【ほうかご百物語】妖怪についてつらつらと(2、3巻)

ライトノベル・『ほうかご百物語』(峰守ひろかず著、電撃文庫) http://goo.gl/BI3Kh のシリーズに登場する妖怪の元ネタ・モチーフと思しき妖怪譚などについての呟きをまとめるリスト。 ※このまとめは覚書です。じっくり精査するのではなく、思い付いたネタやちょっとだけ調べた事項をまとめておくためのものです。 ※個人のメモですので、緩く見てください。 ※「作中との比較」の部分は、「この部分は文献を参考にするとこういうことであるに違いない!(断定)」ではなく、「もしかしたらこういうことなのではないだろうか?」という一つの可能性の「提案」を行うものである、ということを予めご了承ください。 続きを読む
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アルム=バンド @Bredtn_1et

『拾芥抄』に拠れば、夜行日は1・2月は子の日、3・4月は午の日、5・6月は巳の日、7・8月は戌の日、9・10月は未の日、11・12月は辰の日だという[1][3][7]。

2012-04-22 00:06:37
アルム=バンド @Bredtn_1et

以上に夜行さんの基本スペックを述べたが、文献や伝承地によってその内容には結構バラツキがあるようなので、以下ではそれらに触れたい。

2012-04-22 00:06:52
アルム=バンド @Bredtn_1et

まず、『民間伝承』(3巻2号、通巻26号)に収録された「節分」(武田 明著)に拠れば、三好郡山城谷村(現山城町)などでは、節分の夜に現れる髭の生えた片目(一つ目)の鬼で、お菜のことを言っていると毛の生えた手を出す[1][2][4][5]という。

2012-04-22 00:07:10
アルム=バンド @Bredtn_1et

先の(1)~(3)に当て嵌めると…(1)節分の夜、お菜のことを言っているとき、(2)髭の生えた片目(一つ目)の鬼で、手には毛が生えている、(3)お菜のことを言っていると手を出す、という感じになる。 先の(1)~(3)と比べてみると、だいぶ異なることが分かる。

2012-04-22 00:07:22
アルム=バンド @Bredtn_1et

次に『阿波の土俗』では、大の晦・小の朔日を「やぎょうにち(筆者注:夜行日のことか?)」といい、その真夜中には悪魔が盛んに横行する。特に十字路は悪魔が最も集まるので、もし人がそこに行き当たると思う所には辿り着けずさ迷うことになるといい、

2012-04-22 00:07:49
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また、よく「やぎょうさん」に「とって投げられる」ことがあるといいう[6]。やぎょうさんは悪魔の大将で首切れ馬に乗っており、やぎょうさんが通行すると首切れ馬の付ける鈴の音が「ぢゃんこぢゃんこ」と鳴るので分かるという[6]。

2012-04-22 00:08:00
アルム=バンド @Bredtn_1et

こちらは『民間伝承』のそれよりも『土の鈴』に近いが、(1)が大の晦・小の朔日となっていたり、夜行さんの乗る首切れ馬には鈴が付いているなどといった特徴も加えられている。

2012-04-22 00:08:07
アルム=バンド @Bredtn_1et

続いて「土佐山村の「妖物と怪異」」(桂井 和雄著)『旅と伝説』(通巻174号)では、ヤギョーは高岡郡越知町野老山辺りで言われるもので、錫杖を鳴らして夜の山道を通る妖怪だとされる。ジャンコジャンコと鳴らして来るという[1][8]。

2012-04-22 00:08:27
アルム=バンド @Bredtn_1et

この伝承では、姿形や出現する時季が不明でありながらも、『阿波の土俗』のものと同じように音を鳴らしながらやって来るものだとされていることが分かる(首切れ馬の鈴が錫杖かの違いはあるが)。

2012-04-22 00:08:36
アルム=バンド @Bredtn_1et

なお、同じ「土佐山村の「妖物と怪異」」に記されている「ボーフリ(棒振り)」なる妖怪は、山道で棒を振るような音を立てながら通る目に見えない怪異だとされるが、吾川郡大崎村寺村ではこれに出遭ったらうつ伏せになると良いといわれる[8]そうで、

