【ほうかご百物語】妖怪についてつらつらと(2、3巻)
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続き2)何んだか気味悪くて鼠とは思はれないが、家内中の者が鼠のひねつこ(老鼠)の仕業だと言ひます。自己暗示か自己催眠にかゝつてゐるのだらうと思ひますが未だに謎としてゐます。…(後略)」
2012-02-19 19:26:55
この記述から得られる情報としては、 ・夜中、眠っている最中に足元の方から体の上、胸の辺りまで這い登ってきて金縛りに掛ける ・重量は結構重い …といった点でしょうか。
2012-02-19 19:27:01
なお、こうした鼠が眠っている最中に這い上がってきて金縛りに掛ける、という怪異は結構数があるらしく、それはこの辺り「 http://t.co/iY1qxOrZ 【妖怪】眠っている人の動きを封じる鼠について - Togetter」にまとめてあります。
2012-02-19 19:27:21
似たような怪異としては「ムシニクル」(こちらも少しまとめがあります。> http://t.co/oQScek7S 「ムシニクル」という怪異とその意味について - Togetter)や、『図説 日本妖怪大全』に掲載されている「黒玉」もありますかね。
2012-02-19 19:27:35
ちなみに、「鼠を避けるまじない」記事中の「中道等氏の文を読んで…」というのは、一つ前の号である『田舎』通巻3号に中道 等という方が鼠に押さえつけられる怪異についての記述をしていたことを受けての文章だと思われます。
2012-02-19 19:27:49
登場からすぐさまターゲットまで駆け寄り、足元から胸元まで駆け登って見事金縛りにした老鼠。ターゲットは起きていますし立っている状態ですが、わざわざ足元から胸元まで駆け登ってから金縛りをかけたのは原典やこのタイプの怪異のセオリー通り、といえるでしょうか。
2012-02-19 19:28:28
それから、金縛りというよりは場所に固定、という感じの能力として描かれている点については、怪異としても「押さえつける」という表現が多い(眠っている人に対しての怪異ゆえ、余計にそうなのかもしれませんが)ので、「その場所に押し付ける・固定する」というニュアンスが通じる気がします。
2012-02-19 19:28:34
後には敵の肩に居たりするので、重量は原典のように狐狸や大人の重さではなさそうな感じはします…。それと、怪異を起こす瞬間に目を光らせることはないようですが、流石にこれは演出的にそうした方が格好良いですよね(汗)。
2012-02-19 19:28:55
あとは先輩が「名前はあまり聞かないけど、そういった怪異を起こす鼠の一種か」という旨の発言をして敵に問い詰めている場面もありますが、これに関しては上に挙げたように結構類話があるらしいです。…流石頼りになる先輩、よく知っています。
2012-02-19 19:29:29※蟷螂坂の大蟷螂について

