アトロシティ・イン・ネオサイタマシティ #2

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
書籍 文学 ニンジャスレイヤー
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Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
■ニンジャ■コロス■ 本日は二本立てを予定しています ■ニンジャ■ニンジャ■
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「アトロシティ・イン・ネオサイタマシティ」 #2
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数日後。小降りになった重金属酸性雨の中、オレンジ色の鎧装束をまとった男が、サスマタ・ストリートを足早に歩く。金色の刃物が生えたその兜飾りは、怒れる象の頭部を連想させる。彼はキルエレファント・ヤクザクランを解散してフリーランス・ヤクザとなった、ヤマヒロであった。 1
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彼のニューロンにはまだ、ヤクザ天狗の衝撃が深く刻み付けられている。天狗とは日本に古来から存在するフェアリーの一種で、赤く長い鼻を持ち、空を飛ぶという。しかしあの男は天狗ではなく、ヤクザでもなく、ヤクザ天狗であった。あの男を思い出すたびに、ヤマヒロは頭がどうにかなりそうだった。 2
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もうやめよう、あの男のことを考えるのは。ヤマヒロは自分にそう言い聞かせた。今はまず、新たな食い扶持を探さなくてはいけない。だからこの鎧を着てきたのだ。フリーランス・ヤクザとしての強さや、有無を言わせぬ威圧感などをアッピールするのに、この伝統的鎧ほど相応しいものは無かった。 3
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ペケロッパカルト、サイバーゴス、ブッダパンクス、無軌道学生、アンタイブディストといった社会の屑が行き交うこのサスマタ・ストリートでも、ヤマヒロの姿はひときわ目立ち、攻撃的なアトモスフィアを漂わせていた。横を通り過ぎたサイバーゴスたちが、後ろを振り返って、ヒュウと口笛を鳴らす。 4
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ヤマヒロは餓えた獣の目で雑居ビル群を見る。ヨージンボーとして売り込める企業や組織がないかを、抜け目無く探しているのだ。グレーターヤクザである彼には、そのような臭いを嗅ぎ付ける能力が先天的に備わっている。また、それ以外の道で生きる方法を彼は知らない。彼は羊ではなく殺人象なのだ。 5
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そして見つける。雑居ビルの2階に輝く「完全なコンタクト」「実戦的」「非暴力主義」のネオンサイン。大カンバンに輝く「ケンリュウ・ハッカードージョー」の赤と緑のミンチョ体が、重金属酸性雨を浴びてバチバチと火花を散らしていた。ヤマヒロは明滅するタングステン灯の階段を登ってゆく……。 6
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数日前、治安があまり良好とはいえないウナギ地区の暗い路地裏。 8
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この路地裏に3人のニンジャが潜み、裏路地を出て右手にある回転スシバーを今まさに襲撃せんとしていた。全員が目元だけを露出した黒装束に身を包み、赤いヌンチャクや銃などを装備している。だが、その身のこなしやヌンチャクさばきは明らかに素人のそれだ。 9
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彼らはソウル憑依者ではない。ましてやリアルニンジャでもない。彼らは近頃この界隈を騒がせるニンジャ強盗団である。「ニンジャの姿で強盗すれば、相手を実際威圧できるし、顔もばれないと思う」と考えたマズダ三兄弟の長兄タロが、ジロとサブロを率いてこの実際安い悪事を繰り返していたのだ。 10
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「バリキ飲んだな?シャカリキ決めたか?あと10秒!5、4、3、2、1!GOGOGO!」タロが拳銃とヌンチャクを掲げて駆け出す!ブラックジーンズとダウンベストにニンジャ頭巾というずさんな変装だ!「ウォーッ!アーポウ!」「ワオオオオオーッ!」後続の2人も奇声を上げながら走る! 11
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CRAAASH!ガラスが叩き割られ突入する三兄弟!「アイエエエエ!」恐怖に凍りつくイタマエと客!コワイ!「ウォーッ!俺たちゃニンジャだ!カネを出せ!」「ワオー!レジのだけじゃねェ!客もこの袋に財布入れろや!」「アーポウ!抵抗するんじゃねえ!ニンポを使うぞ!ニンポを使うぞ!」 12
