな地域なんです。

2012-01-08 03:25:05
佐藤剛裕 @goyou

チベット仏教文化圏のものはなんでも素晴らしいっていうような、ごく一般的に期待されている感覚には異を唱えなくてはならなくて。

2012-01-08 03:32:27
hiroyuki_takahashi @hiropopopopon

@goyou チベットの場合、仏教と政治が不可分なだけに、周縁で信仰するということは、おのずと政治勢力に抵抗をしているように見なされるし、事実そういう側面もあるのだと。それは、日本にいるぼくのような一般のひとには、抜け落ちている見方ですね。日本国内でさえ抜け落ちまくりですから…。

2012-01-08 03:41:44
佐藤剛裕 @goyou

@hiropopopopon 日本とチベットを見比べてみると相互補完的に理解できることが多いんです。ただ、最初から先入観を持っているとそれを投影してしまう危険性も強くて。

2012-01-08 03:43:26
佐藤剛裕 @goyou

それにしても、つくづく、日本とチベットがかけはなれたものだとは全く思えないんですよね。

2012-01-08 03:44:50
佐藤剛裕 @goyou

チベット仏教関係者が大袈裟に語るほどには、チベット仏教が日本仏教よりも圧倒的に優れているとも思えないし。

2012-01-08 03:45:22
佐藤剛裕 @goyou

ヒマラヤの南壁側で行われてきた宗教的な実践の痕跡を辿っていると、東北地方とちょっと感覚的に似ているところがある。もちろんある部分はそれも僕の心の中で起こっていることの投影なんだけれども。

2012-01-08 04:13:55
hiroyuki_takahashi @hiropopopopon

@goyou なるほど。でも、願望をかなたに投影してしまう、ぼくらの方こそ危険です。ユートピアがどこか遠くの幻だと思うだけで終わってしまう。自らで構想すべきなのに…。というか、稚気満載の質問にお答えいただいて、ほんとうにありがとうございました。良質な講義のようでドキドキしました。

2012-01-08 03:53:54
佐藤剛裕 @goyou

@hiropopopopon そう、ユートピアなんて世界中どこにもないんだぞ、っていう話なんです。

2012-01-08 03:56:57
hiroyuki_takahashi @hiropopopopon

@goyou ですね!……で終わらずに、そこからはじめないといけないんですよね(笑)。

2012-01-08 04:01:17
佐藤剛裕 @goyou

@hiropopopopon もうね、なんどもそのスタート地点に立ち返らないといけないんですよ(笑)

2012-01-08 04:02:25
hiroyuki_takahashi @hiropopopopon

@goyou わわわ、またすごい深遠なオチ(じゃないですけど)に!

2012-01-08 04:08:41