ということで今日は「蟷螂坂の大蟷螂」について。参考文献は『妖怪事典』(村上 健司著、毎日新聞社、2000)、『改訂 綜合日本民俗語彙 第一巻』(民俗學研究所編、株式会社平凡社、1970)、『三島郡誌』(近藤 勘治郎著、三島郡教育会、1937)。
2012-01-18 19:35:17
ただ、『妖怪事典』が挙げている参考文献は『綜合日本民俗語彙』のみで、『綜合日本民俗語彙』が挙げている参考文献が『郡誌』(『三島郡誌』のことか?)となっている。『郡誌』=『三島郡誌』ならば、この引用の系譜の一次資料は『三島郡誌』ということになるかと。
2012-01-18 19:35:34
で、その『三島郡誌』は有り難いことにpdfファイルになっており、ダウンロードさえすれば無料で閲覧できるという…これは有り難い。かまきり坂もしっかり載っている。> http://t.co/CwrO34hP 三島郡誌 - 近藤勘治郎 - Google ブックス
2012-01-18 19:36:06
このpdfファイルの1228/1257ページ目(下部に書かれているページ数で言うと1150ページ目)に「かまきり坂」が載っている。
2012-01-18 18:32:39
これに拠れば、新潟県三島郡片貝村(現:小千谷市)に「かまきり坂」という場所があり、そこに昔人を食うほどの大きな蟷螂が住んでいたという。かまきり坂は村人が他の場所へ行くための通り道だったので、いつも蟷螂を気にしていたという。(『三島郡誌』)
2012-01-18 19:36:23
しかしある冬、その大蟷螂は積雪によって圧死していた。それからというもの、この坂で転んだ人には傷口が鎌傷に似た傷ができ、そこからどす黒い血がどくどくと流れ出て非常に苦しむという。(『三島郡誌』、『日本民俗語彙』)
2012-01-18 19:36:30
大蟷螂と鎌傷に似た切り傷ができることについての因果関係は『三島郡誌』や『日本民俗語彙』には見えず、『妖怪事典』で初めて「蟷螂の祟りからか」という一文が追加されている。
2012-01-18 19:37:56
後述するWikipedia(鎌鼬の項)が、かまきり坂について言及のある本は他に『日本怪談集 妖怪篇』を挙げているので、もしかしたらそちらに記述があるのかもしれない。(『妖怪事典』の参考文献には挙げられていなかったが)
2012-01-18 19:38:30
怪異としては「大蟷螂が人を食った」という話と「坂で転んだ者には鎌傷に似た傷口ができる」という話が主だと思われる。後者に関しては、鎌鼬に似た怪異ともされることもあるようだ。参考: http://t.co/ldfiBtSv 鎌鼬 - Wikipedia
2012-01-18 19:39:19
ただ、一般的に鎌鼬は切り傷が深く切れるわりには血があまり出ないといわれている場合が多いが、この蟷螂坂の怪異だと血がどくどくと流れ出る(しかもどす黒い血)とわれ、その点では一般的な鎌鼬とは異なるようなので興味深いかな、と。
2012-01-18 19:39:37
まず2巻では、クリスマスイブの夜に現れ、激しい戦いの末に倒されたという2行足らずの記述があるだけ。とはいえ、雪で圧死したという伝承なので季節的には冬と関係が深いと思われるので、その点(フラグというかポイントというか)は回収できるかと。
2012-01-18 19:40:09
続いて3巻では召喚された妖怪の大群の中に混じっていたわけですが…こちらにはもう少し詳細な描写がありますね。 ※大きさについては上記資料のいずれにも言及はないですが(せいぜい人を食べる程度の大きさである、としか…)。
2012-01-18 19:40:24
黒い煙を出していたのは、果たして一度墨絵になってしまったからなのか、またはそうでないのかは分かりませんが、もし後者だとするならば、「傷口からどす黒い血が流れ出る」という話から、その黒い血を纏っていたのかなぁ、とも推測はできるように思えます(あくまで推測でしかない)。
2012-01-18 19:40:40※ノウマ(野馬)について(リベンジ)

参考文献は[1]竹本 健夫著「石見より(一)」『民俗学』一巻四号(民俗学会、S.4)、[2]『妖怪事典』(村上 健司著、毎日新聞社、2000)、[3]『改訂 綜合日本民俗語彙 第三巻』(民俗學研究所編、株式会社平凡社、1970)。
2012-07-16 16:02:41
竹本 健夫『石見より(一)』に記された妖怪。島根県邑智郡日貫(ひぬい)地方に伝わるもので、一つ目で人を襲っては喰らうという[1][2][3]。
2012-07-16 16:02:47
昔、日貫村である夜にたたら場に「づく(筆者注:銑のことか?)」を作っている「山はひ」の人が寝ていた所に、どこからともなく女が来てその上に覆い被さった。
2012-07-16 16:03:00
遠くの方で野馬がヒーン、ヒーンと嘶いていたが、それが間もなくたたら場に近付いて高い窓から覗き込んだ。しかし女がいるのを見ると一目散に逃げていった。この女は「かなやごさん」といい、たたらの神であったという[1]。
2012-07-16 16:03:02
『妖怪事典』、『綜合日本民俗語彙』には一つ目で人を襲って喰うことしか記述がなかったため、てっきりそれしか伝承がないのかと思ったら上記のようにもっと詳述があったため個人的にはとても驚いた妖怪。
2012-07-16 16:03:15
一つ目といえばたたらと密接に関係するものと考えられるが、たたらの神を見るなり逃げ出すというのはどういうことなのだろう。その辺りはもっと掘り下げられそうな気がする。
2012-07-16 16:03:31
原文は御田鍬;氏が既に記していますが、一応。 http://t.co/r4JF544m 妖怪・ノウマ(野馬)まとめ - Togetter
2012-07-16 16:10:21
その後に求道が一つ目の妖怪と取っ組み合っていたという記述があり、なおかつ、他の妖怪の中で取っ組み合いができるくらいの大きさ・一つ目という特徴を持つ妖怪はいなさそうなので、消去法で求道が取っ組み合っていた相手が野馬だと推測できる。ということで以上。
2012-07-16 16:03:46※ノウマについて

参考文献は[1]『妖怪事典』(村上 健司著、毎日新聞社、2000)、[2]『改訂 綜合日本民俗語彙 第三巻』(民俗學研究所編、株式会社平凡社、1970)。
2012-04-23 23:12:41