スワン・ソング・サング・バイ・ア・フェイデッド・クロウ #3
第一部「ネオサイタマ炎上」より:「スワン・ソング・サング・バイ・ア・フェイデッド・クロウ」 #3
2012-01-18 13:41:24(サラリマンを殺すのに彼は六投擲を要した。一人がむごたらしく死に、仲間の一人も肩にひどいダメージを受けて倒れ込んでいる。「……ナムアミダブツ」『オッケーです』笑い爺が通信して来た。『ではですね、死体のところまで行って、至近で写真を撮ってください』「何だと?俺がか?」『ハイ』)
2012-01-18 13:41:50(「今から俺が行くのか?これからマッポが集まってくる」『ハイ』「面倒が過ぎる」『やってください』「別動…」言いかけ、やめた。「ああ、了解した。だがボーナスは覚悟しろ」『ハイオタッシャデー』シルバーカラスはうんざりと首を振って起き上がり、屋上から垂直に飛び降りた。「イヤーッ!」)
2012-01-18 13:44:59「アバッ……アバ……コナチ=サン?ナンデ?アバ、私動けないナンデ?」負傷したサラリマンは、体のあちこちを損壊した同僚、コナチの死体を前に、呟いた。通行人が屋形船を遠巻きにしている。同船した取引先のサラリマンやサービスオイランは走って逃げ去った。もういない。「……ナンデ?」 1
2012-01-18 13:51:10「さあな。理由は俺やアンタにはわからん。ブッダがゲイのサディストだからかもな」負傷サラリマンに低く答える声があった。負傷サラリマンは顔をあげ、悲鳴をあげた。「アイエエエ!ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」「イヤーッ!」「アバーッ!」ナムアミダブツ!カタナが一閃、首が飛んで即死! 2
2012-01-18 13:54:15シルバーカラスはカタナの血を払って鞘に収め、いまだ惨状をわけもわからぬままに遠巻きにする通行人、計四人を、スリケン投擲で素早く殺害した。非情!「ナムアミダブツ」彼は呟き、スナイパースリケンの被害者の死体を素早くカメラに収めた。彼は眉根を寄せた。死んだサラリマンの社章。厄介だ。 3
2012-01-18 14:00:17死んだサラリマンはタケダチック・アガキ社の社員だ。同社は護衛にニンジャエージェントを所持している事が闇社会で知られている。このサラリマン達にそれなりの地位があるなら、バイタルサイン喪失信号が同社のニンジャエージェントに伝わった可能性は高い。彼らの現在の所在地如何では…… 4
2012-01-18 14:07:31「御用!御用!」マッポのサイレン音が接近してくる。シルバーカラスは溜息を吐いた。「イヤーッ!」彼は躊躇無しにノビドメ運河へ身を踊らせた。 5
2012-01-18 14:17:13ゾッとする冷たさの水の中を岸沿いに泳ぐこと数分、やがて「御用!御用!」のサイレン音は聴こえなくなる。撒いた。彼がそう感じた直後、水中めがけ投擲されたスリケンが、泳ぐ彼の身体をかすめた。(来たか) 6
2012-01-18 14:28:23「イヤーッ!」シルバーカラスは素早く岸に手をかけ、アンブッシュめいて跳躍、地上へ飛び出した。「!」運河沿いの倉庫の屋上にニンジャあり。シルバーカラスの行動に不意をつかれ身構える。「イヤーッ!」シルバーカラスは跳躍中に空中回転、スリケン二枚を投げ返す。「グワーッ!」肩に命中! 7
2012-01-18 14:34:16シルバーカラスは敵ニンジャの立つ倉庫屋根の反対の縁に着地、素早くオジギした。「ドーモ。シルバーカラスです」敵ニンジャもアイサツを返す。「ドーモ。バズキルです」彼は短いダガーナイフを抜いた。歯科医めいたモーター音が鳴る。刃が高速震動しているのだ。「貴様、ヤナマンチ社の走狗か?」8
2012-01-18 14:51:31ヤナマンチ社?「だったらどうする?タケダチック・アガキのサラリマン・ニンジャ殿」シルバーカラスは小首を傾げた。バズキルが飛びかかった。「死ね!」震動ダガーで斬りつける!「イヤーッ!」シルバーカラスは嫌な予感を覚え、カタナの刃ではなく鍔で受けた。鍔が見る見るヒビ割れる!9