2012-04-22 00:09:15
アルム=バンド @Bredtn_1et

出遭ったときの対処法が伏せること、という点で『土の鈴』の夜行さんに近く、何か関連があるかもしれないと思わせられる。

2012-04-22 00:09:18
アルム=バンド @Bredtn_1et

このように伝承にバラツキがあり、必ずしも『土の鈴』のバージョンのように夜行さんは首切れ馬に乗っているとは限らないということも窺える。 『妖怪事典』に拠れば、むしろ首切れ馬が単体で現れる伝承の方が多いらしい。

2012-04-22 00:09:44
アルム=バンド @Bredtn_1et

一例としては徳島県吉野川の下流地方から香川県東部に掛けてでは首切れ馬のことを夜行さんと呼び、節分の夜に現れるという[1]。徳島県祖谷山地方の首切れ馬も大晦日または節分の夜に現れ、四辻に行くとその姿が見えるという[1]。または福井や壹岐島にも現れたという[5]。

2012-04-22 00:09:56
アルム=バンド @Bredtn_1et

さらに高知県では幡多郡橋上村楠山や長岡郡吉野村汗見川などで見られ、汗見川などでは昔から悪所と呼ばれている場所で首の無い馬が走るという話を耳にするという[8]。

2012-04-22 00:10:06
アルム=バンド @Bredtn_1et

『阿波の伝説』では、先の吉野川の話が詳しく記されており、坂野町では七天神七地蔵というのがあるが、阿讃(あさん)山脈から首切れ馬が降りてきて、対岸の石井町との間にある七つの天神様と地蔵様を巡って歩くという[9]。

2012-04-22 00:10:19
アルム=バンド @Bredtn_1et

また、首切れ馬が先頭に立って七人童子が続き、ジャンジャンと鈴の音を響かせながら走っていくともいう。沿道の人が怖がって家の中に閉じこもるので、村人達が相談の結果、那東と唐園の境に地蔵様を立てたら坂野に首切れ馬は出なくなったという[9]。

2012-04-22 00:10:50
アルム=バンド @Bredtn_1et

こうした、首切れ馬に関する伝承も多く、しかもバリエーションに富むようである。

2012-04-22 00:10:57
アルム=バンド @Bredtn_1et

ところで、「夜行」という名前については、元々は神祭に際し、常人に見せない深夜の神幸を指すものであったらしい[1][3][7]。このような深夜の神幸を見ることは非常に強く戒められ、破ったら祟りを被ると考えられることもあった

2012-04-22 00:11:08
アルム=バンド @Bredtn_1et

(深夜の神事で神主が行き来する姿を見てはいけないとする禁忌はあるし、今でもこうした見ることが禁じられた深夜の神幸の神事は存在する。)

2012-04-22 00:11:16
アルム=バンド @Bredtn_1et

あとは大晦日や節分(節分は元々大晦日だったわけだし)に訪れる歳神のような来訪神の信仰などが下地にあったものとも考えられる[1]。

2012-04-22 00:11:29
アルム=バンド @Bredtn_1et

…こうした信仰がやがて形を崩して妖怪として語られるようになった、ということかな。とはいえ馬や鈴といったところにそれっぽさが若干残っていると考えることもできるかな…とこれは個人的な雑感。

2012-04-22 00:11:53

※作中との比較

アルム=バンド @Bredtn_1et

という辺りで概説メモ終了。おおう、思ったよりも大量だ…。以下、作中との比較。

2012-04-22 00:12:02
アルム=バンド @Bredtn_1et

除夜の鐘が鳴ると同時に現れた、首切れ馬に乗った一つ目の鬼。行き逢った相手を問答無用で蹴り殺す、というオマケ付き。…これは『土の鈴』バージョンの夜行さんだと思います、きっと。大晦日(暦が変わる頃)に出現、首切れ馬に乗った一つ目の鬼、出会った相手を蹴り殺す、といった点が外套。

2012-04-22 00:12:51

↑×外套 ○該当

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