【ほうかご百物語】妖怪についてつらつらと(2、3巻)

ライトノベル・『ほうかご百物語』(峰守ひろかず著、電撃文庫) http://goo.gl/BI3Kh のシリーズに登場する妖怪の元ネタ・モチーフと思しき妖怪譚などについての呟きをまとめるリスト。 ※このまとめは覚書です。じっくり精査するのではなく、思い付いたネタやちょっとだけ調べた事項をまとめておくためのものです。 ※個人のメモですので、緩く見てください。 ※「作中との比較」の部分は、「この部分は文献を参考にするとこういうことであるに違いない!(断定)」ではなく、「もしかしたらこういうことなのではないだろうか?」という一つの可能性の「提案」を行うものである、ということを予めご了承ください。 続きを読む
5

※※第2巻に関する話※※

※サガリについて

アルム=バンド @Bredtn_1et

さて、サクサクッとやりましょう。今日は『ほうかご百物語』2巻より、「下がり」です。

2012-04-16 19:18:12

※文献を基にした概説メモ

アルム=バンド @Bredtn_1et

参考文献は(1)「妖怪談義(妖怪名彙)」『定本 柳田國男集 第四巻』(柳田 國男著、筑摩書房、S.38)、(2)『妖怪事典』(村上 健司著、毎日新聞社、2000)、(3)「全国妖怪語辞典」『日本民俗文化資料集成 8 妖怪』(谷川 健一編纂、三一書房、1988)。

2012-04-16 19:18:18
アルム=バンド @Bredtn_1et

「下がり」とは、道端の古い榎から馬の首がぶら下がってくる、という怪異である(1)(2)(3)。

2012-04-16 19:18:25
アルム=バンド @Bredtn_1et

岡山県邑久郡(現瀬戸内市)では伝承されている場所が二箇所あり、そのうちの一つは地名もサガリとなっている、という(1)。

2012-04-16 19:18:32
アルム=バンド @Bredtn_1et

また、熊本県の南ノ関町大字下宇字迎町(現玉名郡南関町)では柿の木、玉名村大字玉名字岡(現玉名市)ではやはり榎で、この怪異が伝えられている(2)。

2012-04-16 19:18:38
アルム=バンド @Bredtn_1et

特に後者では、見た者が熱病にかかる騒ぎになったという(2)。

2012-04-16 19:18:47
アルム=バンド @Bredtn_1et

昨日紹介したサガリ、『旅と伝説』の該当記事を入手したので読んでみたら、なかなか興味深いことが書かれていた上に昨日参照したどの文献にも記述がなかったので紹介したい。

2012-04-17 19:52:42
アルム=バンド @Bredtn_1et

「北肥後霊木誌」(能田 太郎著)「旅と伝説 通巻五十三号」(『<完全復刻>旅と伝説 第九巻(通巻第四十九号~第五十四号)』(岩崎美術社、1978)所蔵)より、噛み砕いて紹介する。

2012-04-17 19:52:49
アルム=バンド @Bredtn_1et

(1)当南の関町大字関下字迎町の古道の出外れ、東側崖の中腹の大榎の下に地蔵様の石像がある。

2012-04-17 19:52:54
アルム=バンド @Bredtn_1et

※余談だが、この地蔵様は歯痛に霊験ありと伝えられる。

2012-04-17 19:53:01
アルム=バンド @Bredtn_1et

その後方の榎から南手に稍々(筆者注:「やや」という意味だと思われる)下がったところに柿の大木があり、そこに馬の首が下がる、といった。

2012-04-17 19:53:06
アルム=バンド @Bredtn_1et

この馬の首が下がる話は、悪たれ共の思い付きではなく、昔にそうした噂話があった、と老人達が話してくれた。

2012-04-17 19:53:11
アルム=バンド @Bredtn_1et

(2)同郡(玉名郡のことか?)玉名村大字玉名字岡の村の入り口に榎の大樹があったが、今(当時)から三十年ばかり前に馬の首が下がるという噂が立った。

2012-04-17 19:53:17
アルム=バンド @Bredtn_1et

実際に見たという人すら出て、見た者はたちまち熱病にかかるという騒ぎになった。

2012-04-17 19:53:36
アルム=バンド @Bredtn_1et

そこでその木を伐ることにした。その代わりに猿田彦神の祠堂を建てた。今はその祠堂だけが残っているという。

2012-04-17 19:53:41
アルム=バンド @Bredtn_1et

この二つの話はいずれも村の出入り口であったことは注意すべきであり、神の木つまりシメノ木の一つであっただろう。

2012-04-17 19:53:46
アルム=バンド @Bredtn_1et

…という感じの文章でした。

2012-04-17 19:53:51
アルム=バンド @Bredtn_1et

個人的に気になったのは、(I)この記事の著者が気付いているように、どちらの場合も所謂村境にある木でサガリの怪異があったということ。

2012-04-17 19:53:56
アルム=バンド @Bredtn_1et

やはり怪異が起きるからには、特別な木であるのだろうな、ということを示唆してくれる。また、近くに「地蔵様」が祀られたり、木の代わりに「猿田彦神」を祀る祠堂を建てた、というようにどちらの場合も塞の神信仰と繋がる、つまり「境界」を強く想起させる神仏が関連しているのも面白い。

2012-04-17 19:54:07
アルム=バンド @Bredtn_1et

(II)柿の木のバリエーションでも、近くに榎があること。これより、確認できた事例では全て榎が関係していることに。 何か榎と馬の首には特別な繋がりがあったのか、あるいは元々は同じ伝承だったのが各地に伝播していったのか…とにかく何らかの関係性が疑われるので、この点も面白い。

2012-04-17 19:54:16
アルム=バンド @Bredtn_1et

(III)どちらも「昔にそういった噂話があった」という形で語られていること。後者は実際に見た人が出た、という騒ぎに発展していたけど、「サガリ」という名称が出てこないことと、「昔はそういう噂があったんだよ」という語り口で語られている点は注目しておきたいかな、と。

2012-04-17 19:58:13

※作中との比較

1 ・・ 13 次へ