2012-01-18 15:01:41「昔にテストしたぜ、その震動機構」シルバーカラスは呟き、押し返した。「イヤーッ!」「グワーッ!?」瞬時に込められた剛力にバズキルがよろめく。その一瞬で十分だった。「イヤーッ!」シルバーカラスは自剣ウバステを斬りおろす!「グワーッ!」ナムサン!斜めにバズキルの上体切断!10
2012-01-18 15:07:41「サ、サヨナラ!」バズキルは爆発四散!だがその時!「イヤーッ!」「グワーッ!?」下から投げつけられた金属の鉤つきロープがシルバーカラスの左足首に巻きつく!「イヤーッ!」「グワーッ!?」ZZZT!シルバーカラスは感電し苦悶!新手のニンジャのアンブッシュだ! 11
2012-01-18 15:15:09「どうだ俺様のショックアームの味は!ヤナマンチめ」シルバーカラスは下からの攻撃者をかろうじて視認した。敵ニンジャの右手首から先が金属ロープになっており、それがシルバーカラスに巻きついているのだ。鉤と思えた先端部はサイバネアームであった。「ドーモ、エレクトリックイールです」 12
2012-01-18 15:20:21「イヤーッ!」シルバーカラスは己のニンジャ意志力を動員し、キアイでこの鋼鉄ロープを叩き切った。「何!」「イヤーッ!」シルバーカラスは地面へ飛び降り、エレクトリックイールの頭部へジゴクめいた空中踵落としを繰り出す。「グワーッ!」エレクトリックイールは避けきれず肩に打撃を受ける!13
2012-01-18 15:25:34よろめいたエレクトリックイールにシルバーカラスはさらに踏み込む!「イヤーッ!」「グワーッ!?」ウバステの柄頭で鳩尾を突かれ、エレクトリックイールは苦悶!「イヤーッ!」さらに回し蹴り!「グワーッ!」吹き飛び、運河に転落!「グワアバ、アッバーババーッバーッ!?」ナムサン!感電死!14
2012-01-18 15:31:19「ナムアミダブツ、その武器を使うには場所が悪いぜ旦那」シルバーカラスは呟き、「クソッ」毒づいた。短時間でロープをカタナで切って逃れたものの、感電のダメージは実際無視できない。「御用!御用!」再びサイレンの接近……今度は水面の方向からも聴こえてくる。武装屋形船だ! 15
2012-01-18 15:47:10「おい、聴いてるよな。ニンジャ二人に襲われた。ふざけたセッティングのせいだ。ボーナス最重点しろ」シルバーカラスは笑い爺に通信した。『スナイパースリケンで殺せばもっと良かったのに』笑い爺は悪びれもせず言った。『まあ、わかりました』「……」シルバーカラスは駆け出した。 16
2012-01-18 15:52:23「カギ=サン!?」「何だ起きてんのか。子供は寝てる時間だ」「その傷!」シルバーカラスはヤモトを制し、「タバコあるか?無いよな」後ろ手にドアを閉めた。「仕事さ。ホワイトカラーじゃ無いんでな。それより、今後お前さんがどうするかを……」彼は洗面所に真っ直ぐ向かい、吐いた。血を。 18
2012-01-18 17:28:28ヤモトは蒼白だった。「ああゴホッ、この血だよな?」シルバーカラスは口をぬぐい、蛇口を全開にした。「傷とこれは関係無い。だから大丈夫だ」「何も大丈夫じゃないよ!」「ああ、つまりこれは戦闘の負傷じゃないし、負傷はこの血より大した事の無いダメージだから、相互に大丈夫……」 19
2012-01-18 17:36:05「病院に行かないと!」「行ってンだよ!うるせえな!」シルバーカラスは叫び返し、詫びた。「すまん」「……」ヤモトの目に涙が浮かぶ。「おい泣くなよ。謝ってる」「そうじゃなくて!カギ=サン!」「俺は風呂だ。それとも一緒に入るか?……もう寝ろよ」彼は洗面所からヤモトを閉め出した。 20
2012-01-18 17:49:50シルバーカラスは服を脱ぎ、デッカーガンの銃瘡とエレクトリックイールの火傷跡を確かめた。弾丸は抜けている。火傷も今は激しく痛むが、アグラ・メディテーションを行えばニンジャ耐久力の活性化で数日のうちに治る。問題は喀血だ。彼は鏡に向って無理に笑顔を作った。「成る程、こうなるか」21
2012-01-18 17:58:36彼は咳き込み、唸った。相当なショックを受けていた。遠くにおぼろげに揺らいでいた死神の影が、突如、実在のものとなって、彼の心臓をわし掴んだのだ。あと何ヶ月?いや、あと何日残っている?せめてあと一週間は欲しかった。一時的にヤモトの寝泊まりする部屋を借り、教えるつもりだった。 22
2012-01-18 18:14:08