観察映画作家・想田和弘(@KazuhiroSoda)氏の原発維持/廃止に端を発する『国民投票』に関する考察。

可能な限り無作為にカメラを回した映像を観察・考察しながら編集を行い、 原則、画像加工やSE、BGM、字幕などの後付け処理を行わない 観察映画『選挙』『精神』『Peace(番外編)』で知られる ドキュメンタリー作家・想田和弘氏の考察。 感想は個人個人の主観に因って様々だとは思いますが、 続きを読む
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想田和弘 @KazuhiroSoda

原発の存廃を巡る直接投票について、色々な意見をいただきリツイートした。そこで僕の考えを詳しく連投する。

2012-01-11 13:32:00
想田和弘 @KazuhiroSoda

まず、この問題は原則論と戦略論を分けて考えた方がよいと思う。最初に原則論原発の存廃は国民投票や住民投票で決めるべき事案かどうか?僕はイエスだと信じる。なぜなら、原発は国民ひとりひとりの生存や財産に重大な影響を及ぼしかねないから。

2012-01-11 13:36:11
想田和弘 @KazuhiroSoda

原発の是非も選挙で決めればよい」という人もいるが、選挙は人や政党を選ぶので、個別の事案について意志を表明しにくいという難点がある。この候補者、医療や福祉政策については自分と意見が同じだけど、原発については意見が反対…という悩みがその典型である。

2012-01-11 13:40:18
想田和弘 @KazuhiroSoda

つまり直接投票には議会制民主主義の難点を補う役割がある。原発の是非は、それだけを抜き出して民意を問うに足る事案だと思う。以上が原則論。この点については、脱原発派で直接投票に否定的な人も、賛成してくれるのではないかと思う。

2012-01-11 13:46:03
想田和弘 @KazuhiroSoda

では、戦略論としてはどうか。脱原発派で直接投票に反対の人は、たぶんこの点で不安を抱いている。つまり「負けたらおしまいではないか」という懸念である。しかし、負けたら本当におしまいなのか?欧州での事例を振り返れば、答えは否である。

2012-01-11 13:50:38
想田和弘 @KazuhiroSoda

例えば、スイスではチェルノブイリ事故などをきっかけにして、過去に6回も原発に関する国民投票が行われている。その度に設問も懸案も異なり、結果も脱原発側に振れたり逆に振れたり。つまり選挙と同じで、勝ったり負けたりするわけだ。国民投票はいつでも発議できるわけだから、当然と言えば当然。

2012-01-11 13:59:49
想田和弘 @KazuhiroSoda

では、直接投票をせずに現状の流れで推移していけば、脱原発は実現するのだろうか。投票反対派の人は、たぶん「実現するのではないか」と期待しているのだろう。だからこそ「負けたらどうする?」と不安になる。でも、そんなに楽観的でいいのだろうか。

2012-01-11 14:11:38
想田和弘 @KazuhiroSoda

政府は「原発の寿命は40年」とする法案を提出する。これは「40年間は廃炉しない」意志とも読める。例外を認める条項もあり、脱原発を決意しているとは到底思えない。憶測だが、むしろアメリカがスリーマイルから30年を経て原発新設を復活させたようなシナリオを描いているのではないか。

2012-01-11 14:17:46
想田和弘 @KazuhiroSoda

少なくとも、耐用年数のきてない現存の原発を積極的に廃炉にしようという動きは政府内にはない。つまり、ほとぼりが冷めたら再稼働させる意志があることは明白だ。それもなし崩し的に。もちろん新増設はしばらくできないだろう。しかし今から30年したらどうか?アメリカのように?

2012-01-11 14:25:07
想田和弘 @KazuhiroSoda

このような状況を鑑みるに、今の状況を放っておけば、僕は原発は維持される公算が高いと思う。つまり脱原発はずるずると土俵を割るように負けていく。というか、原発の導入以来、いままでずーっと負け続けてきたのだ。残念ながら、それが続いていくのではないかと僕は思う。つまり不戦敗。

2012-01-11 14:29:31
想田和弘 @KazuhiroSoda

このような理由で、僕は原則論からも、戦略論からも、原発直接投票に賛成である。僕はチェルノブイリの頃から脱原発派で、地球上のすべての原発はただちに廃止を決めるべきだと思う。だから直接投票で脱原発派が負けることは、もちろん恐れている。しかし、それでも投票を実現すべきだと思う。

2012-01-11 14:35:35
想田和弘 @KazuhiroSoda

僕は負けることを恐れるのではなく、たとえ負けても何度でも挑戦する粘り強さを保とうと提案したい。少なくとも不戦敗よりはマシである。また、たとえ脱原発がとりあえず否決されたとしても、得票数によってはその後の政治に大きな影響を及ぼす可能性がある。

2012-01-11 14:40:57
想田和弘 @KazuhiroSoda

それに直接投票が実現すれば、国民的な議論が起きる。原発は我々の生命や財産を左右する一大事だが、それについてすら僕らは「お任せ」で済ませてきた。この悪習を断ち切る必要があるのではないか?福島原発が事故を起こした今でなくて、いつそれをやるのだ?というのが率直な思いである。

2012-01-11 14:46:08
想田和弘 @KazuhiroSoda

ちなみに、「みんなで決めよう原発国民投票」は「脱原発をしよう」と呼びかけているわけではない。にも関わらず、その賛同者の大半は脱原発派だと見受けられる。たぶん原発推進派にとっては、投票無しに現状で推移していくのが最も好ましいのだ。でなければ、推進派も国民投票に熱心になるはず。

2012-01-11 14:58:10
想田和弘 @KazuhiroSoda

ついでに言うと、国民投票は本来、原発に限らず消費税とかTPPとか、国論を二分する重大事案について利用できるようにすべきだと思う。特に「議会制民主主義」が完全に壊れてしまっている今、国民の意志を政治に反映するには必須だと思う。

2012-01-11 15:18:02