Elonaショートショート -清掃員バルザックと紫色の粗大ごみ-

フリーのローグライクゲームElonaに登場するキャラクター、バルザックとレントンの2人を取り上げた即興ショートショート。
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どこじ@療養中 @DokojiTheDotter

街が汚れるのを良しとしない清掃員と、亡き妹の思い出残る街を守りたい青年が手を組み、腐敗にまみれた街を正すために立ち上がる。ルミエストのでこぼこコンビを主役にした熱いSSを誰か書いてくれません?

2012-01-08 18:36:23
小路ビビ @vivivich

@ElonaSS 清掃員バルザックの朝は早い。未だ誰もが眠りこける夜明け前に家を出て、街中をぐるりと一周、通路と水路を見てまわる。そこで掃除の目処を付け、彼の一日が決まるのだが、その日はちょっと違っていた。紫色の人間ほどの塊が、彼の家近くの倉庫の影にうずくまっていたのだ。

2012-01-08 18:42:17
小路ビビ @vivivich

@ElonaSS 誰がこんな大きなゴミを?それも放置とはけしからん!と、彼は見るなり足を早めて近づいた。数歩で手の届こうかという距離に来て、彼は目を向いた。よくよく見ると、大きなゴミがもぞもぞと蠢いているではないか。

2012-01-08 18:44:35
小路ビビ @vivivich

@ElonaSS 「誰かいるのか?」と塊から声が聞こえたからさぁ大変だ。バルザックは心臓をきゅっと掴まれた思いで飛び上がった。まだ夜も明けきらぬ時刻こんな場所に人がいるなど、誰が思いつくだろうか。「誰かはしらないけど、放っておいてくれないか」紫色の塊は、動きもせずにつぶやいた。

2012-01-08 18:47:37
小路ビビ @vivivich

@ElonaSS はて、どうやらこの塊は人間らしいとバルザックもようやく合点がいった。春の近い季節ではあったが、まだまだ朝晩は冷え込む。この男は、いったいなぜこんな場所にいるのだろう。そう思い、やや恐る恐るではあるが、自慢のホウキを片手に握りしめて、バルザックは近づいていった。

2012-01-08 18:50:37
小路ビビ @vivivich

@ElonaSS 紫色の塊に見えた物体は、足先まであろうかというマントにくるまった人間だった。暗くて顔はよく見えないが、まだそれほど歳はとっていない。「兄ちゃん、何があったんだ? ここは寒いだろう。うちに来な、熱いお茶でも出してやるから」

2012-01-08 18:53:38
小路ビビ @vivivich

@ElonaSS しかし返事の言葉はなく、紫の男はしっしと追い払うように手を振るばかり。人がせっかく親切に声をかけたのに!といきりたったバルザックは、その手を掴み、強引に家の方へと引っ張った。 「何をする!」と聞こえるや、爆発音が鳴り響いて、バルザックは勢い良く吹っ飛ばされた!

2012-01-08 18:56:15
小路ビビ @vivivich

バルザック君、ふっとばされたー!

2012-01-08 18:56:27
小路ビビ @vivivich

@ElonaSS 幸い辺りに茂る草が彼を受け止めてくれたので、大きな怪我はなかったがバルザックは強か腰を打った。声に鳴らない呻き声をあげ苦しんでいると、頭上から少し焦った声が響いた。「すまない、怪我をさせるつもりでは…」「うるさい! 申し訳なく思うならワシを家まで運ばんか!」

2012-01-08 18:59:48
小路ビビ @vivivich

@ElonaSS 家に戻ったバルザックは、腰をさすりさすり紫の男にカップを差し出した。掃除の前の一服と、掃除の合間の一服と、掃除の後の…とにかく掃除してない間に飲む紅茶が、彼のささやかな楽しみだ。柔らかにくゆる香りを嗅いで、紫の男の顔が緩んだのを見てバルザックは満足そうに頷いた。

2012-01-08 19:02:54
小路ビビ @vivivich

@ElonaSS 「お前さん、名前は?」紫の男は紅茶を一口、それからゆっくりと口を開いた。「レントン…」「レントン、はて…?」バルザックはあごひげに手をやって、思いを巡らせてみたものの、ついぞ思い当たらなかった。仕方なく訊くことにする。「なんでまた、あんな所で寝てたんだ?」

2012-01-08 19:08:46
小路ビビ @vivivich

@ElonaSS レントンと名乗った男は両手でカップを持ったままうつむき押し黙ってしまった。「無理に言うことはない。今日一日くらいいてもいいから」そう言い残してバルザックは、街の掃除に出ようとした、が―ピキッ!声にならない痛みが腰に走り、バルザックは前のめりに崩れ落ちてしまった!