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ブッダファック!何たる大雑把なニンジャ像か!ニンポとは、TVやコミックに出てくる偽者ニンジャが使う荒唐無稽なニンジャマジックのことである!小学生ですら、このような愚かな行動は取るまい!……だが、これが逆に利いた。イタマエや客は、この3人が完全な発狂マニアックだと思ったのだ! 13
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見よ!PVC袋はたちまち万札やクレジット素子で満たされる!「ズラカルゾー!」タロが命じ、ジロが袋を背負う!「動くな!アーポウ!ニンポを使うぞ!ニンポを使うぞ!」サブロは余程ニンポが気に入っているらしく、両手ででたらめなミステリアス・サインを作り、イタマエや客を威圧していた! 14
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客の中には荒事に長けたギャングスタも1人混じっていたが、この彼でさえ黙って財布を袋の中に入れた。3対1で分が悪いことも確かにある。加えて日本人は、理性ではいくら否定しても「実は本当にニンジャであの両手からニンポによる稲妻が出たらどうしよう」と無意識のうちに恐れてしまうのだ。 15
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三兄弟は大笑いしながら回転スシバーを後にした。この行為は麻薬めいてやめられない。工場労働や単調アルバイトでは手に入らない大金とスリルと爽快感が一気に手に入るのだから。……だが、この日は違った!上空に浮かぶネオサイタマ市警のマグロツェッペリンからサーチライトが照射されたのだ! 16
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ストリートに鳴り響くサイレン!群れを成して迫るマッポビークル!三兄弟は廃ビルに逃げ込み、階段を駆け上がった!「ハァーッ!ハァーッ!兄ちゃん、どうしよう!」「掴まっちゃうぜ!」「大丈夫だ!俺たちゃ実際1人も殺してねえ!万が一掴まっても……よくわかんねえケド、何とかなるだろ!」 17
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三人は屋上に逃げ込んだ。息を切らしつつ耳を澄ます。錆びついた大型ファンがキイキイと軋み、パイプから漏れた水滴が小さく鳴っていた。聞こえるのはそれだけ……「逃げ切ったかァ?」……いや……少しして階下からマッポの足音が迫ってきた!「ブッダシット!逃げ場が無えよ!」激昂するタロ! 18
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「兄ちゃん、あれだ!」隣のビルの屋上を指差すサブロ!タロは首を横に振った「ワーオ!お前はイディオットか?何メートルあると思ってんだ!」。「でもヨォ、兄ちゃん!逃げねえと掴まっちまう!映画で見たよ俺!飛べるよ!」ジロも乗り気だ。タロも飛べる気になってきた。「…よし、行くか!」 19
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ナムサン!何たる場当たり的な行動であろうか?!皆さんも平安時代の剣豪にして哲学者ミヤモトマサシが残した「狂人の真似をしたら実際狂人」のコトワザを想起せずにはいられないだろう!だがこれも、教育や道徳や治安が頽廃しきったマッポーの世においては、チャメシ・インシデントなのである! 20
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「GOGOGOGO!」「ワオーッ!」「ニンポ!ニンポ!」重金属酸性雨を浴びながら屋上を駆ける三兄弟!踏み込むマッポ!サブロとジロが飛ぶ!だがシャカリキを決めていないタロは恐怖に負けて飛べない!隣のビルに掲げられた大型LEDカンバンには「インガオホー」の6文字が明滅していた! 21
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タロは両手を揚げて、怯えたハムスターのようにガチガチと歯を鳴らしながら、マッポたちのいる後ろを振り向いた。ジロとサブロがどうなったかは解らない。恐ろしくて見たくもない。タロは絶望感と無力感に苛まれていた。これまで人生の中で何度も味わってきたが、彼はそのたびに思考を停止した。 22
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コメント

オスツ🍣 @alohakun 2012年1月20日
アトロシティ・イン・ネオサイタマシティ #1 http://togetter.com/li/238464 アトロシティ・イン・ネオサイタマシティ #3 http://togetter.com/li/244305
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