2012-01-08 19:11:30
小路ビビ @vivivich

@ElonaSS それからは一騒動だった。強情に掃除に出るのだと喚くバルザックを、レントンがたしなめる。そんな問答が何度続いた頃だったか、レントンがやれやれと言わんばかりに切り出した。「今日の掃除は僕にやらせてくれないか。その怪我も、僕がさせてしまったものだ」

2012-01-08 19:14:01
小路ビビ @vivivich

@ElonaSS 「そこまでしてもらうこたぁない、こいつは俺の仕事だ」相も変わらず意地を張る。このままでは堂々巡りだ。仕方ない、とレントンは小さく呟き「街の掃除がしたいんだ。妹の思い出が残るこの街の」「妹?」バルザックは思わず聞き返していた。その言葉があまりに悲しげに発せられて。

2012-01-08 19:16:15
小路ビビ @vivivich

@ElonaSS レントンがポツリポツリと喋り出す。この街のこと、絵本作家を目指していたただ一人の妹のこと、夢破れ絶望のうちに命を絶った大切な家族のことを。バルザックは寝かされていたベッドの上でゆっくり静かにそれを聞き、答えた。「今日の掃除はお前に任せる」紅茶はとうに冷めていた。

2012-01-08 19:19:26
小路ビビ @vivivich

@ElonaSS その日はそのままレントンはバルザックの家に世話になった。腰を痛めて一人じゃ生活もままならんとはバルザックの言い分で、寒空に出ていこうとする彼を引き止める口実だった。そんな思いは当然レントンにもわかってしまい、苦笑混じりに仕方なくといった風だったのだが。

2012-01-08 19:22:50
小路ビビ @vivivich

@ElonaSS そんな調子で数日が経った。バルザックの腰も癒えてきたある朝に、彼は切り出した。「お前さん、これからどうするつもりだい」レントンは少し思いを巡らせて「何も考えていない」とだけ答えた。バルザックは「そうか」とだけ呟いて、いつものように紅茶をいれた。「まぁ飲め」

2012-01-08 19:25:32
小路ビビ @vivivich

@ElonaSS 「それなら、しばらくここで働いてみないか」レントンは目を剥いた。やや伏し目がちなその眼にはなぜ?という光が浮かんでいた。「あんたを見つけたときは、そりゃぁ死にそうな目をしてたがね」とバルザックは紅茶を一口「今はちょっとはマシになった。何故かわかるか?」

2012-01-08 19:28:01
小路ビビ @vivivich

@ElonaSS レントンは首を振った。「掃除ってやつはちゃんとやろうとするならば、普段見ないようなところまで、じっくりじっくり見つめるもんだ。この街は、お前さんと妹さんの思い出の場所なんだろう?」ゆっくりと頷くレントンの鼻を、温かな紅茶の香りがくすぐった。

2012-01-08 19:30:16
小路ビビ @vivivich

@ElonaSS 「お前さんを見つけたときは妹さんを失ったショックに囚われてたんだろうなぁ。でも掃除で街をじっくり眺めた。おかげで、あんたは今の自分がいる場所を、今自分が生きてるってことを、その身に染みて思い出したのさ」レントンはこの数日の掃除のことを思い出す。そうかもしれない。

2012-01-08 19:32:34
小路ビビ @vivivich

@ElonaSS 「だからもう少し続けてみな、思い出の街が綺麗なら、妹さんも嬉しいんじゃないか?」バルザックはニカッと笑う。それで街中の人が喜んでくれる、と顔に書いてあった。「あぁ…よろしく…頼む」なぜだか照れくさくなって、レントンはカップを口に当てた。お茶は残っていなかった。

2012-01-08 19:35:54
小路ビビ @vivivich

@ElonaSS それから数ヶ月が経った。レントンは魔術師ギルドに籍を置き、優秀な魔導師として活躍している。ただ、今でも残った日課がひとつ。早朝の街には、今日も熱心に掃除をする若者と、それを指導するヒゲのおじさんの姿があった。 ―おしまい。

2012-01-08 19:38:34
硝子プチ『だったん』 @DB_Dattan

ビビさんの「Elonaショートショート-清掃員バルザックと紫色の粗大ごみ-」(http://t.co/SpnHf0WS)のお掃除レントンさん落書きったー。 http://t.co/qMsOCGnP

2012-01-09 20:32:50
みそのみたま📛 @pekotv

【絵】だったんさんのレントンさんに滾り、ビビさんのところのレントンさんを描かせていただきました。http://t.co/aMeCsF5K http://t.co/UEnPGQr2

2012-01-09 21:53:22
小路ビビ @vivivich

思うに、バルザックがレントンの手を引いたときに爆発音が響いたシーンは、レントンが魔法使いであるっていう知識のない非Elonaプレイヤーにはわけがわからないんじゃないかと。描写不足、大失敗である。

2012-01-10 07:09:34